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Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。企画・もしも彼らが○○だったら ( No.149 )
日時: 2012/01/18 22:15
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)

第9章 本当にあった黒影寮の怖い話


 と言う訳で、夏なので! 黒影寮で怖い話大会をする事になりました!
 食堂を暗くしてろうそくを立てます。
 言いだしたのは翔さんです。そうです、あの死神の。幽霊経験豊富そうな翔さんがです。

「俺が13歳のころ、当時は江戸時代だった——」


 寺子屋の子供〜翔視点〜


 江戸時代。俺はいつものように仕事で来ていた。拠点は中国に置いていたが、この時は江戸に長く滞在していた。おかげで話し口調も移っちまったという訳だ。
 そんなある夜、俺は死神の仕事をしていた。魂を狩る仕事だ。たまに夜いなくなるだろ。

「これは東さんの次男坊ではないか。夜分遅くにどうした?」

「仕事がある。これにて失礼」

 たまに人と会話しながら俺は夜の町を行く。
 その時だ、声が聞こえたのだ。
 どこかすすり泣くような、そんな感じの。「ひっく、ひっく」ってな。

(誰だよ、こんな夜に?)

 声の方を向くと、そこにあったのは細い道だった。まぁついでだ、死神の仕事により道はない。行く事にした。
 どんどん行くと声が大きくなる。やがて、1人の子供を見つけた。
 歳は10歳を超えないぐらいの奴だ。うつむき加減で泣いていた。

「どうした」

「……誰?」

 俺を見て驚いたんだろうな、また泣きだした。
 さすがにこれ以上泣かれたら困る。うるさいし仕事にも集中できないからな。

「1人か」

「……母上がいない」

「そうか。置いて行かれたのか、家は?」

 そいつは道の奥を指す。この先には何もないはずだが……まぁいいか。
 俺はそいつの手を引いて、母親のもとに帰す事にした。親も心配してるだろうしな。

「小僧、名は?」

「……三郎」

 三郎と名乗ったそいつは、いつの間にか泣きやんでいた。よかった。
 進んでいくと、行きついた場所は古い建物だった。
 寺子屋って知ってるか? 昔の学校みたいな奴だ。読み書きするだけに通うような感じの。どうやら古いからもう廃れたのだろう。
 三郎はその寺子屋の中へ入って行く。
 少し気味悪くなってな、俺はその寺子屋を後にしようとした。だが、

「どこへ行く?」

 三郎が目の前にいた。寺子屋に入って行ったはずの奴が、だ。
 おかしい。どう考えてもおかしい。

「三郎、どうして——」

「せっかく気づいてくれる人に会えたんだ、一緒に来てよ……」

 黒い渦みたいなのが見え、三郎は見る間に変色して行く。目は空洞、歯は抜け落ち、髪はない。幽霊だ。
 俺はとっさに炎神を抜き、そいつを狩る。

「何で、一緒に来てくれないんだよぉ……」

 そいつは泣きながら消えて行ったさ。
 あとで分かった事だが、その三郎って奴は母親が迎えに来るのを待っているうちに心臓発作で死んでしまったらしい。腐った死体が教室から見つかった。
 ちなみに母親は、もうすでにこの世にいなかったそうだ。

「怖い! 何で翔ちゃんは昔の話を引っ張り出してくるのさ、あんた死神だろ!」

「しょうがねぇだろ。俺だって怖かったんだあん時は!」

 話が終わった時に、昴さんが翔さんに文句を言いました。
 順番的に言ったら次は昴さんです。悠紀さんが早く話を進めるように催促しました。
 昴さんは渋々と言った感じで口を開きます。

「7不思議って知ってるよな? 調べたら不幸になっちゃうって奴なんだけど——」


 花森小の7不思議〜昴視点〜


「暑いぃぃぃいいい!」

 当時小学3年生だった俺は、夏休みの宿題に追われていた。夏休みも中盤なのにまだ何もやってない。
 俺はとりあえず、翔に助けを求めた。この時、翔は読書感想文の宿題をやっていた。分厚い本を読みながら団扇で自分を煽いでいる。

「翔ちゃん、手伝ってよ」

「嫌だ」

 即答かい。いいもんだ。
 すると、電話が鳴った。相手は吉田。クラスメイトだった。

「どした? 宿題なら見せないぞ」

『お前まだ終わってねぇのかよ』

 ムカッ。だけど無視する。
 吉田が電話をかけてきた理由は、7不思議を調べようという奴だった。
 俺と翔が通う小学校、花森小には7不思議がある。トイレの花子さんから始まって、人体模型が動く、鏡が赤くなっている、階段の数が多いなどだ。
 7つ目は誰も知らない。知ると死んじゃうとか言われているからだ。

『それで、調べようと思うんだけど』

「いいね。翔は? 行く?」

「行かない」

 またも即答で返す翔。まぁそうか、死神の仕事だもんな。
 俺は迷わず行くと返事をした。

 その夜。
 夜の学校って超怖い。マジで。

「怖いな」

「ビビんなよ、誘った張本人だろ」

 吉田を前にして、懐中電灯で廊下を照らす。誰もいないからやけに怖い。そして埃っぽい。
 やっぱ翔にも来てもらえばよかったかも。

「ねぇ、何してるの?」

「ごどぁあああ!」

 変な悲鳴を上げて振り向くと、そこには女の子がいた。おかっぱ頭の女の子、結構可愛い。
 この学校の子かな?

「7不思議?」

「そうそう」

「一緒に行ってもいい?」

 女の子はニッコリとした笑顔で言う。俺らは迷わずOKを出した。女の子がいた方が気楽だからだ。
 それから7不思議を調べ回ったが、どれもこれも嘘。花子さんなんていないし、人体模型も怖いだけ。

「全部ガセかよ、つまんねー」

「なー。つまんなかったよなー」

 口々にそう言うが、俺はどこか変な感じがしていた。
 後ろにいる女の子が怪しい。本当に怪しい。

「……ねぇ7つ目って知ってる?」

「ハァ? 7つ知ったら不幸になるって、あの?」

 吉田が女の子の方へ振り返る。
 女の子はニッコリとした笑顔のまま、教えた。

「7つ目を知ったら、私と入れ替わるの」

 そして手を伸ばしてくる。
 まさかこいつ、幽霊?

「嘘だろ、おい! 逃げろ!」

 懐中電灯を放り出して逃げだす俺ら。だけどその懐中電灯を踏みつけて、吉田が転んでしまった。
 やばい。このままじゃ吉田が死んじゃう!!

「吉田、早く来い!!」

 だけど捕まってしまう。もうダメだ、と思った。

「だから嫌なんだ」

 炎がよぎり、女の子を焼く。悲鳴を上げて女の子は消えた。
 廊下に現れたのは、背の高い男。手に持っているのは鎌だ。

「翔! 来たのか!」

「助けに来た。ほら、帰るぞ馬鹿」

 翔は困り顔で俺に手を差し伸べてくれた。さすが死神。

 続く