コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。大ヒット御礼、劇場版展開! ( No.245 )
- 日時: 2012/03/02 14:20
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
- 参照: テスト爆発しろ!
劇場版 第7章
やーさん(本名・八雲優奈)は、ズカズカと神社に上がりこみ、お茶を勝手に啜っていた。ずうずうしいにも程がある。
その向かいで、未来の翔が頬づえをつきながら、優奈に訊いた。
「一体何しに来た。女王特務警備隊の隊長殿」
「あ、お茶おかわり」
「……(イラッ」
未来の翔はイラつきながら話の内容を待っている。
それを見ていた黒影寮・メイド・ルーキーメンバーは。
「なぁ、やーさんってあんな感じなのか?」
昴は優奈と同じ容姿を持つ実兄、優羽に問う。
優羽は苦笑しながら「いやぁ、あっちも完璧にイラついてるよね」と答えた。当本人はこの面倒な任務があるせいか相当イラついているらしい。
瀬野翔が優奈にお茶のおかわりを出したところで、優奈は話を始めた。
「あんたに涙様の婚約パーティーに出てほしいんだって」
「断る」
話を始めて3秒で未来の翔は答えた。しかも否定。
ズズーッとお茶をすする優奈は、怪訝そうに眉をひそめる。
「こっちとしては参加してもらわないと困るってさ」
「だから断ると言っているだろう。あんなじゃじゃ馬娘の婚約パーティーに出たところで俺にメリットがあるか?」
「知らねぇよ。こっちだって来たくないんだからよー」
お茶の入った湯呑みをテーブルに叩きつける優奈。
それをハラハラした様子で見守っている3軍勢。特にルーキーの方は心配のご様子。
「だから言ったのによ。パーティーに招待しなければいいじゃんってよー、あんのクソババアしばき倒す」
「時に訊くが、テメェは2の2くえすとルーキー、八雲優奈嬢と見受けるが」
手をつけていなかった湯呑みを握り、未来の翔は優奈に尋ねた。
銀髪をガシガシと掻きまわしながら、優奈は「何?」と答える。
「お仲間探しはいいのか?」
「したいのは山々なんだけどね。こっちもこっちで大忙し。正直こんな小物の仕事なんかやってらんない訳。下の調査もあるって言うし」
かなり順応しているらしい優奈は、大きなため息をついて湯呑みの中のお茶を飲み干した。そしてどすどすと言ったような感じで休憩所から出ていく。
境内に行くと、数百を超えるアンドロイドの軍勢が片膝をついて待っていた。それを見た優奈は顔をしかめる。
「クソバ——メリアスさんからの命令でついて来いって?」
「YES」
「イエスじゃねぇよ。うちにそんな護衛は必要ないって言ったよね、あのババア。もういいや、上から命令させちゃおう」
優奈は何やら小型の通信機みたいなのを取り出すと、それを耳に当てる。どうやら誰かに電話をかけるようだ。
その場に数回のコール音が響いた後、声がする。
『もしもし。えーと、なんて言ったらいいのかな。クイーンズ・オブ・キャッスル、です?』
「あ、もしもし。優亜ちゃん? うちうちー、やーさん」
『任務じゃなかったっけ?』
「そうなんだけど、メリアスのババアに護衛をつけられちゃったから、今後は一切うちに護衛をつけないように言っといてくれない?」
『残念だけど、あたしにはそんな権力はないわよ? 何せ、銀ちゃんの友人扱いですから』
その声に、瀬野翔と燐が反応した。
「「優亜様?!」」
「うるせぇ今電話中だっ! じゃあ銀ちゃんに変わってくれないかなー」
『銀ちゃーん。やーさんから。 ハイ、お電話変わりましたよー。銀です』
「銀ちゃんって言った方がいいの。涙様って言った方がいいの? まぁ自分の名前を忘れちゃうといけないから銀ちゃんっていうけどさ。今から言う台詞を一字一句間違えないで言ってくれないかな?」
『? 了解しましたですよ』
何やら優奈が電話口にごしょごしょ言った後、電話をアンドロイド集団の前に突き出した。
スピーカーモードにされた電話から聞こえてきたのは、あの銀の声。
『皆さんやーさんには構わないで自分の仕事に専念してください!!』
「「「「「YES」」」」」
その声を聞いたアンドロイド集団はぞろぞろと足を揃えて帰って行った。
背中を見送り、優奈は未来の翔達へ向けて一礼をする。
「じゃ、お騒がせしました」
「ちょっと待って。銀ちゃんの声が聞こえたんだけど! あと最初の——優亜ちゃんも? いるの?」
去ろうとする優奈を呼び止めた蒼空。
キョトンとした様子を返す優奈は、ただ一言。
「いますよ、普通に。いなきゃ婚約パーティーは成り立たないからww」
それじゃ、と優奈は空へ飛び上がる。どういう『身体能力を以てしてか、そのままどこかへと消えて行ってしまった。
みんなは顔を見合わせ、そして言う。
「やーさんをどうにかすれば、城に入れるんじゃねぇか?」
そしてその作戦会議が開かれるまで、そんなに時間はかからなかった。
が、無表情を決め込む1人の男がいた。
彼は決めた。『今夜、クイーンズ・オブ・キャッスルに忍び込もう』と。