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- Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。大ヒット御礼、劇場版展開! ( No.237 )
- 日時: 2012/02/20 21:39
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
- 参照: バレンタイン? 何それおいしいの?
劇場版 第3章
「おい、テメェら。人の神社で何をやってやがる」
神社の石段を踏みしめて上ってきたのは、長髪の男性だった。ディレッサよりも年下だが、確実に全員よりは年上だろう。零よりも。
その男性は神社の様子を見て、顔をしかめた。
「どうしてこんなに荒れてるんだよ……。テメェらが暴れたのか?」
「いや、あの……すんません」
代表して直人が謝る。
男性は「あーあー、いいよ。もう」と投げやりな答えを返して片腕を振る。
すると、一瞬で荒れていた神社は元通りの綺麗な神社に戻った。傷だらけになっていた境内は傷すらも見当たらない。
「今度は気をつけろよ、くそガキども」
男性は舌打ちをして境内に腰をかける。そして上を見てため息をついた。
全員も自然と上へ目を向けてしまう。
そこに広がっているのは青い空ではない。人工的に作られた空だった。まるでスクリーンに映し出されたかのような。
「なぁ、あの空ってスクリーンにでも映されてるのか?」
「この世界の事を知らないのか? 珍しい奴もいるもんだ。下からの生き残りか」
男性は意外とでも言うかのような反応を見せる。そして語り始めた。
「今から500年くらい前だったかな……。大津波が世界を襲い、人類はほぼ消滅した。が、何千人かは生き残ったんだ」
「ご、500年……?」
黒影寮の全員の視線が、翔へ向けられる。翔は自分の記憶と照らし合わせ、500年前に何が起こったのかを思い出している様子だった。
だが、男性はそんな事を無視して話し続ける。
「その何千人が手を取り合って協力したというこった。それでできたのが、この空中都市『新・東京』だ」
「で、人類はどうなったのでしょう?」
「さぁな。少なくとも世界は水没しているが、まだポッドとかに沈んで目覚めた奴がいるんだろ。だがたいていの奴はアンドロイドだとか人造人間が多い。それらは太陽の光を嫌う。人工的な太陽の光と空で成り立ってるのさ、この世界は」
「ちょっと待て。500年前に津波なんか起こってないぞ。500年前と言ったらまだ江戸時代だ。1511年だろう?」
1700年生きている翔は、男性に訊いた。
男性は「ハァ?」と言って首を傾げる。
「ここは3012年だぞ」
「「「「「……」」」」」
桁はずれな西暦が聞こえたような。
「……すません、もう1度頼めます?」
「だから、3012年だと言ってんだろ。耳が遠いのか、テメェ」
男性は平然とした様子で答えを返す。
全員顔を見合わせて、そして絶叫。
「「「「「み、未来の世界ィィィィィィイイイイ?!!」」」」」
わたわたと暴れ出す全員。さすがの瀬野翔も燐も慌てている様子。アウトオブ眼中だったはずなのに。
男性はパンパンと柏手を2回打ち、鎮静化を図った。
「どうした、そんなに慌てて」
「だって! だって何でそんなに平然としてられるんだよ! あ、そっか! お前はこの世界で生まれた奴だもんな! だけど俺らは1000年前から来てるんだよド畜生!」
「……1000年前、だと?」
ピクリ、と男性の眉がひそめられる。
「——なるほど。だから昴に似ているなと思っていたんだ。昴本人なのか?」
「え、そうだけど。俺は椎名昴」
「黒影寮の副寮長にて闇の踊り子。反閇術を得意とし——今でも銀が好き」
男性にピタリと当てられる。昴は戦慄した。
さらに男性はぐるりと周囲を見回し、
「なるほどな。異世界の野郎までもが混ざってる。が、分からなくもない。相崎優亜を探しに来た瀬野翔と久遠燐。八雲優奈を探しに来た2の2くえすとルーキーども。そして銀を探しに来た黒影寮。大方そんな感じだろ」
「どうして分かるのですか」
燐がどこから取り出したのか分からない、ナイフを男性に当てた。
男性は飄々と答えを返す。
「刺したいのなら刺せばいい。ただし、できるなら——な」
「何を——!」
「一応名乗っておいてやるか」
男性は燐のナイフを押しのけ、空中から炎の鎌を生み出した。それはまさしく、翔が使っているのと同じ鎌だ。
炎神。
世界に2つとない、炎の死神しか使えない鎌である。
「何で、炎神を……」
「俺の名前は——東翔」
男性は、自分の名を告げる。
「つまり、未来のテメェだ。黒影寮の寮長」
男性——東翔は、不敵に笑った。