コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。企画・もしも彼らが○○だったら ( No.224 )
- 日時: 2012/02/14 21:35
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
- 参照: バレンタイン? 何それおいしいの?
バレンタイン企画! 夕遊様バージョン。
「ハイ、チョコ♪」
「うわーい。ありがとう、夕!」
「ホワイトデーは3倍返しで♪♪」
「え」
これでクラス全員にチョコは配り終わった。ふー、疲れた。
私は空になった紙袋をしまいつつ、目的の相手を探す。
教室には——いない。どこに行ったのかな。
「白影寮に帰った?」
彼は白影寮の管理人代理を務めている。ゆえに、帰るのがいつも早いのだ。
これは仕方がない。寮に届けに行くか!
***** ***** *****
白影寮は森の中に建っている。
チャイムを押すと、ガチャリとドアが開いた。英女子学園の人達はまだ帰ってきていないようだ。
「……何だ、夕か」
「何よそれー。せっかくチョコを渡しに来てあげたのに!」
出てきた銀髪の男の子、神威鈴は少しムッとした顔をする。そして私を白影寮の中に引き込んだ。
ドアを乱暴に閉め、私をドアに押しつける。どこか不機嫌そうだ。黒曜石のような瞳が、怒ったように細められている。
「どうして、クラスの男子にチョコを配ってたんだよ」
「え、だってあれは——」
「答えて。どうして?」
言えない。
実はあなたの為にどういうチョコを作ろうか迷っていたら、クラスの男子にチョコをせびられたから仕方なくっていう理由だ。私がチョコを配っていたのはその為だ。
そんな簡単な理由が言えず、私は鈴から目をそらした。
それにむかついたのか、鈴は私のあごを持ち上げて視線を無理やり自分の方へ向けさせる。
「キスされたいの? それとも理由を話す?」
「ごめんなさい、話します。話しますからご勘弁を!」
チッと舌打ちをした鈴。あれ、何。残念ですか。
私がその理由を話すと、「何だ」と鈴は安堵の表情を見せてくれた。
「だったらあれは義理って訳ね」
「本命を渡す訳ないじゃん」
「……ちょっと待って。本命っているの?」
え、いるよ? と答えると、また鈴はムッとする。
よし。この時なら渡せる。私は鈴に綺麗にラッピングされた箱を突き出した。
「そんなムッとしないでよ。ほら、鈴にもチョコをあげるから」
「……それ、本命? それとも義理?」
「どっちがいい?」
冗談半分で訊いてみた。
「本命」
鈴は真面目に答えた。
「……じゃあ、本命って事で」
「何それ、じゃあって」
「いや、あの。だからってマジであごを持ち上げないでください痛いですそして目がマジです」
本気でやってきそうだ、キスを。
「じゃあ、じゃなくて『好きです。これ本命チョコです』って言って渡してよ」
「え、でも」
「じゃないとキスするよ?」
「言わせてもらいましょう」
いや、まぁ、本命ですけどね。
私は鈴が持つ箱を受け取り、言った。鈴が指定した通りの台詞を。
「好きです! これ、本命チョコです!」
「……ちょっと冗談で言ったつもりなんだけど。そこまで本気で演技しなくても」
「本気だもん! 本気で鈴が好きだもん!」
大・告・白! ここが教室じゃなくてよかった。
鈴はキョトンとした表情を見せた後、ブハッと吹き出した。笑うなや。
「……何だよ。それ。勘違いしてた俺がバカみたいじゃん」
「ほえ?」
「色んな男子に笑顔でチョコを渡すお前に嫉妬してた。何で自分には笑顔でくれないんだろー、て。どうせなら、その笑顔を独り占めしたかった」
ギュッと力強い腕で抱きしめられる。
「俺も。本気で、夕が好き」