コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。ただいま祭り開催! ( No.326 )
- 日時: 2012/04/15 22:11
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
第12章 君と僕〜オリジナルと亜種〜
あたしが黒影寮に来て、2日が経過した。
相も変わらずオリジナルを崇拝する気にはなれないあたし。どうしたらいいかな?
だってオリジナルは、翔と空華と一緒に今朝も馬鹿をやっていた。訓練、という名の遊びである。
「なー、翔ちゃん。スイカ割りとかしたいよねー」
「あー、してぇな。銀に言えばスイカを買って来てもらえるんじゃないのか?」
「俺様が実家に連絡しようか? 日華が確か魔法陣系の転送術を使えると思うから、それでスイカを送ってもらうとか。隅にある畑で生成しているんだよね」
なんて他愛もない会話をしながらバレーボールをする3人。何をしているんだ、こいつら。
ちなみにあたしは、こいつら全員を見張るように頼まれていた。誰から? 銀からだよ。
銀は白亜(黒亜のオリジナル)が長野から帰って来たので、寮の食堂にてお茶会中だ。ちなみに羅はまだ戻って来ていないらしい。
しかも今日は白刃さんも一緒にいると来た。白刃さんは緋色さんのオリジナルで、鈴の姉的ポジションである。ポジションなのは、亜種だからだ。
「……あ、美鈴ちゃんもいたのー?」
「さっきからずっとここにいたよ。ねぇ、3人でバレーボールしていて楽しい?」
ボールを手で受け止めたオリジナルは、首を傾げた。何が理解できない。
オリジナルは何を思ったのか、あたしにボールを投げてよこした。
ん?! 重い、重いよこれ?! 一体何?!
「あはは。蒼空の訓練に付き合っていたの。このボールをボウリングの玉のように重くするのが蒼空のメニューでね、それで俺らはバレーボールをしていた訳。腕の筋肉が鍛えられるし、一石二鳥だよ?」
そんな笑顔で言う事か?
見れば、オリジナルの腕は赤くはれ上がっていた。あんた、腕は普通の人間なんだからさぁ……。
「貸して! ここに座って、もう!」
「え、え?」
オリジナルを無理矢理座らせて、腕を冷やす。救急箱から湿布を取りだした。
あー、もう。鈴ならこういうのはすぐにやってくれると思うけど、あたしは違う。不器用なのだ。翔子ちゃんの方が上手い。
面倒なので、あたしは自分の不思議な力を使う事にした。
「純白の抱擁(ホワイト・ヒーリング)」
はれ上がった腕を軽くなぞる。すると、見る見るうちにはれが引いた。
オリジナルは何が何だか分からないと言ったような表情で、腕を見つめる。
「何をしたの?」
「別に。あたしはあんたらが不思議な力を使っていても、別に何とも思わない訳。あたしも同じような力を持っているし」
オリジナルからボールをひったくり、代わりにあたしがバレーボールへ参戦する。
キョトンとした様子で、空華が問いかけてきた。
「美鈴ちゃんがやるの?」
「やるよ。あたし、昴と違って腕は強いから」
まぁ、ある意味だけどね?
***** ***** *****
「あ、美鈴さん! 訓練を監督してくださり、ありがとうございます」
「いえいえ。結構楽しかったから大丈夫。メニューは全員にきちんとやらせたから」
しばらくして、銀が黒影寮の中庭に入って来た。
あたしは翔と空華でバレーボール(蒼空による重力操作つき)をしていたのを中断して、銀の方へ向き直る。
「全員に——って、昴さんはさぼっているじゃないですか?」
「あ、いや、これは」
あたしが治療して「あんたは大人しくしていろ!」って言ったけど……。
やっぱりさぼっているって見えるか。
「いやー、暑くてね。ちょっとさぼらせてもらいました。だけどちゃんとメニューはやったよ? ちゃんと地球は2周してきたよ」
さすが闇の踊り子とでも言うべきだろうか。
だがしかし、銀の疑いは晴れない。嘘ん。
「昴さん。自分のメニューが終わったら、他の人のメニューを手伝ってあげてくださいよ。もう1周追加します」
「へいへい」
「ちょ、銀……ッ!」
理由を言おうとしたあたしの口をふさいだのは、なんとオリジナル。
どうしてだよ、あんたは何も悪くないだろう?
「いいの。美鈴ちゃんに任せてボケーって見ていた俺がいけないんだし。大丈夫だよ、すぐにパパーッと終わらせてきちゃうから♪」
笑顔で言うと、オリジナルは青空へ飛び立った。
お人よし。あたしはあんたの亜種なんだよ? あんたが存在しているから、あたしが生きているのに。
どうせだから、もう少し厳しくしてもいいんだよ。
あぁ、でもあたしが「亜種だ」なんて言っていないからいけないのか。
「……オリジナルの馬鹿」
少しだけ、崇拝できたような気がした。
あんたのように、お人よしに生きていければいいと、そう思った。