コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。大ヒット御礼、劇場版展開! ( No.264 )
日時: 2012/03/12 21:47
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
参照: http://www.kakiko.info/bbs2/index.cgi?mode

劇場版 第16章


 銀はメイド服を着たアンドロイドにドレスを着させられていた。白をベースにされているが、デザインは現代風。裾が長く、ところどころにスワロフスキーが散りばめられていた。
 抵抗はしない。
 したところで、自分には何もできない。

「銀ちゃん。終わった?」

「優亜さん……。綺麗ですね、お姫様のようです」

 えへへ、そう? と優亜はドレスのすそをつまみあげて1回転する。ふわりとドレスのスカートが花のように広がった。
 優亜のドレスはお姫様が着るようなふわっとしたスカートが特徴ベルラインドレスである。茶色の髪の毛はアップにまとめられていて、ピンクのバラの髪飾りで留められている。

「銀ちゃんも似合うよ。そのすっきりしたスカートのドレス。エンパイアドレスって言うんだよ、それ」

「そうなんですか。着た事あるんですか?」

「お母さんが、ね。写真で見た事あるんだ。とてもきれいだったお母さん……私、16だから結婚できるんだね」

 優亜はしんみりとした様子で言う。

「……これで、いいのでしょうか」

「何が?」

「私は、これで本当にいいのでしょうか。胸がもやもやするんです。女王として、神威涙として、私は婚約者の人と結ばれるべきなのでしょうか?」

 本当に好きな人が分からない銀にとっては、これでもいいと思っていた。だけど、心の奥で何かが引っかかっている。
 これではダメだと。これでは嫌だと。心が拒否反応を起こしている。
 暗い表情で、銀は優亜に訊いた。

「私は神威涙としているべきでしょうか? 神威銀としているべきでしょうか? どちらがいいんですか?」

「それはあたしには分からないわ。だってあたしには迎えに来てくれる人がいるもの」

 優亜はニッコリとした笑顔で、答えた。
 迎えに来てくれると。必ず迎えに来てくれる人がいると。

「ちょっと俺様なんだけどね。とっても優しいの。あたしの為になら何だってしてくれる。だからあたしも信じて待ち続けるんだ! 簡単に好きじゃない人と結婚なんて嫌だもん!」

「……優亜、さん」

「お時間ですよー」

 ドアがノックされ、優奈が部屋に入る。2人のドレス姿を見て、優奈は口笛を吹いた。
 銀はエンパイアドレスで髪を下ろしている。セミロングの銀髪はつやつやと輝いていて、頭には真っ赤なバラが飾られていた。
 優奈は白い鎌を担いで、

「かっさらってくれる人がいるといーね。お2人さん♪」

 と、笑顔で言った。
 2人は言葉の意味が分からず、とりあえず首を傾げておいた。

***** ***** *****

 婚約者を今か今かと待つ軍用アンドロイドの前に、銀髪の少年が現れた。
 2人。銀色の少年が2人いる。1人は青い瞳で自分達の上司である八雲優奈にそっくりで、もう1人は女王の銀にそっくりで。
 アンドロイドは首を傾げた。招待した人だろうか。

「招待した人なら受付で——」

「いやいや、その必要はないよ」

 青い瞳の少年、優羽は笑顔で答えた。黒い瞳の女王にそっくりな少年、鈴は緋色の扇を構える。鈴の音が鳴り響き、ディレッサが現れる。

「だって、国に喧嘩を売りに来たからね」

 瞬間、アンドロイドが音もなくバラバラに崩れた。ディレッサが宿った精神を食べ、翔が機械の寿命を操ったのだ。
 機械の寿命を操作した翔は、ズーンとうなだれる。

「あー、禁術使っちまった……どうしよう。殺される、親父に」

「今はそんな事を言っている場合じゃありませんよ! ていうかテメェ何をそんなんでうなだれてるんだ、好きな女を救うなら命を張りやがれオカマか!」

 瀬野翔がいつもの男口調で突っ込むと、そのまま入口の方へ駆けて行ってしまった。
 鈴はその背中を見送ると、次々に神様を召喚する。その横でディレッサが、

「まずい。アンドロイドの魂って油の味がするんだな。ていうか食えた俺も天才だわ」

「神様だもんな、ほら餌の時間だ。好きなだけ食え——ただしアンドロイドに限る」

「嫌だ」

「我がまま言うなよお前! 油食っても死なないだろ!」

「機械油ってまずい——!」

 まずさでのたうちまわるディレッサをなだめている鈴。

「銀ちゃんはどこにいるだろうねー」

「さぁね。とりあえず行かなあかん! 銀ちゃんを救い出すにはm「あ、大丈夫。事前に調べておいた」お前それ先に言えよ!」

 瀬野翔拾ってこい、瀬野翔を! と翔が命令し、昴が出動する。エレベーターに普通に乗り込もうとしていたところで捕まえた。
 情報を事前に調べた空華は、銀達がいるであろう場所の最有力候補を上げる。

「この屋上にチャペルにつながる道があるんだ。空中階段みたいなSFっぽいの。そこまで道のりにはアンドロイドが1億体設置されている。やーさんは最上階。俺様達は最下層。さぁどうする? 作戦を立てる時間はないよ」

 全員は顔を見合わせた。
 先に立ち上がったのは、2の2くえすとルーキーだった。

「決まってんだろうが」

 翔汰が告げる。空中から雷の棒を取り出して、孫悟空の如く振り回す。
 彩佳は2丁銃を。美影は筆を。直人は野太刀を。翼はグローブと靴を。リオンは夜桜を抜く。
 2の2くえすととしての本領を発揮した彼らは、迷わず下層にいたアンドロイドをぶった切る。

「「「「「正面突破しか認めない!!」」」」」

 アンドロイドの軍勢が襲いかかってきた。だがしかし、いくつもの冒険を乗り越えてきたルーキーに敵なし、一瞬にして壊滅させる。

「のう。爆発はしないが……これでいいのじゃろうか?」

「いいんじゃないか? 爆発しないなら結果オーライだ。存分に話を終わらせよう!」

 ルーキーが先陣を切って特攻する。
 そのあとに、瀬野翔と燐が続いた。瀬野翔は鎌を担ぎ、燐はナイフを構える。

「主人を助けなくてはいけませんね」

「最上階か……。気合入れて行くぞ、燐!」

「最初から承知の上です!」

 そして最後になった黒影寮は、

「ここでなら、軍とかそういうのは気にしなくていいんだ。思い切りやってもいいんだよね」

 昴は死神ルックとなった翔に問いかけた。

「あぁ、いいんじゃないか? 存分に暴れてやるぞ!」

 式開始まで残りわずか。彼らは間に合うだろうか。