コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。企画・もしも彼らが○○だったら ( No.146 )
- 日時: 2012/01/16 22:13
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
第8章 神威銀の誘惑
〜空華視点〜
銀ちゃんが男の口調でしかも何? 神を降ろしたって?
神降ろしなんか出来るの? 銀ちゃんすげぇ。そう言えば文化祭で巫女舞を踊っていたような感じがするんだけど。それと何か関係があるのかな。
ちなみに当本人、鈴と名乗っていた奴は銀ちゃんの自慢の(?)銀髪を手で掻きあげて、面倒くさそうにぼやいた。
「どうしようこれ……。氷、氷漬け……。及川さんって記憶も食べてもらえるかな……」
「お、おい銀ちゃん?」
そこで、黒影寮の鉄砲玉(え)である蒼空が、鈴(姿:銀ちゃん)に話しかけた。
鈴は振り向いてくれた。
「何? 俺、今ちょっとどの神様使おうか悩んでるんだけど。この氷を溶かしてくれる奴とかいないの?」
「いや、まぁ。炎の死神がいますけど。言葉使いとかシャーマンとかいますけど。——あんた、銀ちゃんの姿をした誰よ?」
言っている意味が俺様でも分からないんですけど。
まぁ、つまるところ彼は「あんた誰?」と訊いたのだろう。
「俺は神威鈴。銀のもう1つの人格だ。こうして銀の体を借りないと、こちらの世界に干渉できな——」
い、とまではいかなかった。
声で遮られた。
「鈴さぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああん!!」
悲鳴が、白刃さんが持つ鏡の中から聞こえた。
鈴はハッとした様子で鏡を覗き込む。そして申し訳なさそうに謝った。
「ごめん銀! あんたの姿を借りてた!! まだ30分経ってねぇけど返す!!」
「返してくださいよ。いきなり黒影寮の部屋に来させられたんですからね?!」
「黒影寮じゃないよ。俺が管理人代理をやってる場所は白影寮さ。神様悪魔天使鬼、結構色々いるだろ? 30分世話になったじゃないか」
「そのうち2人はどこかに行きましたけどね?!」
銀ちゃんの声が鏡の中から聞こえてくる。
鈴は「ごめんごめん」と謝ると、鏡に手をかざした。瞬間、銀ちゃんが糸の切れた人形のようにふらりと膝をつく。
「ぎ——「銀、大丈夫か!」
俺様が駆けるよりも速く、翔が銀ちゃんのもとに駆け付けた。
俺様の手は、空を掴む。力なさげに。
「う、む。翔さんー? ふぇ、え?! 氷?! どうして何で?!」
「ごっめーん♪俺がやったの正確には日出だけどね?」
「俺のせいにすなよ。撃退しただけでもありがたいと思え」
「実体をなくされたいんなら俺に反抗しても構わねぇけど?」
「…………」
鏡の中からは鈴とさっき出てきた日出という悪魔が言いあいを繰り広げている。
あぁ、今日は何だか最悪の日だ。
自分から行動をしなかった俺様も悪いけど。銀ちゃんの心を奪った翔が憎い。
***** ***** *****
帰りのバスの中だ。白刃さんはまだ残るらしいから、俺様達はバスで白雪町まで帰っていた。
ふと、銀ちゃんの方を見てみると、疲れて羅ちゃんの肩に寄りかかって一緒に寝ちゃっている。可愛い。
「なぁ空華」
「……ンだよ、昴」
俺様の隣に座っている昴が、唐突に話しかけてきた。
「取られちゃったね」
「聞いてたのか、白刃さんの話」
「聞こえちゃったの」
周りの奴らが寝ている事を確認し、昴は言う。自分の思いを。
「翔ちゃんには、本当に何にも敵わない。敵うって言ったら足の速さだけ。人生の長さなんて翔ちゃんの方が上だし、能力の強さでも」
「何が言いたいんだよ」
「結局は、翔ちゃんがいいものを全部持って行っちゃうんだよね。愛する人も、そしてその人がいなくなった時の辛さも」
「…………」
大切な人を亡くした時の辛さ、か。
よく分からないや。
俺様は昴の頭に手を置いて、ぐりぐりと押した。
「ばーか。俺様は、初めから負ける戦なんてしないの」
「……空華」
「そうさ。俺様は、負ける戦なんてあの時だけで十分なんだから」
思い返すは夕暮れ色に染まる街並み。
暗躍するのは俺様達、忍び。時には人と馴れ合い、情報を手にする。情報をもとに、依頼を完了する。
出来ない事はしない。それは俺様自身が決めたルール。
「もう、取られるのは嫌なんだよ」