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Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。ただいま祭り開催! ( No.278 )
日時: 2012/03/19 14:58
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
参照: http://www.kakiko.info/bbs2/index.cgi?mode

第11章 王良家こんぷれっくす!


「あ、俺様明日からドロンするからね」

 いきなり言われて、私はびっくりしました。もちろん、黒影寮の皆さんもです。
 当然言ったのは空華さんです。
 今時、ドロンなんていう言葉は使わないと思うのですが。まぁいいでしょう。

「どうしてー? 空華、実家に帰るのー?」

「まぁそんなとこ」

 悠紀さんの質問に、空華さんはいつもの飄々とした笑顔で答えます。
 すると、蒼空さんと昴さんの瞳が輝きました。

「ついて行こう!」

「何でだよ?!」

 蒼空さんの台詞に真っ先に否定したのはやはり空華さん。ついてきてほしくないのでしょうか。

「だって翔の実家には行ったんだぜ? そしたら空華の実家にも行くってのが黒影寮のルールだろ!」

「何その暗黙のルール。俺様聞いた事ないんだけど」

 かたくなに皆さんが来るのを拒む空華さん。
 そこへ、黒影寮の寮長である翔さんが、

「命令だ、空華。実家に連れて行け」

 理不尽な命令を下しました。
 空華さんは最後までくすぶっていましたが、やがてしぶしぶ了承しました。
 ところで、空華さんの実家ってどこなのでしょうね?

「俺様の実家は京都だよ。新幹線で行くからね」

 みんな走れないでしょー、と言う空華さん。
 ついて行かなかったら走って行くつもりだったのですか?

***** ***** *****

「懐かしいな。京都って修学旅行以来なんだけど」

 蝉しぐれが浸透する京都駅のホームで、悠紀さんが言いました。
 私は修学旅行は北海道でしたね。京都は実際始めてきました。お兄ちゃん、八橋をお土産で買って行きます。
 空華さんはきょろきょろとホームを見回します。

「兄さん。お帰りなさい」

 不意に声がしました。
 振り返りますと、そこに立っていたのはストレートの黒髪で、暑さ対策でキャップをかぶった美青年がいました。空華さんよりも少し年齢が上に見えますが——お兄さんでしょうか?
 あれ、でもさっき兄さんって言っていたような。

「天華。久々だな、大きくなったなー!」

「止めてくださいよ兄さん。痛いです、痛いですから!」

 空華さんは笑いながら美青年さんをなでまわします。

「紹介するわ。弟の天華。銀ちゃんと同じ高校1年生ね」

「よろしくお願いします。兄がいつもお世話になっています」

 キャップを取って、天華さんは頭を下げました。思わずこっちも頭を下げてしまいます。

「お話は兄から伺っています。黒影寮の皆さんですね、僕らの家では能力を隠さないで大丈夫ですので心配はいりません。僕らも一応は能力使いなので」

「能力使い? 一体どんなだ」

 翔さんが怪訝そうな顔で天華さんに訊きました。
 天華さんは、「そうですね」とつぶやき、

「僕は呪術使いです。いわゆる洗脳ですかね。あとは人を不幸にしたりとか♪」

「案外えげつないな、お前の弟」

「自覚してる」

 昴さんは空華さんの方を見ながら言いました。空華さんもそれに苦笑いを浮かべながら頷きます。
 天華さんは出口の方へ向かって歩きました。

「さぁ行きましょう。みんな待っていますから」