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Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。企画・もしも彼らが○○だったら ( No.140 )
日時: 2012/01/15 16:43
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)

第8章 神威銀の誘惑


 〜空華視点〜


 あの夢折梨央って奴、強すぎる。手から色々な銃を出してくるし、それを乱射してくるし。
 他にも客がいるんだから、それを守らなきゃいけないけど!! あーもう、面倒!
 銀ちゃんが無事なのを祈りましょう。本当に。

「この野郎、銀ちゃんを狙うなんて許すまじ!!」

 羅ちゃんだってこうして協力してくれてるしね。ありがたいありがたい。
 ひかげちゃんは影でさっきから弾丸を防いでくれてるし、白亜ちゃんは洗脳を使ってこれをなかった事にしてる。
 すごいね。銀ちゃんのお友達も能力者か。

「まったくさー。面倒事は嫌いって言ったよねー? どうして面倒な事ばかりしてくるのかなー?」

「僕だって面倒事は大嫌いだ! だけど銀を狙ってるんなら容赦はしないよ——【銃弾は夢折梨央を狙う!】」

「おっとー、そんな事をしても無駄無駄ー」

 言葉使いの悠紀でも、このありさまだ。こいつにはどんな技を使っても対応できない。
 くそ。こんなに強い奴っているんだ!!

「空華君、大丈夫かい?」

「白刃さん。平気です、まだイケます」

「そうは言ってもね」

 白刃さんは俺様の足を指で弾いた。途端に激痛が襲う。
 そう。俺様は夢折梨央に足を撃たれた。血がとめどなくあふれている。銃創ならどうとでもなる。

「忍びなんだから、これぐらい余裕」

「ふーん。やせ我慢? 銀の為に?」

「そうです」

「じゃあ、その銀が翔君に告白してたって言ったらどうする?」

 ————ハァ?
 白刃さんは切れ長の紺色の瞳を、俺様に向けた。

「だから言った通り。銀が翔君に告白して、それに翔君は好きだと答えてた。その真実、どう受け止める?」

 翔の方を見れば、前線で昴と一緒に夢折理央と戦っている。完全にこっちの気配には気づいていない。
 あいつを殺してしまおうか? そうすれば、銀ちゃんの心は——。
 でも、そんな事をして本当に奪えるか? 無理だろ。


「あーらら。交戦状態だなー」


 聞き覚えのある声がした。全員がその方へ目を向ける。
 銀髪に緋色の扇。銀ちゃんが髪を掻きあげつつ、こちらに歩いてくる。どうして? 逃げたんじゃないの?

「あらー。神威銀が直々にー」

「テメェ銀! 出てくるなって——」

「うるせーな。死神のくせして俺に立てついてるんじゃねぇぞ、坊主」

 そう乱暴な口調で銀ちゃんは言い、翔を扇1つで吹っ飛ばした。プールに水柱が上がる。
 え、何? 何が起こったの?

「今の俺は30分しか動けねぇからな。さっさと決着を済ませてもらおうか」

「……まさかー、お前ってー」

 梨央の顔がだんだんと引きつって行く。
 銀ちゃんはニッコリと笑うと、形のよい唇から綺麗な歌を紡ぎだした。

「『遥か古を作りし神々よ。我の言葉を聞き給え。我が願いを届け給え——』」

 シャリン、と音がした。綺麗な鈴の音だ。

「『拒否して堕ちた天使よ。燃える氷の悪魔よ。降臨せよ』」

 その時だ。銀ちゃんの目の前に、2つの人影が現れる。
 1つは女の子。小学生ぐらいの子で、赤い帽子をかぶっている。ピンクの髪が特徴的だ。
 もう1つは男の子。俺様より年上の感じがする。オレンジ色の髪に学生服を着て、スケートシューズを履いている。
 悪魔なのか?

「日暮。日出。頼んだぞ」

「あの怖い人を倒せばいいのー?」

 日暮、と呼ばれた女の子が梨央を指す。銀ちゃんはそれに頷いた。
 一方、日出と呼ばれた男の子は面倒くさそうに頭を掻く。

「面倒なんだけど」

「いいから黙ってやれ。久々のシャバだろ」

「へいへい」

 日出は梨央の方を向き、指を1本立てた。そこから氷の弾が出てくる。
 日暮は銀を引っ張って俺様達の元まで来た。

「寒さを拒否するの。大丈夫なの」

 日暮がそう言うと、俺様達の腕にバツ印がついた。何だこれは?
 すると、キィンと音がして辺りが氷漬けになった。
 え、氷漬け?

「氷になって砕け散れ、この場違い野郎!!」

「ちょ、やばーい。悪魔は嫌いなんだけどー。まぁいいや。さすがだね、神威鈴」

 銀ちゃんに向けて、梨央は笑顔を向ける。そしてさっき扱っていたショットガンで自分のこめかみを撃った。
 梨央の姿がだんだん消えて、声だけが残る。

「神威鈴が出てきちゃお終いだ。今日はこれで退散させてもらうよ。じゃーね」

「ごめん、鈴。逃げられた」「逃げられたのー」

 残念そうに言うこの2人の悪魔。
 銀ちゃんは首を横に振った。

「俺の言葉に応じてくれただけでありがたいさ。また頼むな。他の悪魔のやろうにも言っておいてくれ」

「了解りょーかい。ほら、日暮。帰るぞ」

「やなのー。まだシャバにいたいのー!!」

 ギャーギャーと喚く日暮を肩車して帰って行く日出。
 とりあえず、この氷漬けはどうしようか?