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Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。俺ら戦争が乗っ取った! ( No.346 )
日時: 2012/04/29 21:46
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)

第13章 黒影寮の問題児が妖精を拾ったようです


 ガタンゴトン。
 私達は電車に揺られて茨城県の錦海町まで来ました。錦海町は海に面しているらしく、車窓から海が見えました。
 そう言えば、この夏は海には1度も行っていませんね。

「うほーっ! 海じゃん海じゃん!」

 昴さんが子供のような声を上げます。その隣で翔さんが小さなため息をついていました。
 ここで蒼空さんが育ったのですね。
 電車のアナウンスが響き、私達は下車します。

「錦海町……まぁ、田舎なのかな?」

 つかささんは辺りを見回してつぶやきます。
 何せ、周りは山で囲まれています。すごいところですねー、本当に。
 その時です。私の隣を誰かが走り去りました。

「お姉さんのパンツもーらい!」

「きゃぁ?!」

 スカートがめくれました。走って行ったのは金に近い茶色の髪をした人です。だ、誰ですか!
 すると、黒影寮一同さんはぎろりとその相手を睨みつけました。嫌な予感です。

「「「「「テメェ待てやコラ」」」」」

 その人に攻撃を仕掛けようとしました。羅さんもです。
 危ないですので、私は慌てて止めました。

「何をしているのですか! 相手は普通の人ですよ?!」

「普通? 銀ちゃんのスカートをめくる馬鹿野郎は1人残らず——」

 そこで声が途切れました。
 今までしゃべっていた空華さんは首を傾げます。そして喉の辺りを押さえて、再度首を傾げました。
 声が出ないのです。

「わはははは。出ないでしょ、しゃべっているけどその空間だけ音を消しているんだー。って、俺の声も聞こえていないよね」

 その茶色の髪をした人は、小さなため息をついて持っていたスケッチブックにしゃべった事を書きました。
 音を消している? 確かに何も聞こえませんけど。

「…………何をしているのじゃ」

「お、紫音! お前もどうだ? こいつら面白いぞ」

 あとから銀髪の人が空から降ってきました。どこか冷たい印象を持つ人です。
 銀髪の人はため息をつきますと、茶色の髪をした人を殴りました。

「怒られる」

「あ、そうだな。いけねーいけねー。迷惑をかけないが俺らのルールだよな」

 パチンと指をはじく音が聞こえたと思ったら、雑踏が聞こえてきました。音が聞こえます。
 わははははと笑いながら、その茶色の髪をした人は銀髪の人と一緒に町へ消えました。

「どこへ行く!!」

 黒影寮の人達は、その2人を追いかけます。が、ここで思わぬアクシデントが起きました。あ、私達じゃないです。あの2人です。
 何か黒いものが降ってきたと思ったら、その人が2人に怒鳴りました。

「人に迷惑をかけちゃダメっていうルールを知っているのかなー?! 博先輩!」

「やー、悪い悪い。あまりにも可愛い子だったからさー」

 えへへ、と博先輩と怒鳴られた人は笑いました。
 その黒い人、見覚えがあります。空のように青い瞳をしていて、肩には小人が乗っています。友達でしょうか?

「「「「「そ、蒼空!!」」」」」

 その黒い人——蒼空さんはこちらを見て顔をしかめました。

「げ。お前ら……」

「何をしているんだ、蒼空。早く帰るぞ」

 翔さんが前へ進み出て、蒼空さんの腕を掴みました。
 しかし、蒼空さんは翔さんの腕を振り払います。

「絶対に嫌だ」

「怒った事は謝るから。それに、悠紀だって反省しているんだぞ」

 翔さんが言いますが、蒼空さんは「帰らない」の一点張りです。

「能力をコントロールできずに暴走させちゃった事は俺も謝らなきゃいけない。翔が謝る事じゃない。あれでいい。悠紀も反省しているなら別に構わないし……。でも、絶対に帰らないから」

 蒼空さんは翔さんをドンと押しのけて、そして踵を返しました。ど、どこへ行くのでしょうか?!
 なんと、蒼空さんは近くの店の屋根をジャンプ1つで飛び乗り、空へ飛んで行きました。

「そーくー、たかーい!」

 子供のような声が聞こえてきました。

「くそ、昴。あいつらをとらえろ!」

「う、ん?」

 昴さんが飛び立とうとした時、銀髪の人に腕を掴まれました。

「……誰だよ」

「氷室紫音」

 低い昴さんの問いかけに、さらりと言う銀髪の人——紫音さん。その隣に博さんが並びます。

「そーか、お前らが噂の黒影寮ね。話は聞いているよ、蒼空が行った場所でしょ? 蒼空、お前らの事は嫌いじゃないけどね」

「だったら何で、帰るのを嫌がる必要がある?」

 翔さんは博さんを睨みつけました。
 そんな睨みにも負けず、博さんは笑いながら言います。

「蒼空に、今は帰ってほしくないんだよ。何せ、『俺ら戦争』だからな」

「お、俺、ら戦争?」

「坊ちゃんタイプのお前らには分からないような事だよ。お前らには絶対真似できないような事を、俺らはやってるって訳。そろそろ蒼空も逃げたか。行くぞ、紫音」

「承知した」

 紫音さんはパッと腕を離しますと、博さんと一緒に町へ消えました。
 一体何だったのでしょう?

「俺ら、戦争……。一体何だ?」

 同じような疑問が、黒影寮に生まれました。