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Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。大ヒット御礼、劇場版展開! ( No.262 )
日時: 2012/03/10 21:53
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
参照: なんかおかしい。

劇場版 第15章


「やばい事になった」

 未来の翔は頭を押さえて告げた。
 何故だか分からないが、銀の結婚式が予定より早まったらしい。婚約者さんが早く登場した事による。
 婚約者は婚約パーティーには出席しているようだったが、仕事の都合上帰国する事になったのだ。それまではまだ平気だったんだけど。
 さぁて、これからどうしよう?

「とりあえず言える事は、銀を救い出すしかない。クイーン・オブ・キャッスルに突入するしか」

「1億体を相手にしろっていうのか」

「そうは言ってないだろ、クソメイド。話を聞け」

 瀬野翔の言葉を一蹴し、未来の翔は話を切り出す。

「このままだと本格的に1億体を相手にする事となる。だったら国を味方につければいい」

 あ、とみんなはとある1人の少女に気づいた。
 そうだ。その子は一応仲間なのだ。

「八雲優奈。女王特務警備隊の隊長殿を味方につければOKだ」

***** ***** *****

 八雲優奈はふぁぁ、と欠伸を漏らした。
 正直のところ、彼女なりに頑張っていたのだ。婚約者の仕事とやらを遅らせる為に色々と。だけどそれが逆効果だったらしい。
 それで今、女王・銀と優亜はドレスへ着替えている最中である。

(くそ野郎……。この国に戦争を仕掛けてやろうか。いやいや、それだとルーキーの力がもろばれて、うちの体が爆破しちまうわ)

 自前の銀髪をワシワシと掻きまわし、空中から白い鎌を取り出す。1点の穢れも見当たらない純白の鎌。怪しく光を放つそれを、優奈は振り回す。
 壁に亀裂が入った。

「あ、やばい。——まぁ、いいか」

 優奈は適当な事を返すと、そこら辺を歩いていた部下であるアンドロイドに「これを直しておいて」と命令した。
 3000年の技術だったら壁の亀裂を直すぐらい簡単な事だろう。
 白い鎌を握りなおした優奈は、心の中で舌打ちをした。

(……黒影寮の、王良空華だよね。姿が似ているからきっと名前もそう。早く助けに来てあげなよ。他の人のものになっちゃうよ?)

 その時だ。通信が優奈のマイクに入る。
 スピーカーに耳を当てた優奈は、ほくそ笑んだ。
 ヒーローのご登場だ。

「おっけー。協力してあげる。こっちもしびれを切らしていたんだ、思いきり暴れさせてくれなきゃ気が済まない」

 それだけ言い、通信を切る。そして管制室へと向かった。
 これから来る客人達をもてなす為の、最高の舞台を用意する為に。

「……ここに来て、ようやく2の2くえすとの始まりですかー」

***** ***** *****

 とある少女は悩んでいた。
 あの少年が残した言葉が心に引っかかった。

 ——俺様は、好きな人と恋愛できないならその国を変えてやる。
 ——その力を持っているなら。

 自分には国を変える力がある。
 自分には、自分は、新・東京の女王である。

「閃華。私の心は決まったわ」

「え、何が?」

 キョトンとした声を上げた少年は、首を傾げる。
 少女は決意に満ちた目で、告げた。

「私、帰る。帰って、国を変える」

 その少女の言葉を聞いて、少年は静かにその場に跪いた。
 少女を守る騎士のように。従順に。

「ならば、俺もお供しましょう」

***** ***** *****

 3軍勢はいつもの神社に戻っていた。
 休憩所にて机を挟んで対峙する。黒影寮に、メイドと執事に、ルーキー。
 異様な光景だが、こうして出会ってしまった。能力も性格も好きな人もこれから起きる運命も、全て違う彼ら。
 その全てが違う彼らが、手を取り合って、協力する。

「……いいか、黒影寮。瀬野。久遠。名前は省略するが2の2くえすとのルーキー」

 未来の翔は、ただ告げる。

「テメェらの好きにしろ。連絡はつけた。国を半壊させるもよし、目的を助け出す為に頑張るもよし。好きにしろ」

「ハッ。目的を助け出す為に国を半壊させる事はねぇよ」

 翔は鼻で笑い、

「ただ——城が半壊するのは大目に見てもらおうかね」

 全員の意見。そして思い。
 それぞれあるけど、今彼らは動き出す。