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Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。企画・もしも彼らが○○だったら ( No.163 )
日時: 2012/04/03 17:36
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)

第9章 本当にあった黒影寮の怖い話


 と、ここで着信が入りました。鈴です。
 あれ以来、私は鈴と呼び捨てで呼んでいます。私のもう1つの人格なら問題はありませんよね。

「何か面白い事やってるじゃん。俺の怖い話も聞くー?」

「聞きたくないです」

 即答で返しましたが、鈴は鏡の中から出てきました。出て来ないでくださいよ。
 そして私の体を無断で乗っ取り、そして語り始めました。私は鏡の中から傍観中です。

「俺と銀が住んでいる世界は違う次元でさ。でも、この次元と似てる訳。銀がいるから俺がいる。もちろん、俺がいる次元でもそこの死神君や眼帯忍び君もいるよ。

 だけどね、銀の世界には存在しなくて、俺の世界には存在する奴がいたんだ——」


 R U A〜鈴視点〜


 俺は白影寮の管理人代理をやっている。こっちでは珊瑚叔母さんが世界旅行に行ったらしいけど、こっちは叔父さんが病気で倒れたから仕方なく。
 当然、住むには神様天使悪魔鬼も同伴だった。

「この野郎。何で俺がこんなところで管理人代理をしなきゃいけねぇんだよ、マジ不幸」

「ザマァww」

「ディレッサマジ黙れ」

 緋色の扇を振り、ディレッサを黙らせる。
 あぁ、何かたくさん住人が増えたような感じがするなぁ。こいつらの飯も作らなきゃいけないのか?
 まぁいいけど。

「鈴ー!!」

「どうした日暮。おやつならねぇぞ」

「あれなんなのー?」

 日暮が指した先には、紫色の髪をした女性が立っていた。白影寮の住人だろうか。
 俺はその女性を最初は軽く無視したけど、だんだんと無視できない状態へ行った。

「あの、翔子さん?」

「何だどうしたクソ馬鹿」

「……あの紫色の女の人って誰?」

 寮長である東翔子さんに問いかけてみる。
 彼女は切れ長の瞳を紫色の女性に向けて、ただ一言答えた。

「ルアだ」

「ルア?」

「あぁ。俺がこの寮に来る前にいたらしい。もう何年も住んでるって噂だ。俺らはルアをいない扱いしてるが」

 平然とした様子で答える翔子さんを見て、俺は思った。
 そんなのでいいのだろうか、ルア。それで楽しいのだろうか。
 すると、副寮長のすみれさんが話しかけてきた。

「気にしない方がいいよ。ルアもあたしらが話しかけると無視するんだ。だから無視してんの」

 そうだとしても、それは悲しいんじゃないか?
 部屋に戻って、俺は神様達と話をする事にした。ルアって子についてだ。

「何かあいつ、怪しいんだよなー」

「別にあの子はいい子だと思うけどなー。俺はそう思う」

 天使の中で1番のお調子者であるソード・ブレイジングが言う。女の子大好きだからそんな事が言えるんだろうよ。

「部屋を掃除しに来たよ。別に私らに気づいているそぶりはなかった」

 水の天使であるクロエルが言う。何で部屋を掃除しに来た。
 その言葉に神様であるヴァルティアが無言で頷いた。そうだとしても……嫌だなぁ。

「鍵かけようかな」

「何かあったら私が退治しましょうか?」

 恋のキューピット(自称)のラフが話しかけてきた。とんでもなくドジであるこいつが。
 迷惑なので丁重に断っておくとするか! うん!

「天地。天谷。天羽。天音。お前らに任せた。あと紫月。ハトも、よろしくなー。ディレッサ、年長組なんからしっかりしろよ」

「何で私の方を向かないんですか?! 私、信用されてません?!」

 別に信用してない訳じゃないけどさ。お前が留守番やると、いつも部屋が荒れてるから。
 多分動物に変身する練習でもしてるんだろ。誰か止めろよ。

 その日の夜。寝ていると、突然ヴァルティアが起こしてきた。何だよ。
 ヴァルティアは怪訝そうに眉をひそめ、そして窓を指す。

「気配が」

「誰の」

「ルア」

 見ると、他の野郎どもも窓の向こうを見て睨みつけている。
 俺はベッドから這い出ると、窓の外を見た。
 ルアがいた。踊っていた。黒い舞い装束を着て。

「……呪いの巫女舞?」

「あれは邪神を降ろしますね〜。早急に止めなくては〜」

 天音がのんきな事を言っている。けど、本当に止めなくては!
 俺は扇を広げると、ルアに向かって怒鳴った。

「そこで何してる!! 『全ての髪よ、降臨せよ。我が手足となり、悪をくじけ——!』」

「……!」

 即座に神様天使悪魔鬼を全て召喚し、ルアと対峙する。
 ルアは俺らを睨みつけたまま、動かなかった。

「……こいつ」

「どうした、ディレッサ」

「悲しい感じがする」

 ディレッサは悲しげな表情を見せて言った。何が悲しいって言うんだよ。
 ルアはうつむき加減で、口を開いた。

「私は……人じゃないから。幽霊、だから」

「幽霊?」

「成仏、できない」

 ルアは今にも泣きそうだった。でも、何で? 銀の世界では存在しない奴なのに?
 まさかこいつ自身が邪神?

「知るかぁぁぁああ!! いきなり召喚されて僕はうんざりしてるんだよぉぉお!」

「テメェ、キャス。また羅のところに?!」

 キャスがブチ切れて、ルアに向かって殴りかかった。で、案の定吹っ飛ばされる。
 いやいや、邪神相手に吹っ飛ばされるのは当たり前だしな?

「私は……もう、もうおしまいなの!!」

「そうか。おしまいか」

「おい、鈴?!」

 知らぬ間に、俺は前へ出ていた。
 ルア。だったら調伏してやる。大人しく永遠に眠れ。

「『荒ぶる魂を静め、ここに光を紡ぎたまえ』——」

 扇を振ると、ルアの姿がだんだんと薄れていく。
 これで、いいのか。本当に?

「鈴さん?」

「ん。何でもねー。早く寝ようぜ」

「羅ゥゥウウ!」

「お前は封印されてぇか?」

 そして、ルアはもう姿を現す事はなかった。