コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。企画・もしも彼らが○○だったら ( No.204 )
- 日時: 2012/02/07 21:49
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
第10章 突撃☆隣の国のマフィアさん!
という訳で、翔さん達が実家で戦っている間に、私は美羽さんと一緒に下町へお買い物です。
今日のメニューはたくさんの餃子らしいです。中国では水餃子がメインらしいですね。
「焼いた餃子も美味しいけどねー」
「そうですね」
あははうふふ、と笑いあいます。
美羽さんは優しい人です。そして美人ですから憧れます。私もこういう人になりたいですね。
「で、鈴君も来てるんだっけ?」
「そうそう。俺はここから見学中」
私は首からぶら下げた小さな鏡を覗きます。そこから見えたのは、鈴ののんきな顔でした。
美羽さんはそれを覗き込み、微笑みました。
「そこから世界が見えるってすごいよねー。銀ちゃん、鏡はまともに見れてる?」
「あ、ハイ。呼びかけないと鈴は反応してくれないんですよ。だから呼ばない時は普通に覗きこめばいいですし、用事があるなら呼べばいいですし」
「そうなんだ、便利だね!」
便利、なんでしょうか? 鈴が「便利じゃない!」と叫びました。
その時です。美羽さんが険しい顔をしました。誰かいるのでしょうか。
「あの子……銀ちゃんのお友達?」
「へ? 誰ですか?」
とある1つの店——デッキから見てくる1人の女の子。金髪で見るからに10歳前後を思わせます。
その金髪の女の子は、私の方を恨めしそうに見ていました。そして、何やらおもむろに立ち上がりますと、私の方へ近づいてきます。
誰でしょうか、と首を傾げていますと、鈴が鏡の中から叫びました。
「ヴァルティア!」
「了解した」
ヴァルティアさんが鏡の中から飛び出し、目の前にバリアを張ります。
女の子はいつの間にか手にしていた短剣を、バリアに叩きつけました。バキィッという音がします。
美羽さんは何が何だか分からないとでも言うかのような表情を作っていました。
「な、何?! この子は一体誰?! 知り合い?!」
「知らない人です!」
「あ、すみません。私が一方的に知っていても仕方がありません。名乗る事にします」
ヴァルティアさんにバリアを解いてもらいます。金髪の女の子は武器をしまいますと、綺麗な動作で礼をしました。
「初めまして。リヴァイアサンのリネ・クラサ・アイリスと申します。リネで構いません」
前回現れた梨央さんより、リネさんの方が礼儀正しいような感じがします……。
リネさんはスッと顔を上げますと、武器を取り出しました。あれ? さっき握っていたのは短剣じゃなかったですか? いつの間にか長い剣に変わってますけど。
「ここで死ぬか、私に大人しくついてくるか。どちらか選んでください」
「死ぬのが選択肢であるんですか」
「えぇ。私はそういう人です。ターゲットは生きていても死んでいても構いませんので」
リネさん、梨央さんよりも怖いです。
美羽さんが素早く反応して、ヴァルティアさんに命令しました。
「鏡に戻りなさい!」
ヴァルティアさんは鏡の中に飛び込みました。美羽さんは私の体を掴み、担ぎあげます。そしてどんな脚力をしているのか分かりませんが、屋根の上を伝って空を飛びあがりました。
た、高いです! 怖いですー!!
「少し我慢して。すぐに飛ぶから」
「と、飛ぶ?!」
美羽さんは指を鳴らします。すると、今まで黒かった髪が金色に変わりました。背中からは羽が生えています。見事な天使です。
そう言えば、美羽さんは天使と大地さんが言っていました。
「このまま家に帰るよ! 翔なら何とかなるでしょ!」
「ハイ!」
***** ***** *****
帰ってから黒影寮とお兄ちゃん、零さん、羅さんに事情を話しました。菊牙さんも琳さんも大地さんも深刻な表情を浮かべています。
翔さんは舌打ちをしてぼやきました。
「実家にまで押し掛けてくるなんて、なんて迷惑な奴だ」
「その、リネ・クラサ・アイリスっていうのはどういう子なんだい? 翔、分かるかい?」
菊牙さんが翔さんに訊きます。ですが、翔さんは首を横に振りました。
代わりに、質問に答えたのは空華さんです。
「リネ・クラサ・アイリスっていうのは、創造主だよ」
「創造主? 世界を創造している様子はありませんでしたが」
「創造主でも色んな奴がいるからね。幻獣を作ったり、世界を作ったり。リネ・クラサ・アイリスの場合は武器の生成及び現世への固定だ」
何だか話が難しくなってきました。
空華さんが言うには、その物質を現世へ固定する為には相当難しい術を組み込まなくてはいけないらしいです。創造主は好きにものを作りだせる分、現世への物質固定はできないそうです。彼女は違うようです。彼女は現世への物質固定をして、武器の生成をして敵にきりかかってくるらしいです。
「創造主が力を発揮できるのは自分のテリトリーだけ——銀ちゃんが矢崎にさらわれた時なんかは、矢崎のテリトリーで色々やられたじゃない」
「あ、そう言えば」
「そうそう。創造主は自分の世界を作り出したうえで戦わないといけない。だけど、奴は違う。自分のテリトリーじゃなくても攻撃ができる訳だ」
空華さんは苦々しげに説明しました。
大地さんが唸り声を上げます。
「そんな技は上級の死神にあったね。何だったっけ?」
「人の蘇生」
大地さんの質問に、翔さんはそっけなく返しました。
「人の蘇生はもうすでにその人が死んだ事をなかった事にする必要がある。要するに、創造主と同じで現世で人間の存在を固定するのは死神には不可能って事。翔ならできるかもしれないけど」
「やらねぇよ。禁術だしな」
翔さんは面倒くさそうに頭を掻きます。
「どうするんだよ! このままじゃ銀ちゃんがそいつに殺されちゃうって事か?! ふざけんな!」
「まだ殺されませんよ!」
羅さん。あなたは深刻そうな顔をして何を言っているんですか。
全員が頭を悩ませている時、叫び声が聞こえました。東家に住まう舎弟の人達の悲鳴です。
「なっ——!」
外の景色を見て、絶句しました。
倒れた人達は少し傷がついています。おもに打撲とかでしょうが。その真ん中に、金色の少女が立っていました。長い鎌を持って。
リネ・クラサ・アイリス。
「見つけました、神威銀」