コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。大ヒット御礼、劇場版展開! ( No.266 )
日時: 2012/03/13 22:20
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
参照: http://www.kakiko.info/bbs2/index.cgi?mode

劇場版 第18章


 突如として襲いかかってきた衝撃に、銀はひっくり返った。アンドロイドのメイドに止められた。
 一体何が起きたのだろう、と銀は辺りを見回してみる。だが、誰1人として見当たらなかった。というか招待された客も来ていない?

「あの、これってどういう事でしょうかね?」

 婚約者——何か豚面した顔の人間に訊いてみた銀。
 こちらを見たままハァハァしている豚は、

「さぁ? それより結婚式の続き♪」

 銀ちゃんピンチ!!


 一方その頃、黒影寮&メイド&ルーキーは。
 昴をシバキ倒していた。

「痛いなぁ……。大丈夫だって、加減はしたよ」

「加減? どこを加減したと言うのですか。優亜様に怪我が1つでもあったら殺しますよ?」

 燐が小銃の銃口を昴の眉間へと押しつける。
 実際、昴は本当に加減したのだ。闇の踊り子(あるいは呪いの踊り子)である彼は、蹴り1発で飛行船を地球1周させる事ができるからだ。だからクイーン・オブ・キャッスルに戻れた時点で奇跡とでも言っていいだろう。
 だけどそんな事は言わない昴だった。言い訳をするなと怒鳴られそう。

「とにかく、結婚式がもうすでに始まっていると言う事だろ?! もう時間がない!」

「でもここからどうすれば——」

 じっと全員で昴を見つめる。
 昴は蹴られた腕や頭をさすりつつ、首を傾げた。鈍感代表はやはり鈍い。

「昴、時間がないんだ。上へ連れて行ってくれないか?」

 翔が真剣な表情で頼んだ。
 昴は笑顔で答えた。

「だが断る」

「何でですか! 優亜様のピンチだと言うのに!」

「人を殴ったり蹴ったり銃口向けたりする奴の事を連れて行こうかなんて言うかあほ! 自業自得じゃボケ俺は動かないもん!」

「だったら洗脳させますよ?」

「逃げるわその前に。マッハで」

 じゃ、と窓枠に足をかけたところでルーキーに全員で取り押さえられた。

「お願いじゃ、連れて行ってやれんか? こやつら、マジで必死なんじゃ」

「むぅ。中学生のお願いじゃ仕方ないよね……。よし分かった。俺も何とか頑張ろ」

 だからどいてくれ、と昴はお願いする。そして全員で手をつなぐように指示をした。
 昴を含め、全員で輪になる。

「いーくよー」

「「「「「うごぇぇぇぇえ?!」」」」」

 あまりに速すぎて失神しそうになった全員(昴除)こいつ。いつも平気で飛び回っている訳か。
 一瞬でビルの屋上についた全員。ズドンと建物を貫くような音が響き渡った。
 屋上で待機していた優奈は、空から降ってきた全員に対して一言。

「親方ー、空から女の子が」

「女じゃねぇ!」

 翔が全否定をした。女嫌いなゆえか。

「とにかく、早くして! 結婚しちゃうよ!」

「そうはさせますか!」

 屋上のドアが開け放たれる。そこには眼鏡をかけたクリーム色の髪の女性——メリアスが立っていた。後ろにはアンドロイドがすごい数。
 さっきの音で嗅ぎつけられたか、あるいは作戦通りなのか。メリアスは屋上へ足を踏み入れる。

「隊長殿。あなた、結婚式をなかった事にでもする気ですの?」

「イエス。だってうちはここの時代の人じゃないからね」

 下ろしていた純白の鎌を担いで、ニッコリと笑う。その隣に並んだのは、2の2くえすとルーキーだ。
 様々な冒険をこなした最強の中学2年生が、今ここに集結する。

「うちらは2の2くえすと——この話を終わらせに来た主人公だ!」

 アンドロイドと主人公の戦いが始まる。爆風に銀髪をなびかせ、唖然と立っている残りの2チームに優奈は告げた。

「早く行きな。お姫様が待っているよ」

「……感謝するぞ、くそガキ!」

「せめて名前で呼んでほしかったね。やーさんって」

 あはは、と笑いつつ、優奈はアンドロイドの集団へ特攻して行く。
 瀬野翔と燐と黒影寮で飛行船に乗り込んだ。中は案外広く、赤いじゅうたんが敷かれている。一直線に道は続いていた。部屋などない。
 バタバタと廊下を突き進み、奥にあった大きな扉を蹴り開ける。
 白を基調としたチャペルに、優亜がいた。ベールに顔を包み、馬面の男性と一緒にいる。

「テメェ優亜から離れやがれ!!」

「きゃっ、翔?!」

 いきなりメイドが割り込み、優亜を抱えてかっさらわれたのを見て唖然とする馬面。
 燐はその馬面に銃を突きつけ、黒い笑顔でこう言った。

「うちのお嬢様に何をしようとしたのですか?」

「ひ、ヒィィ!」

 燐が脅しているすきに、怯えたように胸で泣く優亜をなだめる瀬野翔。まるで兄のようだ。

「大丈夫か?」

「うん、うん……。迎えに来るのが、遅すぎる!」

「ごめん」

 涙をぬぐった優亜は、黒影寮に目を向けた。

「銀ちゃんのお友達ね。銀ちゃんはこの先にいるわよ」

「この先?」

「あたしは下層のチャペルなの。もっと不細工な奴が婚約者だったわ。早く助けてあげてね」

 優亜は笑顔で言った。
 黒影寮はそれに首肯で答えると、その先にあったドアを蹴り開ける。長い階段を上り、さらに大きな扉を押して中に飛び込んだ。

「銀ッ!」

「え、み、皆さん?」

 白い光を背に、銀は目を丸くした。まさか、迎えに来てくれるとは。
 それを見た豚は、突如銀の首に腕を回すと、小さなピストルを銀に突き付けた。

「動くとこいつを撃つぞ!!」