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Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。企画・もしも彼らが○○だったら ( No.130 )
日時: 2012/01/09 14:38
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)

番外編 俺とあいつが出会った日

 〜翔視点〜


 2000年の12月2日。中国の山奥。
 お袋が、今度は中国マフィアとか言う設定で生きていた。まったく、大天使なんだからしっかりと天界にでもいろっての。
 俺はお袋の部下である天使達を眺めつつ、ため息をついた。

「翔。あなたも鍛錬したらどう?」

「ハッ。必要ねぇ」

 お袋が俺に向かって言ってきた。
 俺は中国武術は一通りマスターしているし、相棒の炎神もある。いわば、天下無敵だろう。
 自分で言うな、と言った読者。燃やしてやるからそこで待機しておけ。正座で。

「まぁいいわ。お父さんが言ってたんだけど、日本で仲良くなった友達のところに行くからって。しばらくは日本に住むわよ」

「ハァ? いきなりかよ。てか、家はどうするんだ? 今の時代、すぐに家は決まらねぇだろ!」

「分かってるわよ」

 知っているようなそぶりで、お袋は言う。
 何が分かってるわよ、だ。分かってねぇよ。

「だから、その友達の家でしばらくお世話になるから。支度なさい、翔」

「ハァ?!!」

 テメェ、それはマジで言ってるのか。
 お袋を焼いてやろうかと思ったが、さすがに止めた。勝てる気がしねぇ。俺は天使が嫌いだからだ。


 2000年12月3日。日本。
 空港、と言うところはやけに綺麗な感じがした。わざわざ飛行機という鉄の塊で来なくても、死神の空間移動術を使えばすぐなはずなのに。
 お袋は、俺らが死神・天使という事をばらしたくないと言っている。だからわざわざ飛行機で来たのだとか。
 空港に着くと、何やら騒がしい感じの家族がいた。1人は男。2人は女。典型的な家族だ。

「やぁ、よく来てくれたね。東君」

「どうもどうも。椎名さん。少しお世話になるね」

「いやいや、狭い家だけどゆっくりして行ってね。あぁ、この子達が?」

 1番前にいた茶髪の男が、俺と兄貴と姉貴に目を向ける。
 一応言っておく。俺は16歳だが5歳児の背丈をしている。向こうの息子に合わせろと、親父からの伝達だ。死神の姿になると16歳の姿に戻っちまうが。兄貴は7歳、姉貴は9歳の格好をしている。

「女の子が美羽。男の子が上が大地。下が翔。ほら、挨拶しなさい」

 親父に言われ、俺は会釈をする。そして気づいた。
『しいなさん』と呼ばれていた男の後ろに、誰かがいる。茶色の髪の毛は肩につくぐらいの長さで——ほう。息子か。
 死神の目を使えば、何となく名前も分かるが、まぁ黙っておこう。

「おい、あいつ——」

 親父の服の裾を引っ張り、男の後ろを指す。

「あぁ、そちらの子は——息子さんですか?」

「えぇそうです。昴、挨拶しなさい」

 前面に押し出され、その昴と呼ばれた野郎は自分の名を名乗る。

「椎名昴です! よろしくお願いします!」

「……」

 しいなすばる、か。悪くない名前だ。
 まぁ、こちらも名乗っておいてやる事にしよう。

「東翔だ。これからしばらく世話になる(←中国語」

「?」

 何で首を傾げるんだ、普通に喋ってやったのに!
 すると、兄貴が苦笑いを浮かべながら俺に言う。

「翔。しばらく中国で仕事してたからね。中国語で名乗っても、日本人には分からないよ?」

「ハァ? 普通に喋ってるだろーが!! 何がいけねぇんだ? 焼くぞ!!(←中国語」

「いやいや。本当だって。俺も日本語分からないからなー、ごめんねぇ。教えられないかも?(←中国語」

 何だと。俺が喋る言葉が分からないだと!
 この国は一体何なんだ!!


 2000年12月4日。
 うー、寒い。中国の山奥よりかはましだが、こっちも寒いな。
 布団にくるまっていたら、突如衝撃が起きた。誰か俺の上に乗ったらしい。
 見上げてみると、茶色の髪が見えた。椎名昴、という奴だ。

「何だよ(←中国語」

「朝ごはんだよ? 今日から幼稚園に通うんだろ。手続きしたって、お前のとーちゃんが言ってた」

 とーちゃん? 親父の事か。
 幼稚園なんてくだらない。俺は再び眠る事にした——が、その椎名昴が布団をはいできた。

「起きろー」

「ぐはっ」

 布団から蹴落としやがった! この野郎!!

「テメェ何しやがる?! この俺に蹴りをくらわすなんてしたらどうなるか分かってるんだろうな? 魂を抜かれて焼かれてぇのか!!(←中国語」

「??? 怒ってるのか? ならごめん。でも朝ごはんだから早く来いよー」

 ったく。ダリィ。
 何が幼稚園だ。そんな低レベルな所に行って何をする気だ? ふざけるなっての。
 まぁ、そんな事を言ってもこいつには通用しない。ダラダラと朝ごはんを食べ、その幼稚園とやらにお袋に連れられて行った。椎名昴もだ。

「ここが教室っていう部屋だよ。ここで1日過ごすんだ!」

「…………」

 狭い部屋だ。おもちゃがたくさん置いてある分、すげぇ狭い。
 何だかガキがたくさんいるし。何だこいつら、全員5歳児か。

「えーと。このクラスに転入してきた東翔君でーす。翔君、自己紹介出来る?」

「……東翔だ(←中国語」

「「「「「……」」」」」

 どこまで低レベルなんだ。俺の言葉ぐらい分かるだろ。
 この女教師も何だか苦い顔で俺を見下ろしてるし。元の姿に戻って全員殺してやろうか。
 すると、椎名昴が手を挙げた。

「せんせー! 翔は中国から来たって言ってたー! だから日本語が分からないのかもー!!」

「あらそうなの? じゃあみんな、翔君に日本語を教えてあげましょう!」

 わーっ! と盛り上がる。
 ……こいつら。

「余計な事をするな!!(←中国語」

 お袋直伝の回し蹴りで、小さい椅子を蹴り飛ばす。大きく弧を描いて、椅子は吹っ飛んだ。
 ガキや女教師が唖然とした様子で見ている。もちろん椎名昴もだ。
 ふざけるな。こんな馴れ合いなど、死神には必要ねぇ!

「1人にさせろ。テメェらと慣れ合う必要なんかねぇ。弱い人間どもの子供め。今すぐ殺してやりてぇところだが我慢してやる!(←中国語」

 教室という部屋を出る。女教師が俺の名前を呼んだ。
 知るか。俺は、俺は死神なんだ!!