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- Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。大ヒット御礼、劇場版展開! ( No.271 )
- 日時: 2012/03/14 22:06
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
- 参照: http://www.kakiko.info/bbs2/index.cgi?mode
劇場版 第19章
「それ以上こっちに来たら撃つぞ!! こいつは僕と結婚するんだ!!」
「何を言っているんだ、銀ちゃんと結婚するのはあたしだ——ぶぐ」
羅が襲いかかろうとしたところで、蒼空と睦月が彼女を抑え込む。
イケメン嫌いの当本人にとってはこの上ない苦痛。腕を物質分解でもしてやろうかと考えたが、鈴に、
「下手に刺激すると銀が撃たれちゃうから、大人しくしてね。あと睦月、蒼空。羅をこっちに渡してくれる?」
抑え込む役目を変わってもらい、地獄から一気に天国へ。
豚はギリッと歯ぎしりをして、こちらを睨みつけてくる。
「神威涙は僕と結婚するんだ。僕はそう決めたんだ!」
「誰がお前みたいなキモイ奴に妹を渡すかよ! 返せ!」
白刃は豚に向かって怒鳴りつけた。実際妹のような存在だからね。
対して豚は、
「フフン、そんなの嘘だ」
「嘘じゃないですよ! 私のお兄ちゃんです、止めてください!」
そこへ銀が豚を止めた。腕の中でバタバタと暴れる。銃口を突き付けられているのにもかかわらず、アクティブな娘である。
「空気を抜かれて死にたくないなら——その子を離せ」
手の中で酸素を操っている零は、豚に黒い笑みで問いかけた。
だがしかし、豚には効かないご様子である。本当に空気を抜いて殺してやろうかと思ったが、生徒である東翔に迷惑がかかると思い止めた。
「あの、豚さん。離してもらえないでしょうかねー。その子、あたしらにとっても大切な人なんスよ」
「は、白亜さん……」
「僕は豚じゃないぃぃぃぃぃ!!」
豚は絶叫すると、銀に押しつけていた銃の引き金を引いた。
轟音はならなかった。弾は出なかった。
何故なら、
「その手を離しなさい!!」
銃身に苦無が刺さっていたからだ。
入ってきたのは、なんと本物の女王・神威涙と王良閃華である。司祭はびっくりして、銀と涙を見比べた。
涙は銀を指して、
「その人は、私のご先祖様よ。何を勝手に結婚までさせようとしている訳? 私と見分けもつかないの?」
「え、あの。神威涙……様?」
「いかにも! 私は新・東京第1000代目女王、神威涙よ。先祖に無礼な事をして——ただで済むと思う訳?」
涙は豚を睨みつけ黙らせる。そしてつかつかと銀に近づくと、その腕を握った。
自分と似ている人に出会い、銀は少し混乱をしている様子だった。
「怖がらないで。私はあなたの子孫なの」
「し、子孫?」
「遠い子孫。さ、行こう。下であなたのお仲間が待っているのでしょ?」
涙はニッコリと笑うと、閃華に「後始末をよろしく」とだけ言う。
閃華は首肯すると、豚を縄で縛りあげ司祭に「こいつをほっぽり出しといて」と言っていた。
「み、皆さん……」
緊張の糸が切れたのか、銀はみんなの顔を見ると瞳に涙を浮かべた。
それを見て焦る黒影寮一同。どうして泣いた?
「無事で、よかったですぅ……ふぇぇぇ」
心配で心配で仕方がなかったのだろう。銀は子供のように泣きじゃくった。
銀に1番近い存在でもある鈴が、それをあやすように背中をポンポンとなでる。その姿はまるで双子の兄弟のように見えた。
「でも、どうする訳? 本物が戻ってきたら混乱するでしょ」
空華が涙に問いかけた。
涙はニッコリと笑うと、
「私を誰だと思ってるの? 女王よ、女王。何とでもなるわ。あなたが言った事、分かったの。私には国を変える力がある。自分の恋の相手ぐらい、自分で決めてやるわ!」
自信を持って言い放った女王。空華は苦笑いで返した。
そして全員は、銀の手を引いてチャペルから逃げだした。女王奪還成功。
***** ***** *****
「ぎーんちゃーん! 無事だったのね、豚面に当たったから本当に可哀想と思っていたの!」
「わぷ。優亜さん痛いです! 体当たりしないでくださいー」
あはは、ごめんと優亜はニコニコ笑顔で謝りながら下がる。そして黒影寮をじっと凝視した。
「なるほど。この子達が銀ちゃんのボディーガード?」
「違います。一緒に住んでいる人達ですよ。私は管理人をしているんです」
「ボディーガードじゃない。あたしにも優秀なボディーガード兼彼氏がいるわよ?」
ほら、と平然とした様子でメイドを指す優亜。
メイド・瀬野翔はキョトンとした様子で首を傾げていた。
「あの、何か?」
「彼氏って……男?」
「本名は東翔よ? 面倒だから瀬野翔で済ませてるけど」
じーっと全員で瀬野翔と翔を比べる。確かに顔立ちは一緒だが——。
当本人、翔も大変驚いた様子である。
「おい、テメェ」
「テメェとは何だ。確かに俺は普通の人間でありテメェのように死神でもないが、力をなくせばそれなりに互角だろうが」
「何だと? 今すぐその首を切り落としてやろうか。大丈夫だ、責任持って天国へ連れて行ってやる」
「やれるものならやってみやがれ」
W東翔の喧嘩が始まった。喧嘩と言うか取っ組み合い。
それを何かほんわかした様子で見ている銀に、涙が声をかけた。
「あの、何かごめん。私がいなくなったりしたから、あなたに迷惑を——」
「いえ大丈夫ですよ。でなければ、こんな素敵な出会いはなかったと思いますから!」
銀は満面の笑みで喧嘩をしているW翔とその喧嘩に交じろうとしている2の2くえすとルーキーを指した。黒影寮のみんなも交じろうとしている。
「……そっか」
「そうですよ。涙さんも、この国で頑張ってくださいね。閃華さんと応援してますよ」
「うん。ありがとう」
2人で笑いあう先祖と子孫。
すると、辺りに光が満ちてきて————。
クイーン・オブ・キャッスルから人が消えた。
残ったのは神威涙と王良閃華だけ。2人はただ虚空を見つめていた。
「ねぇ閃華。帰ったんだろうね、みんな」
「そうだね」
2人はスクリーンに映し出された空を見上げた。