コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。オリキャラ募集!詳しくは本文へ ( No.29 )
日時: 2011/10/20 21:17
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
参照: 行きます山下初のハーレム!!

第2章 とある彼女は銀の鈴。


 私は逃げていました。
 矢崎さんが笑いながら追ってくるから怖くて、それで逃げていました。
 銀の鈴? 能力者の力を増幅させる?
 どうやって。ていうか、何で私なんですか!! 確かに銀ですけども、名前!!

「逃げても無駄だよ? この世界は俺の意のままに操れるんだから」

「きゃっ?!」

 いきなり壁が目の前に出現してゆく手を阻まれました。
 矢崎さんが私の体を壁に押しつけます。空いている手で私の顎を掴んで上へ向けました。
 何でしょう、この絵面。まるでキスでもされそうな予感です。

「あの、一体何を? 力を増幅させる為には呪文とかそういうのではなく?」

「違うよ。君からのキスで俺の力は増幅する。他の野郎もそうだ。だから俺は、銀ちゃんをオトすって決めたんだ。マネージャーっていう役名を使ってね?」

 矢崎さんの顔がどんどん近づいてきます。
 抵抗できません。力が強すぎて顎が痛いです。足を振り上げればいいのでしょうが、怖くて上げられません。
 どうしましょう。絶体絶命のピンチです。

「あのぉ」

 ピタリと、矢崎さんの動きが止まりました。
 声がした方を向いてみますと、夕暮れの廊下に女の人が立っていました。
 見覚えがあります。翔子さんです。

「チッ。誰だ。どうやってここに入った?」

 警戒した矢崎さんの声が聞こえてきます。
 翔子さんは矢崎さんから私に視線を向けると、盛大にため息をつきました。

「……おい、ビッチ。簡単に捕まってんじゃねぇよ。この馬鹿」

「な、ビッチって何ですか!! 翔子さ——」

 名前を言いかけたところで、翔子さんの周りに炎が生まれました。
 炎はだんだんと細くなり、まるで棒のような形になります。先端から曲線を描いた刃が生えてきました。
 翔子さんは炎で出来た身の丈を超える大鎌を背負いますと、炎に包まれました。って、何してるんですか?! 死んじゃいますよ!!

「死ぬ訳ねぇだろ、この俺が」

 心を読んだのか、炎の中から翔子さんが出てきました。
 黒い髪を左下に結び、身にまとうのは黒いコートみたいな装束衣装。格好は変わっていますが、翔さんです。

「お、お前は炎の死神!! 何故ここに……地球の半分を焼き焦がせられる力を持つお前が、どうして……!」

「テメェみたいな奴が気に入らねぇからその処分だ。俺をそこらの死神と一緒にしてもらっちゃ困る。テメェが作り出した世界に割り込む事なんざ、俺に取っちゃ魂を狩るぐらいに簡単なんだぜ?」

 それは多分、あなただけです。

「くっ……。だけど、ここで俺が銀ちゃんにキスをして力を増幅させれば……!」

「ほぉ。ビッチを使うか。でも無理だな。無理無理。絶対無理」

 翔さんはあっさり否定しました。何故そんなに無理を連呼します?!

「銀が『力を与えてやってもいい』と思った奴だけだぜ? その銀の鈴を使えるのは」

「なっ——!!」

 矢崎さんは絶句しました。そして静かにその場に膝をつきます。
 そのすきに翔さんに手招きされたので、私は翔さんの後ろの方へ隠れました。
 翔さんは赤い鎌を構えて、矢崎さんに言います。

「騙されてやんの。馬鹿野郎が」

 炎が鎌からあふれ出します。
 矢崎さんの顔が強張るのが見えました。こ、殺されてしまうのでしょうか?!
 すると、またも翔さんは私の心を読んだのか、こう答えました。

「少し頭をチリチリにしてやるだけだ。未遂だしな」

 あぁ、そうなんですか。大丈夫でしょうかね。
 矢崎さんは廊下を阻んでいた壁を取り払って逃げようと試みました。だけど、それは無駄に終わりました。
 何故なら、翔さんが鎌を振ったからです。

「地獄業火、獄炎乱舞!!」

 炎が空中を滑り、矢崎さんの頭を焦がします。
 矢崎さんはやられるとでも思ったのか、そのままショックで気絶して廊下に倒れました。
 翔さんは鎌を消しますと、私の頭にチョップを叩きこみました。地味に痛いです。

「この馬鹿!! 誰でも信用してんじゃねぇよビッチ!!」

「さっきからビッチって何ですか!! 私は神威銀という名前があるんですよ!!」

「ハッ。知るか。テメェなんかビッチで十分だこの野郎」

 翔さんは空中に指を滑らせました。
 空間が割れ、元の空が青い学校が現れます。誰もいないところを見ると、授業中でしょう。

「ほら、行け。ビッチ」

「だから、ビッチじゃないですって!」

「いいから行けっての」

 ドカッと翔さんは私の事を蹴りました。
 私は衝撃で廊下に顔面から着地し、額を廊下にぶつける羽目になりました。
 この人……嫌な人です!!