コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。ただいま祭り開催! ( No.287 )
日時: 2012/03/23 16:34
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
参照: 山下愁はある意味で変態です。馬鹿です。そして変態です。

第11章 王良家こんぷれっくす!


 朝です。私はいつも通りに起きました。
 空華さんも寝たと思いますが、布団にいません。王良家全員がいません。
 どこに行ったのでしょうね?

「こら起きろ寝ぼすけども!」

 ガラガラスッパァァァァァン! とすがすがしいぐらいに襖が開かれました。
 空華さんがおたまを肩に担ぎながら、1人1人を殴り起こして行きます。もちろん寮長である翔さんにも容赦はなし。昴さんも叩き起こしました。
 皆さんぼんやりと目を開きます。

「ふぇ……空華、何で?」

「俺様はこう見えていつも早起きなの。毎朝4時に起きて町内ランニングしてんだからね? 兄弟の朝飯作るのに習慣づいちゃったよ!」

 空華さんは誇らしげに言います。
 寮内でものすごい低血圧を誇る翔さんは、ごしごしと目をこすります。そして大きな欠伸をして背筋を伸ばしました。

「眠いなら顔を洗って来な。この辺り、朝は水が冷たいから。炎ー、味噌汁よそってー、おたまこっちあるから!」

「兄ちゃんパース」

「受け取れー」

 空華さんは廊下の向こうにおたまを投げつけました。次の瞬間、パシッと音がします。炎華君がおたまを受け取った音でしょう。
 のろのろと黒影寮の皆さんは行動を開始します。空華さんの言われた通り、顔を洗う為に洗面台へ行きました。
 私はいつもスッキリ起きられますが……。

「先に着替える? 朝ごはん食べる?」

 まるで主婦の如く空華さんが問いかけてきました。私、娘?

「あ、着替えます」

「じゃ、着替え終わったら大広間来てね」

 ひらりと手を振って、空華さんは出て行きました。さすが大兄弟の1番目。当主様。
 鏡の中から見ていた鈴も、空華さんの姿に感嘆しました。

「すげぇな。案外、人の世話をするの得意なんじゃないの?」

「そうですね。空華さん、いいお嫁さんになれますよ」

「お前に言われたくないと思うぜ。それ」

 鈴に断り、私は普段着に着替えました。

***** ***** *****

「京都観光に行ってきたらどうですか?」

 朝ごはんの最中に、天華さんが提案しました。

「晩御飯の買い物も行かなくてはなりませんし、夏のいい思い出にもなるでしょう。兄さん、案内してあげたらどうです?」

「別に俺様は構わないけど……どーする?」

 空華さんは皆さんに確認を取ります。
 漬物をポリポリかじっていた怜悟さんは、「頼む」と言いました。それに続いて、全員が頷いて行きます。

「じゃ、京都観光をするとして。天華達はどうする? ついてくるか?」

「皆さんがよければ、僕達もついて行きましょう」「ついて行くわ」「ついて行くです」「うん」「俺も俺も!」「姫も」「すいもー」

 全員が頷きました。
 と言う訳で!


「清水寺ってぇぇぇぇぇぇぇ人が流れてるぅぅぅぅぅぅぅぅ」


 清水寺へ続く道。人が混み合っていますきつすぎますきついです本当に!
 暑いし混み合っているし、さすがに気持ち悪くなってきました。それに皆さんとは離れ離れになってしまいましたし……。
 すると、ポンと誰かが私の肩を叩きました。

「ひゃ?!」

「間抜けな声だな」

 私の肩を叩いたのは、何と悠紀さんでした。
 悠紀さんは私の腕を引っ張って、人のいない広場みたいなところに入りました。ふぅ、少し気分が楽になりました。

「僕って人ごみ嫌いなんだよね。空華の記憶の仕事人ってさ、この範囲の人達の記憶を改竄できるかな?」

「無理だと思いますよ?」

 そうだよね、と悠紀さんは苦笑いを浮かべますと、私にハンカチを投げてよこしました。

「日射病になるから、それかぶってなよ」

「でも、悠紀さんは……」

「僕はいいの。普段ニートみたいな生活しているんだから、たまには格好つけさせてよ」

 言葉使いなんて、戦闘じゃあまり役に立たないんだからと付け足しますと、悠紀さんはベンチに座ってぶらぶらと足を投げ出しました。
 お言葉に甘えて、私は悠紀さんのハンカチをかぶります。自分のタオルを使えばいいのですが、せっかくの好意ですので。

「言葉使いで清水寺まで行っちゃダメかな……」

「さぁ……? でも、こんなに混んでいますしね……。少しくらいいいでしょうか」

 でもこれでばれたら魔法少年扱いですね、と私が笑うと、

「それもいいかもしれないね。僕は小説家になるのが夢なんだから、それぐらいやらないと」

「実行する気ですか?!」

「当然。銀、こっちおいで。お姫様だっこで連れて行ってあげる」

「丁重にお断りさせてもらってもいいですか」

 冗談で言ったつもりでしたのに。本気にしました。
 悠紀さんは残念そうに舌打ちをすると、またベンチに足を投げ出します。

「……悠紀さんは、私の事をどう思いますか?」

「いきなりどうしたの」

「いえ。ただ少し訊いてみたくなりましたので」

 ふーん、と悠紀さんは頷きます。そしてぼんやりと空を見上げながら答えました。

「ま、放ってはおけない奴って感じ? 僕にとってはね」

「そうですか」

「ここで愛の告白でもしてもらいたかった? そんなのは寮長に言いなよ。僕は言わないよ」

 してくださいなんて一言も言ってませんけどね。
 悠紀さんはため息をついて立ち上がると、私に手を差し出しました。

「ほら、行くよ。寮長達は、きっと清水寺で待機してる」

「ハイ。行きましょうか」

「ただし、ちょっと飛ぶけどね」

「え」

 悠紀さんはスゥ、と息を吸い込むと、言霊を発動します。

「【風よ吹け。僕達を清水寺まで運べ!】」

「え、えぇぇぇぇえ!」

 風を操って悠紀さんと私は清水寺まで行きました。
 何を、しているんですか悠紀さんんんんんんん!!