コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。ただいま祭り開催! ( No.284 )
- 日時: 2012/03/20 21:43
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
- 参照: いつの間にやら1400突破ってすごくね?
第11章 王良家こんぷれっくす!
〜空華視点〜
詠唱を唱えている時に、夢を見た。
昔、ある女の子に出会った事がある。その子は京都で舞をする為に来たって言ってたような気がした。
蛍が丘に迷い込んで、そこで俺様が見つけたんだ。泣いている女の子の頭をなでて、泣かないでって言った記憶がある。
まぁ、その子は今どこにいるかなんて知らないんだけど。分からないし。
でも今でも覚えているのは、緋扇と銀色の髪だけ。
(いつまで続くのかな、これ)
血のにおいがする部屋の中で、詠唱をしながらただ思う。
〜銀視点〜
「や、止めさせなくていいんですか?! これで、あなたは止めないんですか?」
「止める必要がありますか。兄さんが望んでこの修行に耐えているのです、止められませんよ」
天華さんはいたって平然と答えを返しました。
どうして、どうしてそんなに無理をするんですか? そんな事をしたら死んでしまうのではないでしょうか。
鈴を出して無理やりにでも詠唱を中断————!
「あ、終わったみたいですね」
「……え?」
緋扇を出したところで、空華さんの声が途切れました。詠唱が終わったようです。
ふらふらした様子で襖を開ける空華さん。赤くなった白装束を見て、顔をしかめます。
「これ捨てる?」
「捨てなくてはいけませんね、血は落ちませんので」
「やっぱりか……ごめん、天華」
申し訳なさそうに笑う空華さん。まるで傷なんかないかのように。
昴さんがすかさず空華さんの体を触診し始めました。同じように怜悟さん、蒼空さんと続きます。
「ど、どうして。傷がない?!」
昴さんは目を見開いて驚きました。
空華さんはキョトンとした様子で、
「まぁ、これが修行って事で。お分かり?」
いや……ものすごい納得できないんですけど。
***** ***** *****〜視点なし〜
その夜である。
翔の家みたいに男子湯女子湯がある訳じゃないので、男子メンツが先に入る事になった。
だけど広い。露天風呂。
「すげぇぇぇぇ!」
蒼空が目を輝かせて露天風呂にダイブした。あとから悠紀もダイブする。
「妙に広いからね、うちの風呂。兄弟がまとめて入れるようにって、昔親父が言っていたような感じがする」
空華が白い湯につかりながら言う。
「あれ、じゃあお父さんはいないの? 親は?」
「いないよ。ババアがいるけど町内会の旅行だってさ。基本的に家は天華に任せてある」
昴の質問に空華は平然と答えた。
翔はその隣に並んで湯につかる。そしてふと、空華の体に気づいた。
体に無数の傷跡がある。それはとても生々しく、たくさん戦ってきたという感じが醸し出されている。
「おい、空華。その体の傷はどうした?」
「え、あぁこれ?」
空華は湯から腕を上げ、自分の傷を見やる。
銃創・縫い跡・切り傷——様々な傷跡がある。黒影寮一同、目を見張った。
「大体は詠唱じゃない修行でついた傷かな。最近はそういうのは少ないけど」
「……今更だが、空華は何をしているんだ?」
怜悟は怪訝そうな目で空華に問いかける。
「何って、何?」
「任務だよ任務! 忍びってそういうのあるんだろ!」
バシャバシャと湯を波立たせるのは蒼空だ。
空華は黒い髪をぼりぼりと掻きながら、
「中学生までは暗殺とかやってたけど……最近は諜報ばかりだよ?」
「重宝って何? 重い宝?」
「よくそっちの方を思いついたな、馬鹿なのに」
何だとー、と蒼空は空華に湯をぶっかけた。
盛大に湯を飲んだ空華は、蒼空に向かって、
「我流忍術——水中引き込みじゃボケェェェ!」
「ぐぼぁ! それって忍術って言うのかそれは——!」
「ハッハァ! 何でもありなんだよ、俺様の家はな!」
「汚ぇ、こいつ汚ぇ!」
ついでに周りの連中も巻き込み、湯殿は大惨事。
「……で、能力を使ってもOKなら能力ありで喧嘩しようぜって事になって、こんなことになったと? へーふーんそー。まぁ俺は別にいいですけどね、よかったな。たまたま銀じゃなくてよ」
銀の姿のまま湯殿に飛び込んできた鈴に強制終了させられ、傷だらけの黒影寮男子メンツは裸で正座させられていた。
鈴は腕組みをして、ニッコリと笑う。そして露天風呂を指差した。
翔が湯を蒸発させ、蒼空が岩や木などを重力操作で無重力にして睦月に突っ込ませ、蓮が爪で引っ掻いたであろう傷が風呂の底にあった。
「この状況、お前ら直せるの?」
「「「「「無理ですごめんなさい」」」」」
「……やっぱこうなる訳だよなー、ハァ」
鈴はこめかみを押さえると、とりあえず時を操る悪魔がいたよなキャスを呼ぶかとつぶやきつつキャスを召喚した。