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Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。大ヒット御礼、劇場版展開! ( No.232 )
日時: 2012/02/18 21:53
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
参照: バレンタイン? 何それおいしいの?

劇場版 第1章


 黒影寮ども+白刃、零、白亜、羅が目覚めた場所は森だった。どこの森かもわからない森。ただ1つ言える事は、黒影寮の森ではない事だ。
 空華は立ち上がって辺りを見回す。

「……ここは一体?」

「さぁな。人の気配が見つからない。異次元の空間か——創造主系の奴らが一斉にせめてきたか?」

 翔が怪訝そうに眉をひそめ、空中から炎の鎌を取り出す。一瞬で死神スタイルになると、森の奥へ消えていった。
 その背中を見て、昴は一言。

「迷うなよ。怜悟みたいに」

「人を何だと思っている」

 怜悟が恨めしそうな声を上げる。

「あの、すみません。何で私らまで呼ばれたんスかね? 私、何もしてないッスよね。黒影寮にも行ってないし」

 そこで、白亜が手を挙げて発言した。
 全員「さぁ?」と台詞を返す。当たり前だ。自分達だって理由が分からない。とりあえず森で寝ていた理由が知りたい。

「まぁとりあえず、俺も散策してこようかな?」

 と、零が伸びをして立ち上がる。瞬間に睦月と蒼空に腕を掴まれた。

「何をする2人とも」

「「死にたいなら行ったら?」」

 2人同時に言う。しかも真面目な顔で。
 零はしぶしぶ散策を諦めた。自分が方向音痴だという事を理解していないのだろうか?
 すると、今度はつかさが声を上げた。

「ねぇ。銀ちゃんは?」

「ハァ? 銀ちゃんならどっかに——」

「いないんだけど」

 ん? と全員は首を傾げる。
 銀はみんなの近くで白い封筒を開いていた。それを見た時、全員は寝てしまったのだ。
 だからてっきり銀が近くにいるものだと勘違いしていた。

「ちょ、昴! 翔を連れてきて!」

「もう連れてきた」

「何をするーっ!」

「一大事! 銀ちゃんがいないの!!」

 全員輪になって作戦会議を開始する。

「銀はどこに行きやがった?」

「とりあえず、ここら辺にはいないと思う。銀髪なんてそうそういないじゃん? 蓮。においとか分かる?」

「ダメだ。色んなにおいと混じってる——ん? 待て。人がいるぞ」

 肉体変化のおかげか、人の数万倍の嗅覚を持つ蓮が何かを嗅ぎつけたらしい。
 蓮を頼り、森の中を歩く。そこには案の定、人がいた。しかも結構な人数が。どうやら何かいい愛みたいなものをしているらしい。
 1つのグループはメイドと執事のグループだった。メイドの方は黒いつややかな髪で、ポニーテールに結んでいる。身長は高め。執事の方も黒い髪だった。腰には金色の懐中時計を吊るしている。
 もう1つのグループは中学生の軍団だった。メイドやら制服やら色々な個性豊かな奴が勢ぞろいしている。

「おいおい、何を言いあいしてるんだよ」

「蒼空」

 黒影寮1のおせっかい、蒼空が2つのグループの衝突に首を突っ込んだ。
 ぐりん。グループ全員の視線が蒼空に注がれる。

「「「「「テメェが俺らの————!!」」」」」

「どぉわ!」

 そして一斉に攻撃される。
 蒼空は寸前で回避して黒影寮の全員のもとへ戻った。

「テメェが優亜を……。とっとと返せ! 首と胴体を離れさせたくなければな!」

「何を言ってるのさリアルメイドさん! こいつはあたしらがやるんだよ、やーさんの居場所を訊かないと!!」

「何をおっしゃっているのです? あなた方をお相手するのは僕です。翔さん、今のうちです。そちらの集団はやってください」

「ハッ! 終わるのはお前らの方だよ! おいら達は最強なんだからな!」

 そして2つのグループが戦い始める。当然その飛び火は、黒影寮にも振りかかった。
 主にメイドから。

「テメェらから先に始末してやる。遺言すらも許さない。命乞いもするな。ただ——くたばれ!」

 メイドはその綺麗な姿に似合わず、大きな鎌を振り回してくる。それはまさしく、翔が使っている鎌と同じだ。
 チッと舌打ちをした空華は、苦無でメイドの鎌を受け止めた。ガキンと拮抗する音が生まれる。

「ほう、やるじゃねぇか」

「あのね……メイドさんが! そんな物騒なものを振り回しちゃダメでしょー!」

 メイドに足払いを食らわせ、転ばす空華。だが、その首筋にはしっかり鎌の刃が突き立てられていた。

「……メイドを馬鹿にするなよ」

「やるねぇ。怖い」

「こっちも忘れるな!」

 メイドと空華は素早く反応し、襲ってきた雷龍を回避する。
 どうやら茶髪の中学生が撃ったらしい。その手には巨大な棒が握られている。

「やーさんはどこにやったんだー!」

「誰だよ、やくざかよ」

「ちげー! おいら達の仲間だよ!!」

 ギャーッと叫んだ茶髪の中学生は、構わず雷龍を撃ってくる。
 黒影寮もさすがに我慢の限界に達したらしい。
 それはそうだ。自分達も己の管理人・銀を探しているのにもかかわらず、いきなり犯人扱いをされて「返せ」と言われた挙句戦いを挑まれたのだ。
 これはもう、買うしかあるまい。

「まとめて相手してやるぜ、この弱者ども! 黒影寮を舐めるなよ!」

 翔の号令1つで黒影寮は動き出す。
 3つの軍勢が互いの力を駆使して戦って————


「ディレッサ。奴らの力を奪い取れ」


 3つの軍勢が、一瞬で地を這う。何者かに体力と自分の能力を奪い取られたらしい。

「な、お前……!」

 空華の目が見開かれる。
 彼らが見据えた先には、ディレッサともう1人——銀に似た少年の姿。

「鈴?!」

「よぉ。喧嘩するなら止めといた方がいいぞ。今度はルテオを呼ぶ」

 鈴は緋色の扇を弄びながら、そう答えた。

「ルテオ? 神と通話できるぐらいの能力しかない天使を何で——」

「この世界を司る神(作者)と通話し、この世界を終わらせる」

 つまりこの小説のエンドを示す。
 全員はプライドとかそのほかもろもろをゴミ箱に捨て去り、こう告げた。

「「「「「ごめんなさい」」」」」