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Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。企画・もしも彼らが○○だったら ( No.160 )
日時: 2012/01/26 22:10
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)

第9章 本当にあった黒影寮の怖い話


 すると、突然ドアが開いて誰かが入ってきました。同時に羅さんが飛び上がります。

「ぐぅえ?! 苦しい羅ちゃん……それ、俺様の首ぃ……!」

「助けて助けて助けて助けて助けて……」

 いつもはイケメンにだけは近づかない羅さんですが、この時ばかりは空華さんにヘッドロックをかまして怖さを紛らわそうとしています。
 空華さんが旅立ちそうですけどね。
 入ってきたのは、零さんとお兄ちゃんでした。

「お兄ちゃん! それに零さんも、どうしたんですか?」

「何か面白そうな事をやってるなーって思ってね? 来てみた所存でございます!」

 お兄ちゃんはテヘペロみたいな事をやりました。
 零さんは蓮さんから軽く離れた距離に腰をおろします。

「怖い話大会だってね。俺らも怖い話ぐらいあるよ。聞く?」

「ぜひとも」

「何を言ってるんですか悠紀さん?!」

 零さんは「そうかそうか」と頷いて語り始めました。
 お兄ちゃんも一緒に。

「俺と白刃は後輩同士でな。英学園の卒業生なんだ。その時に起きた出来事なんだけど」


 英学園の旧校舎〜零視点〜


 俺は3年生で白刃が1年生の時だ。当時は特別クラスなんて言うのはなかったから、俺と零は校庭でのんびりしていた。

「白刃、知ってるか?」

「旧校舎なら行かねぇぞ」

「即答かよ!」

 さすがは鏡の来歴探知。鏡さえあれば何でも出来るんだな、すごいすごい。
 だけど俺だって空気使いだ。誰でも窒息させる事は出来るんだぜー?

「旧校舎を1周すると願いが叶うらしいんだよな。行ってみてぇんだよ」

「1人で行け」

「冷たい事を言うなよ。ツンデレか?」

 プニプニと頬を人差し指でつつくと、白刃はため息をついた。

「呪われたらどうするんだ。死んでも知らねぇぞ?」

「大丈夫大丈夫。妹ちゃんがいるじゃない」

「銀を使う気かお前?! 確かに呪いを解けるかもしれないけど、妹はまだ13歳だぞ?!」

 確か、この近くにある皇学校に通ってるんだっけ? 妹っていうか従妹って聞いたけど。
 白刃は頑として行かないと言う。
 そこまで言うなら仕方ない。俺も諦めようかな。

「おい、渋谷。神威」

「どうしたんスか、先生」

 俺の担任が声をかけてきた。これからどこかに向かうらしい。
 2人で首を傾げていると、先生は要件を言ってきた。

「これから旧校舎の取り壊しをする為に校舎内を歩くから、お前らも来い」

「面倒くさい」

 白刃が即答で答えたが、相手は俺の担任。担当教科は保健体育。マッチョな先生だ。
 哀れ、反論した白刃は問答無用で連れて行かれた。俺は興味あったからちょうどよかったが。


 旧校舎は木造の3階建てで、いつも薄気味悪い。烏は鳴いてるし、雑草も生えまくりだ。
 白刃はゲーゲー言いながら旧校舎の中に入って行った。俺はそのあとに続く。
 廊下がギシギシと音を立てた。怖い。

「……やっぱ帰っていいかな」

 何だか帰りたくなった俺はそう言った。
 だけど、白刃は何も言わない。それより、さっきゲーゲー言っていたのに、もう大人しくなってやがる。

「白刃、どうしたんだよ。静かになるなよ」

「……」

 それでも答えない。何かおかしいと思った俺は、白刃の肩を掴んだ。
 すると、白刃は俺の腕を振り払った。そして面倒くさそうにこちらへ顔を向ける。その目はやけに冷たかった。

「何?」

「……いや、何でもない」

 機嫌が悪いのだろう。俺はそう思い込んでいた。
 しばらく校舎の中をうろうろと歩き回ってると、前で歩いていた先生と白刃がピタリと動きを止めた。目の前には鏡があった。

「鏡じゃねぇか。古いなー」

「おい、零」

 白刃が俺の腕を掴む。やけに力が強い。

「その鏡に興味本位で近づくな。俺が行く」

 白刃が俺を押しのけて、古い鏡に近づいた。
 そこで、俺はハッと気づく。白刃の様子がおかしい事に。

「おい、白刃。お前の1人称って——僕じゃなかったか? いつの間に俺に替えたの? それに、いつもつけてる黒いバングル、右腕じゃなかったか?」

 そう。まるで鏡のようになってるし。
 白刃はニッコリと笑って、俺の腕を掴んだ。先生もだ。

「イッショニイコウヨォ……」

「うぎょぉぉおお!」

 手を振り払い、俺は逃げ出す。もう耐えられない。
 来た道を逆走していると、誰かにぶつかった。

「痛……。零、お前……向こうに走って行ったんじゃ——!」

「ハァ?! つか白刃?!」

 お前、鏡の前にいなかったか、と言いかけたところで白刃にヘッドバッドをかまされた。痛い。
 何をする、と反論すると白刃はこう言った。

「零がいないから旧校舎の前で待っていたら、いきなり戻ってきて『ごめんごめん』とか言うから。それで元の校舎に帰ろうとしたら途端に逃げ出すし。お前何? 僕らを困らせたいの?」

「違う! 俺はずっとお前らと旧校舎にいたぞ! 鏡の前に!」

「何言ってるの? 僕も旧校舎にいたけど、鏡なんか1枚もなかったよ」

 白刃はきょとんとした様子で首を傾げる。
 嘘だ。だって白刃と先生が、鏡の前で、あれ?

「鏡、ない?」

 廊下の奥を見たが、そこにあった鏡はプツリと姿を消していた。


「怖くね? なぁ?」

「「「「「いきなりグレードアップするなよ馬鹿ぁぁぁあ!!」」」」」