コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。俺ら戦争が乗っ取った! ( No.356 )
- 日時: 2012/05/11 22:37
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
- 参照: 大ヒット御礼! 参照2000突破!
第13章 黒影寮の問題児が妖精を拾ったようです
〜蒼空視点〜
俺はリデルを肩に乗せて、話しかけた。
「リデル。今日は何人来るかな」
「わからないの」
リデルは首を振る。分からないよね、そうだよね!
俺は苦笑いを浮かべて、頭にお面をつけた。何かじいちゃんに貰った狐のお面だ。
「じゃ、お客さんの人数を数えておいてくれよ」
「わかったの!」
リデルは勢いよく返事をした。
俺はリデルにポテチを1枚上げると、窓から飛び出した。
***** ***** *****〜銀視点〜
夏目祭りは大盛況でした。
特に、私達が出した風鈴屋さんにはお客さんがたくさん来てくれました。若い女の人とかです。恋人とかもいます。
まぁ、分かりますけどね。何せこちらは、
「「「「「いらっしゃいませ。願いが叶う風鈴屋へようこそ」」」」」
黒影寮の皆さん(イケメン)がいますからね。
羅さんにも男みたいな柄がいいと本人の所望でしたので、紅さんから黒っぽい浴衣を着つけてもらっていました。そのおかげで、羅さんも男だと思い込んで女の人が殺到。羅さん嬉しそう。
首から下げた鏡から、鈴が不愉快そうに声を上げました。
「納得いかない。どうして羅は女の子なのにあんなに同性からモテるの?」
「嫉妬ですか。自分がモテないからって」
「傷ついた! 俺結構傷ついた!」
ハイハイ、うるさいですよ。
ちょうどその時、カップルのお客さんが私に声をかけてきました。
「あの、すみません。これを上にかけたいんですけど」
上、というのは、頭上にある網棚の事です。これに風鈴をかけるという仕組みになっています。
金魚が描かれた風鈴を受け取り、私は網棚に手を伸ばします。ですが、これって案外高いんですよね。届きません。
一生懸命網棚に吊るそうと努力していますと、ふと誰かの手が伸ばされました。
「貸せ」
私の手から風鈴を分捕り、網棚に吊るします。
いつものニット帽はしていません。つやのある黒い髪は高くポニーテールに結われており、涼しげな水色の髪紐で留められています。絣の入った黒い浴衣を着ていて、いつもと雰囲気が違うように見えます。
我らが黒影寮の寮長・翔さんです。
翔さんはカップルのお客さんに笑顔を向けますと、
「こちらでよろしいでしょうか?」
「ハイ。ありがとうございます」
「あなた方の願いが叶うよう、祈っております」
まさに店員の鑑です。さすがです、翔さん。
お客さんが去りますと、翔さんは大きなため息をつきました。
「誰だ、こんなクサイ台詞を考えた奴は」
「俺だけど、何か」
蒼空さんのお友達である織川理央さんが言いました。彼の手にも青い空が描かれた風鈴が握られています。
理央さんは小さい子供に向かって笑顔で「転ぶなよ、がきんちょ」と言いました。台詞と顔が合っていませんが。
「銀ちゃんは休んでいても構わないんだぜ! ここは、黒影寮と俺ら戦争組でやるからさ!」
紹介に預かった博さんが言いました。風鈴を結びつけ、若い女性に向かって「絵を描いてほしくなったら言ってよ☆」と言っていました。
それに同調してなのか、蒼空さんのお友達である浅比奈奏人さんのお兄さん・嵐さんが言います。
「女にはこの網棚は高すぎるだろ。まぁ……逆は別として」
私は羽傘さんの方へ目を向けます。
小さい子供の風鈴を預かり、風の力で浮遊して網棚に吊るしています。風の能力者らしいです。
「そうよ、銀ちゃんはさっきから働いてばかりじゃない。うちのリーダーを見なさいよ」
彩佳さんが言います。リーダーと言うと蒼空さんでしょうか。
蒼空さんは仲間である梓さんと奏人さん、そして音緒さんと一緒に何かを話し合っています。とても真面目な顔です。
……皆さんがそう言うのでしたら、休憩をいただきましょうか。
「それでは休憩をいただきますので。えーと、何か買って来るものとかありますか?」
ない、と表現するように皆さんは首を振りました。
私は下駄をカラコロと鳴らしながら、縁日を歩いて行きます。
たくさんのお店がありますね。綿あめや焼きそばはもちろん、ドネルケバブや広島風お好み焼きなども売っていますよ。
「お姉さん、きれいだね」
「……?!」
な、ナンパですか?! わ、私1人じゃ対処しきれませんけど!
私は振り向いて、誰がナンパをしてきたのか確認しました。
紺色で裾に白い模様がちりばめられた浴衣を着ています。頭にはお面がつけられており、私を見据える瞳の色は翡翠色です。
空華さんです。
「空華さん?! どうして、お仕事は?」
「俺様はもうそろそろ昴と交代。あとは睦月が翔と交代して、つかさが子海君——だっけ? その子と交代するって」
へらりと笑いながら、空華さんは言いました。
「ところでさ、銀ちゃん。この前の京都で披露してくれた歌、あったじゃん?」
「あ、あれですか?」
題名は分かりませんが、昔にお母さんが歌っていた歌です。とてもきれいな歌声でした。
それが一体どうしたのでしょう?
「あれを使って、お客さんを呼びこまない?」
「え、えーと……あの歌で、ですか?」
「そうそう。俺様ももちろん演奏者(プレイヤー)の能力を使っちゃうよ。何がいい? 笛がいい?」
そう言えば空華さんは、演奏者(楽器を演奏する事によって人を惑わせる能力)を持っていますね。京都の時だって、ノアさんに操られた町の住民さんを催眠をぶつける事によって助けていましたし。
風鈴をかけられないですし、彩佳さんと椛さんが受付をやっていますし、ちょうどいいかもしれません。
「やります。私だって、皆さんのお手伝いがしたいので!」
「お、やっちゃう? でも、今は銀ちゃんは休憩してきなさい。夜ごはんは早めに済ませた方がいいよ。これからお客さんがたくさん来るからね」
と、アドバイスをもらったので、私は夜ごはんの散策を開始しました。
空華さんは優しいですね。
「なぁ、銀。あの歌をやるなら、俺が変わるか?」
「大丈夫です。私だって舞えますよ。鈴は確かに舞の名手ですが、私だって鈴には負けませんからね」
私だって銀の鈴の1部ですから、舞う事ぐらいはできます。
「そーか? ならいいけど。俺も見たいから、鏡は外しておいてくれる?」
「いいですよ。負けませんからね!」
「お、だったら俺もそっちの世界に行こうか? トビラの能力を使えばそっちの世界にいけるんだぜ?」
「考えておきます。でも、それもいいかもしれませんね!」
心のどこかで、私はわくわくしていました。
それは舞える楽しみでもありましたし、空華さんの演奏をもう1度聴けると思うと少しだけわくわくしたのです。