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Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。ただいま祭り開催! ( No.314 )
日時: 2012/04/03 22:02
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)

第12章 君と僕〜オリジナルと亜種〜


 ここは白影寮。オリジナル達が住む黒影寮とはまた違う場所。
 あたしは椎名すみれ。
 特にオリジナル達に興味を持たない、少し力を持った女子高生。よろしくね。

「……オリジナルってさぁ、崇拝しなきゃいけない訳?」

「いけない」

 あたしの友人である東翔子ちゃん。この子のオリジナルは寮長の東翔って奴。同じ死神だけど、翔子ちゃんは少しタチが悪いかもしれない。
 ちなみに、あたしのオリジナルは椎名昴って奴。その翔って奴につきまとっている、闇の踊り子らしい。
 らしい、って言うのは、あたしがそいつに興味がないから調べようとしないだけ。

「私ら亜種は、オリジナルから派生されたキャラなの。バグでもある。そんな私らは、オリジナルがいないとこの世界でも存在できないんだよ」

「それもう耳にタコができるぐらいに聞いたわ」

 翔子ちゃんはオリジナルを適度に崇拝し、この世界に存在している。
 この白影寮の住人だってそうだ。華奈ちゃんだって、怜奈だって、優姫だって、蘭だって、みんなオリジナルを崇拝している。
 じゃあ、あたしは?
 あたしは大して崇拝していないつーか興味もないあたしは、何でこんなところに存在しているんだろう。

「神様の気まぐれって奴かな」

「何を言ってるの?」

「こっちの話」

 すると、「ただいまー」という声が聞こえて、鈴が帰ってきた。
 鈴は亜種ではない。神威銀に必要不可欠な『銀の鈴』のもう1人。まぁ、あたし達は鈴のさみしさを補う為に生まれたかもしれない。
 そんな事はどうでもいいし、あたしは鈴には興味ない。

「……ちょっと眠いから寝てくる」

「昼寝? 夜寝れなくなっても知らないよ」

「別にいいよ、そしたら町内1周してくるだけだし」

 鈴にお母さんっぽい事を言われたけど、あたしは反論をして部屋に入った。
 パステル調のベッドにダイブをして、あたしは枕に顔をうずめる。
 椎名昴。オリジナルの名前しか知らない。それほど格好よくはないと思うけど——あたしもそうだし。

「……悩むのは、よくない。寝よう!」

 そしてあたしは、深い眠りに落ちて行った————

***** ***** *****

「ん、んぐあ……?」

 目を開けたらそこは、森の中だった。
 何だか暑いし。白影寮には季節と言う概念は存在しない(亜種だけの世界だから)だけど、何でこんなに暑いんだろう?
 あたしは浮かんだ汗を手でぬぐい、立ち上がる。
 森の向こうに建物が見えた。よく目を見張ると、それは洋館の造りをしている。白影寮は和風の造りをしているので明らかに違う事が分かった。
 そう。これは黒影寮だ。

「嘘でしょ……」

「あの、そこで何をしているんですか?」

 思わず飛び上がってしまう。
 恐る恐る振り向いてみると、そこにいたのは銀髪の女の子だった。蘭かと思ったけど、違う。蘭は敬語を使わない。
 鈴に似ているから、こいつは神威銀か!!

「えーと……行き倒れていました?」

「家がなくなっちゃったのですか?」

「まぁ……そう言う事?」

 白影寮から来ましたー、なんて言っても、きっと信じてもらえないだろうよ。
 その銀は簡単に納得したのか、黒影寮へ手招きしました。

「翔さんと相談してみますので、よければ中へ待っていてください」

 こんなに簡単に黒影寮の中へ入れるもんなんだなー、と思いました。


 黒影寮は案外広い。玄関にホールがあり、典型的なお城と言う感じを醸し出している。
 銀はスタスタと真っ直ぐ進んで、食堂へ入った。あたしもその後ろに続いて、食堂へ入る。

「どこかに座って待っていてください」

「あ、どうも」

 鈴と違って優しそうな子だなぁ。

「えーと、名前はなんて言うんですか?」

「え、あの……」

 名前を答えようとしたら、銀の携帯が鳴った。
 銀は「失礼します」と断りを入れて、携帯に出る。相手はどうやら鈴のようだ。

『銀! そっちにすみれさん行ってない?』

「すみれさんですか? 誰ですか、それ」

『椎名すみれさんって言って、こっちの世界の副寮長。探しているんだけど見つからなくて』

「そうですか」

 ヤベェ確実に探してる。
 っていうか、今すぐ鈴と代わりたいんだけど。よし、代わろう。代わろう!

「銀ちゃんその携帯貸して!」

「え、何でですかあの——!」

 ていうか私の名前を何で知っているんですかーっ! と遠くで聞こえたが、あたしは無視をする。そしてスピーカーを耳に押し当てた。

「鈴! あたし、あたしよ!」

『もしかして、すみれさん?! どうしてそっちの世界に行っているの?』

「あたしが知りたいわよ! そっちの世界に戻れる方法ってある訳?」

 今すぐ戻りたい、オリジナルと会う前に!!
 鈴は「うーん」と唸ったのち、

『神様の罰じゃない?』

 と、言った。
 お前、神様を降ろす為の鈴だろ。何とかしろよ。

『ルテオが言うには、「君はオリジナルを崇拝しないから、崇拝できるまで帰ってくるな」みたいらしいよ?』

 ルテオくーん! そこは気を遣ってぇぇぇぇ!
 オリジナルを崇拝って何? 崇拝できる要素がまるで見つからない!
 その時だ。

「あれ? お前誰?」

「ひぎゃぁぁ!」

 オリジナル! 椎名昴!
 銀の携帯を持ったまま立ち尽くすあたしに、鈴は冷酷な一言。

『すみれさん。もし、オリジナルにばれたらあんた死ぬからね。世界から消滅するよ?』

 やべぇじゃんかぁぁぁ! どうすればいいんだぁぁあ!