コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。企画・もしも彼らが○○だったら ( No.220 )
- 日時: 2012/02/13 22:14
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
- 参照: バレンタイン? 何それおいしいの?
第10章 突撃☆隣の国のマフィアさん!
何だか鏡の向こうが騒がしい気がします。
私はふと、鈴のノートから目を上げました。添削をしていたのです、間違えまくっていたので。
それに気づいた日暮が首を傾げました。
「どうしたのー?」
「いえ、外が騒がしいなと思いまして」
「僕が見てこようか?」
キャス君が嬉々として訊いてきますが、丁重に断りました。
私は鏡の向こうを覗きます。
見えたのは、唖然として立ち尽くす黒影寮の皆さんと東家の舎弟さんです。1人残っていたのです!
「ち、力がばれました?!」
「銀、どうしよう」
鈴が私に話しかけてきます。今にも泣きそうです。
とりあえず、鈴に神様達を戻してもらい、私とバトンタッチしました。
「あ、う。翔の旦那? それにお客人も……何ですか、その力?」
唖然とした感じで訊いてくる舎弟さん。目が見開かれていて、あり得ないと言っているようでした。
どう説明すればいいでしょうか?
「あの、これはマジックです!」
「最初っから見てました」
「えーと、夢ですよ」
「あの金髪女に散々殴られたけど起きましたよ?」
「うーあー」
ごめんなさい、もう思いつきません。
すると、それを見た菊牙さんが前へ出ました。そして炎を手から生み出します。
「今の忘れなきゃぶち殺すよ!!」
「逆効果ですよ、菊牙さん。こういう時は天へ召すのが1番ですよ」
光り輝く翼を出しながら、琳さんが言います。後ろには美羽さんが白いロングボウを構えていました。射抜く気ですか。
大地さんも鈍色の鎌を空中から引き抜きます。完全に殺す気です!
どうしましょう。黒影寮の皆さんは何とかできませんか?!
「悠紀さん、ダメですか? 言霊で忘れさせるとか」
「精神には効くけど無理」
悠紀さんは早くも諦めモードです。
怜悟さんも蒼空さんも睦月さんも無理です。昴さんは反閇なのでもってのほか。翔さんも死神です。羅さんも無理。
どうすればいいんですかーっ!!
「お、お前ら起きろ! ここはサーカスの集団だぞ!!」
「起こすなテメェ!!」
翔さんが鎌から炎を噴出させます。それでは逆効果です。
その舎弟さんは仲間を起こそうとしましたが、強制的に終了させられました。
何故でしょうか? 空華さんが無理やり止めていたのです。舎弟さんの頭に手をかざし、小さな声でつぶやきます。
「『記憶をともにする万人より告げる。いらぬ思いでは塵となり、頭に積って行く。そのいらぬ記憶を排除する』」
「古代語……?!」
お兄ちゃんが驚いたような声を上げました。その隣では意外な反応を見せる零さんが立っています。
「昔の言葉——しかもあれは、神が使う言葉だ! そんなものを一体——」
「術式として組み込んだだと? あいつ、国語が苦手で呪文を作るのにも精一杯なのに!」
零さんとお兄ちゃんはぽかんと口を開きます。
神様だというのにもかかわらず、翔さん達にはその言葉の意味が皆目見当つかないようです。皆さん、首を傾げています。
鏡の中から、ディレッサさんが言いました。
「鈴も知らないこれ俺だけが知ってる話ね。聞きたい? 1万円で聞かせてあげるよ」
「今度お菓子を作ってあげるという手でどうですか」
「乗った。じゃあ特別に。あれは、記憶を司る神が人間に教えた術式『記憶の仕事人(メモリー・ワーカー)』っていう術式。他人の記憶——それこそ、神様でも悪魔でも死神でも人間でも好きなように記憶を操れるって訳」
「もう少し簡単に言うと?」
「あの術式を使うと記憶をよみがえらせたり記憶喪失にしたり、1部分だけを抜き取ったりできる」
平然と答えるディレッサさん。
その時、バチンという電気が弾ける音がしました。
「ね、今見た事——覚えてる?」
空華さんが確かめるように舎弟さんに訊きました。
舎弟さんは首を傾げて、
「何がですか? ていうか何でこんなに荒れてるんですか?」
「いやぁ、ちょっと翔と菊牙さんが喧嘩を始めてねー。止める為にそこの舎弟さんどももやられたらしく。治療してやってね?」
空華さんが適当にごまかします。
本当に、覚えてないんですか……?
「空華って、一体何者なんだ……?」
昴さんが、小さくつぶやきました。
***** ***** *****〜空華視点〜
その日。黒影寮に帰ると電話が鳴った。
見覚えのある電話番号。コールボタンを押し、スピーカーに耳をあてる。
『使いましたね。記憶の仕事人』
「何だ。天華か」
『昔のように天と呼んでもいいですよ、兄さん』
電話の向こうで、弟が冷やかしたように笑う。
俺様は苦笑を浮かべ、要件を訊いた。
「何か用か」
『記憶の仕事人。あれで最後だったんでしょう? ストック』
「よく知ってるな。さすが呪術師だ」
『分かるんですよ。何年兄弟をやっていると思っているのですか?』
弟は言う。
記憶の仕事人は使用回数が決まってる。任務で関係のない人間が俺様を見た時、記憶を消す為に使う術式だからだ。
今回、あいつの記憶を消す為に最後の1回を使ってしまったのだ。
使用回数はおよそ1000回。再度使う為には儀式が必要となってくる。
『帰って来られるんですか?』
「あぁ、帰る。じゃないと記憶の仕事人が使えない」
『分かりました。綺華にも伝えておきますね。——兄さんのお友達はどうします? 呼びますか?』
俺様は食堂で楽しげに話す奴らに目を向ける。
あいつらは、連れて行けないだろう。自分でついてくるならまだ別だが。
「自分でついてきたら連れて行く」
『分かりました。それでは、お待ちしていますね。兄さん』
電話は切れる。
あぁ、本当の俺様を見せるのか?
どうかついてこないでほしい。それなら夜中に抜け出せばいいだろうけど、それだと銀ちゃんが心配する。
儀式は簡単に終わる訳でもない。それに、俺様の足では実家まで帰れない。
「やっぱり、見せるのかな……」