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- Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。大ヒット御礼、劇場版展開! ( No.265 )
- 日時: 2012/03/13 18:08
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
- 参照: http://www.kakiko.info/bbs2/index.cgi?mode
劇場版 第17章
クイーン・オブ・キャッスルは100階のフロアからなるビルだ。中も当然広い。
その25階を、黒影寮・メイド・ルーキーは疾走していた。
「だぁぁぁ! 睦月、100階まで飛ばせないのか!」
蓮が隣で走っていた睦月に掴みかかる。
睦月は首を横に振った。
「無理や。瞬間移動で連れて行けるのは限られる」
「使えない!」
そこで美影が吐き捨てた。そりゃそうだろう、瞬間移動はとても便利そうに聞こえたから。
白亜はアンドロイドを洗脳させながら、
「まぁでも、洗脳できるから戦わなくてもいいスか。頑張れー、フレー」
「お前も戦えよ!」
蒼空が重力操作して、羅が物質分解させるという手法(第10章参照)で戦う。蒼空は白亜に怒鳴った。
当本人はこってもいない肩をぐりぐりと回しつつ、答える。
「だって走るの疲れる」
「バスケ部のくせに!」
これには羅が叫んだ。羅の場合、白亜の事はどうでもいいが蒼空(イケメン)と組んでいるのが死ぬほど嫌だと言う感じである。
それを見た鈴。羅を元気づける為に大胆行動に出る。
「おりゃ」
「ふぎゃ!?」
変な声を上げた羅は身を強張らせた。
鈴が取った行動——羅に抱きつく事である。鈴は非常に申し訳なさそうな顔で、
「ごめん、汗臭いだろうけど我慢してくれる?」
「あ、あ、あ、あ、」
羅の顔がリトマス試験紙のように赤くなって行く。そして——爆発した。
「うおらぁぁぁぁぁあ! 今のあたしは誰が敵でも敵わないぜぇぇぇぇぇ!」
物質分解をフル稼働し、羅は1億体のアンドロイドへ特攻して行く。そのあとに続き、鈴が満面の笑みで歩いて行った。
内心ではこう思っているのだろう。上手くいったと。
それを見ていた、ディレッサは冷たい目で、
「乙女心を弄んだ?」
「んな訳ないですよ。ちゃんと羅ちゃんも大好きだから♪」
「口では何とでも言えるよ」
「僕の羅に何をしてるんだ、鈴んんんんん!」
そこへ羅に抱きついた鈴の姿をたまたま見てしまったキャスが飛び蹴りをかます。
鈴は蹴られた後頭部を押さえながら、恨めしそうにキャスを睨みつける。そして緋色の扇を取り出し、1回振る。
「お前帰れ」
「い、嫌だ! 羅ゥゥゥウウ! 僕に気づいてぇぇ! じゃないと僕は、僕はぁぁぁ!」
羅はキャスが来ている事を気づいていたが、あえて無視をした。自分が巻き込まれるの嫌だ。
鈴は無理やりキャスを鏡に押しこめると、向こうにいるライアに命令した。
「キャスがこっちに来ないように見張っていて。行こうとしたら鏡の存在を消しておいて」
「分かりました!」
ライアは鏡越しから笑顔で言った。
そして全員は30階へ到達する。ここは小さなホールみたいなところで、招待された客人達がたくさんいた。サイボーグやアンドロイドがほとんどだ。
客人達は3軍勢を見ると、目を丸くして悲鳴を上げた。
「きゃあぁぁぁ! 賊よ、賊! 女王をさらう気だわ!」
「んな訳あるか! さらうんじゃない、取り戻すんだ!」
そんな言い訳が通るのか分からないが、直人が豪語した。そのあとから燐が「それってどうなんでしょうね?」とつぶやいていた。
それでもギャーギャーわめく。どうにか分解しないで対処しようとしたその時、
「面倒くさい事をさせないでよ、お前らさ」
今まで後ろからついてきていた悠紀が、持っていた携帯の画面から顔を上げた。ディスプレイにはきっちり文章が打ち込まれている。今まで小説を書いていたらしい。
悠紀は携帯を閉じると、全員の前に出た。そして凛とした声を放つ。
「【全員システムエラーを起こして寝てろ】!」
バチンッと音がして言霊が発動する。アンドロイドやサイボーグはパタリと床に倒れたが、数人が残った。おそらく人間だろう。
それを見た瀬野翔、鎌を持って特攻を仕掛ける。
「眠れッッ!!」
鎌を横へ薙ぎ、数人の人をまとめて吹っ飛ばした。もはやメイドではない、ただの不良だ。
「不良だけど文句あるのか、アァ?!」
「瀬野、どこに向かって言っているんだテメェ」
「何でもありません」
1秒でメイド口調に戻した瀬野翔。変わり身早い。
その時、とたんにクイーン・オブ・キャッスルが揺れた。何があったのだろうと天井を見上げると、通信が入る。
相手は八雲優奈だ。
『まずい事になったよ! どうするの!』
「何が起きたんだ、この揺れは何だ?!」
『銀ちゃん達を乗せたチャペルが飛び立った。これ、宇宙船みたいな感じらしい!!』
何?! と全員で声を上げる。窓から上を見ると、飛行船がスクリーンの空を悠々と飛び回っていた。あの距離ではさすがにもう行けない。
2の2くえすとでもジャンプ力はそこまでないし、瀬野翔も燐も人間だ。しかも相手は飛行船、下手したら墜落して銀も優亜もお陀仏である。
「羅、物質分解!」
「銀ちゃんが死ぬわ! おい、イケメン死神! 飛べないのかよ、箒のように」
「飛べる訳ないだろ! 悠紀、言霊で連れ戻してこい」
「言霊届く訳ないじゃん。蒼空、重力操作」
「細かい事は分からない。睦月、瞬間移動できる?」
「せやから人数が限られてるって! 白亜ちゃん、神の命令でできない?」
「無理ッスね。王良さんはできないんスか?」
「飛べない凧がないと無理。どうするの? 他にできる人いないの?」
他の人とは違う黒影寮の軍勢が頭を悩ませる。
鈴の神様を使っても、墜落しかねない。零は空気を操るだけだし、白刃もダメ。つかさなんてもってのほか。
じゃあ、あと残るは——?
「ぃよっしゃ。あれを連れ戻してくればいいんだね?」
窓枠に足をかけたのは、椎名昴だった。
「え、すば——」
「いってきまーす!!」
ものすごい脚力で窓枠を吹っ飛ばし、昴は飛行船へと向かって行った。そして、
「オンラァァァ! 帰れぇぇぇえ!」
「「「「「蹴りやがったあいつ?!」」」」」
思い切り飛行船を蹴り飛ばした。銀がいるって言うのに。