コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。企画・もしも彼らが○○だったら ( No.154 )
- 日時: 2012/01/26 21:49
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
第9章 本当にあった黒影寮の怖い話。
「じゃ、次は空華だな。よろしくー」
「……俺様の話は、最近あった話なんだけどね?」
オリョウサン〜空華視点〜
15歳の時、俺様は夏休みを使って実家に帰っていた。その時黒影寮にはいなかったから、翔達とかはよく知ってると思う。
暑い中、俺様はとある旧家に帰宅する。その旧家こそが俺様の家だ。
木製の門をくぐると広い庭が見える。そこを駆けまわっているのは俺様の弟達だ。
「おい、馬鹿ども。何してるんだ」
「あ、空兄ちゃん! 帰って来たんだー!!」
3番目の弟である炎華(えんか)が駆けよってくる。その後に続き、水華(すいか)と姫華(ひめか)が駆けよってきた。
「元気にしてたか?」
「超元気!」
「空兄ちゃん。知ってるー?」
姫華が突然俺様に訊いてきた。
話によると、それはこの辺りに伝わるおまじないみたいな奴だった。当然胡散臭そう。
「オリョウサンっていうお化け」
「知らん」
「だよねー」
当たり前だ。俺様は実家に帰るのが嫌いだし、そんな話は15年生きてきて聞いた事もなかった。
話を聞こうと思ったら、長女である綺華(きら)に呼ばれる。
「お兄ちゃん、帰ってきてたんなら言ってよ」
「ヘイヘイ。ただいまー」
「適当?!」
適当に答えを返して、俺様は家に入る。ふとそこで、綺華にも訊いてみる事にした。
「なぁ。綺華はオリョウサンって知ってるのか?」
「知ってるわ。どうして? お兄ちゃん、まさか試すの? 確かにお兄ちゃんは王良家筆頭で強いけど……」
「いや。試すって何だよ? 儀式でも必要なのか、詠唱か?」
それなら止めておこう。
だが、綺華は首を振った。
「それってね、何か黒い紙に白いペンで五芒星を描くの。それでオリョウサンオリョウサン来てくださいって言うらしいんだけど」
理解した。そして興味がわいた。
今夜、こっそりやってみるとしよう。
そして辺りは闇に包まれ、家族が寝静まった後に、俺様は術で黒い紙と白いペンを出す。そして紙面にペンを滑らせ、星を描く。
それで、呪文だ。
「オリョウサンオリョウサン、来てください」
——何も起こらない。何だ、ガセネタか。
やる気をなくした。つまらない話ならやらなければよかった。
「ったくよー。寝よう」
「うん。お休み」
……誰ですか、今反応したの?
俺様がいる個室には、俺様1人しかいない。だけど、誰かの声がした。まさしく俺様と同じような。
ゆっくりと後ろを振り向くと、俺様がもう1人いた。
「——おかしいな、俺様いつの間に分身の術を使った?」
「オリョウサンですけど?」
「あぁ、そう。ってあんたがぁぁぁ?! 嘘だろ、何で俺様の姿になって、えぇ?!」
混乱した様子で言ってると、オリョウサンは俺様に襲い掛かってきた。
慌てて俺様は身を捻って回避する。
「何をする」
「入れ替わって」
「…………」
なるほど。いわゆる本人を殺して成り済ますって奴か。
「俺様は王良空華。王良家の筆頭だ。当然俺様を殺すなら、それなりに覚悟を持たないといけないよ?」
「例えばどんな?」
「あの馬鹿どもの世話をしなくてはならない。兄として」
「面倒くさいから帰る」
「おう帰れ。二度と来るな」
もう1人の俺様はそれで消えたとさ。
「……怖いのか怖くないのか分かりません」
「でも実際にあった事だしね。さぁ、次は銀ちゃんの番だよ」
「う、うぅ。これは私が10歳の頃です」
月下のワルツ〜銀視点〜
その日、忘れ物を取りに来た私は夜の学校に侵入しました。月明かりしかないとても暗い夜でした。
当然、お兄ちゃんもついて来てくれました。だから怖さはあまりありませんでした。
「お兄ちゃん。手を放さないでくださいね?」
「分かってるよ。銀は心配性だな」
そう言いながらお兄ちゃんは後ろからついてきます。
学校に差し掛かると、広い校庭が見えました。そこで異変に気付きます。
誰かが校庭で踊っているのです。社交ダンス——ワルツですね。それもたった1人で。
「お兄ちゃん、あれ何ですか?」
「さぁ? 自主練?」
お兄ちゃんは適当に答えを返しました。私はそれで納得してしまったのです。
私は急いで校舎内に入り、自分の教室を目指します。
「あ、ありました」
教室の机の中に置き忘れたノートを取り、お兄ちゃんが待っている廊下へと足を向けます。
その時、声が聞こえてきました。
「ねぇ君」
「ハイ」
思わず返事をして振り返ります。
そこに立っていたのは、先ほどワルツを踊っていた誰かでした。近くで見ると男の子のようです。
「何ですか?」
「一緒に踊ろうよ」
「残念ですけど、私はワルツを踊れませんので他を当たってください」
私は丁重にお断りをして、教室から出ました。それはもう慌てました。
何故かって?
その人の向こうが透けて見えたからです。月明かりを背に、ではなくもはやもう透き通ってるのです。ばっちり月が見えました。
「お兄ちゃん早く帰りましょう!」
「え、え? どうしたの銀。何があったの?!」
お兄ちゃんを引きずって、私は学校を飛び出しました。
……幽霊なんか大嫌いです。怖すぎます。