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Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。 ( No.18 )
日時: 2011/10/16 21:38
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
参照: 行きます山下初のハーレム!!

第2章 とある彼女は銀の鈴。


 ふぃ。サッカー部の練習はハードです。疲れますね。
 辺りには夕闇が迫っていました。早く帰ってご飯の支度をしなくては!

「やぁ、銀ちゃん」

「あ、矢崎さん。お疲れ様です」

 スポーツバッグを抱えた矢崎さんに頭を下げ、私は寮へ向かおうとしました。
 すると、矢崎さんに呼び止められました。
 何か用でしょうか?

「もしよかったら送って行こうか?」

「あ、大丈夫です。1人で帰れますよ」

 ですが、矢崎さんは私の手を取って真剣な表情で言いました。

「女の子を1人で帰らせるのは危険だよ。送らせて」

「え、大丈夫ですって。家も近いですし」

 それに電話すれば誰かが来てくれますし。
 なのに矢崎さん、送る送ると言ってきます。気持ちはありがたいのですが、ついてきてほしくありません。
 何故って? 黒影寮の皆さんを一般人には見せられませんからね。

「ね、不審者とかいるらしいから……」

「だから結構ですって言ってるんですけど!」

 私が腕を振りほどいた瞬間、グイッと誰かに体を引かれました。
 誰だろうと思い見上げてみますと、立っていたのは空華さんでした。

「この子、俺様の連れなんだよね。勝手な真似をしないでくれるかな?」

「……お前、誰だよ」

 矢崎さんの低い声が聞こえました。警戒してるのでしょう。
 対する空華さんも、いつもの空気のような声ではなく冷たい声で返しました。表情もどこか真剣です。

「英学園に通う王良空華だ」

「……あぁ、あの特別クラスの。特別クラスの事はこの『白雪町』では有名だよ。たくさん勉強しないと入れないんだっけ?」

「そうでもねぇさ。ま、あんたみたいな奴は絶対に無理だと思うけどな」

 空華さんはそう吐き捨てると、私の手を引っ張って矢崎さんに背を向けて歩きだしました。
 逃げるように、早足で。

***** ***** *****

 黒影寮に続く山道。少し坂がきついです。
 あれから、私と空華さんは1言も喋らずに歩いていました。無言が辛いです。
 すると、空華さんから声をかけてきました。

「矢崎春馬とはどういう関係?」

「え、あの」

 いつもの声とは違い、その声はとても真剣でした。
 空華さんはこちらを振り返りません。ただ私の前を、スタスタと歩いていました。
 この空華さんが怖くて、私は答える気にはなれませんでした。

「……言えないの?」

「あの、私の学校のサッカー部でして……。3日後に試合を控えてるんですが、マネージャーさんが怪我をしたので臨時のマネージャーになるよう頼まれて」

「それだけ? 他には何もされてないの? 告白とか」

「へ? ぜ、全然ですよ!! 私、モテないんで!」

 というか恋にも興味はありませんし。
 空華さんは私の言葉を聞き終わると、にっこりと笑って私の頭を撫でました。

「うわ、わわ! 空華さん!」

「ん。それだけなら心配ない。明日も遅くなるんだったら迎えに行くから。校門で待ってるね?」

「だ、大丈夫ですから! 空華さんは力の訓練とかあるんでしょう?」

「そんなの平気だよ。倍やれば済むし」

「そんな軽い調子で良いんですか?!」

 空華さんは本当に分からない人です。
 真剣になったと思ったら、こうやって空気みたいに飄々として笑うのですから。