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Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。俺ら戦争が乗っ取った! ( No.361 )
日時: 2012/05/15 21:35
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
参照: 大ヒット御礼! 参照2000突破!

第13章 黒影寮の問題児が妖精を拾ったようです


 〜蒼空視点〜


 朝霧怜央、と名乗ったあいつ——何か口がものすごい悪い。胸糞も悪くなってくる。
 すると、音緒が耳打ちであいつの事を教えてくれた。

「朝霧怜央って、代々陰陽師をやっている家だよ……。そんなのに勝てる訳? それにあの美桜って奴も。白狐って結構上のランクの妖狐だよ?」

 音緒の顔面は蒼白になっている。
 勝てる気なんてさらさらない。多分勝てない。

「そーくー、あのひとのおもさ、ないのー」

「へ? 重さがない?」

「たいじゅうがないの。だけどじめんにあし、ついているのー」

 リデルが怜央の足元を指摘した。
 奴の足はきちんと地面についている。けど、リデルが言うには体重がない。まさか、幻影って事か?
 試しに、俺は梓に命令した。

「あの朝霧怜央に向かって絶対殺しを放ってくれないか?」

「ハァ? どうした急にィ?」

 梓は首を傾げたが、訳を話したら二つ返事でOKを出してくれた。
 梓が持つ能力は、黒影寮にも匹敵するぐらいの戦争組最強を誇る『絶対殺し』だ。熱量・運動量・他人の能力など全てのものを殺す事ができる。
 鋼鉄の手袋を外し、梓は怜央に向かって特攻を仕掛けた。

「させないわよ」

 美桜が9本生えたしっぽで邪魔をする。
 梓は舌打ちをして、9本のうち1本をむしり取った。とかげのようにビタンビタンとしっぽがのたうち回る。美桜が激痛で叫び声を上げているすきに、梓は怜央の腕に触れた。
 右手に触れた瞬間、怜央は跡形もなく消える。やはり幻影か!

「……なるほど、やるではないですか。戦争組……。その能力は、黒影寮の奴らに匹敵するのではないですか?」

「ハッ。あいにく、俺は奴らのように縛られるのはごめんだ。東京には憧れるが、蒼空のところに遊びに行く時だけで満足しているんで!」

 梓は周りをきょろきょろしながら怒鳴る。どこから怜央の声が響いているんだ。
 くっそ、ムカつくな。

「さて、どうします? 諦めて神威銀を渡してくれるのならば、私達は速やかに退散しますが。私の姿も見えないようじゃ、まだまだ甘いと言えますね」

 さらにムカついた。
 よし、そこまで言うんならやってやろう。こいつの事を探してやろう。え? 陰陽師だから無理だって? 何を言っている、俺らは戦争組だぞ?
 さすがのみんなも、これには完全にブチ切れたらしい。俺の目線に答えるようにうなずいた。

「完全一致だ、朝霧怜央。お前は俺らが全力で見つけて、さらにぼこぼこにしてやる!」

「できるのですか?」

 怜央は楽しそうに言う。
 そうやっているのも今のうちだ!
 俺は美桜に背を向けて——つまり、みんなの方に向いて——大声を上げた。
 昔、いつもいたずらする時に言っていた、お決まりの台詞を。


「俺ら戦争ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


 息ついてから、さらに言う。

「始めるぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 それに答える、戦争組メンバー。

「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」

 黒影寮のみんなは、目を白黒させていた。こいつらも一応、戦争組の1員だっけ? だったらその能力を行使してやらなければならないな!
 作戦名はもう決まっている。

「『真夏のドキドキ☆かくれんぼ』大作戦! 決行する!」

「ちょっと待て、そのネーミングセンスは一体何だ」

 鈴に突っ込まれた。
 いやぁ、いつもこんな感じですけど何か?

「陰陽師って、大体詠唱で術を発動したりするよな? だったら声を奪っちゃえばいいんじゃねぇの?」

 昴がそんな事を提案した。
 けど、そんな上手い能力を持つ奴なんて————いるわ! 戦争組の変態絵描きが!

「博先輩、頼みます!」

「でも、俺のサイレンスは半径2キロぐらいしか通用しないよ?」

 能力を増強してくれるなら別にやってもいいけど、と博先輩は付け足した。
 くそ、能力を増強する奴って……銀ちゃんの方の鈴か……。ダメだ、こんなんでファーストキスを渡してたまるか。ファーストキスって言うのか?
 すると、鏡の中から銀ちゃんが言う。

「私が能力を増強しましょうか?」

「ちょ、銀ちゃん!」

 それってつまり、キスするって事ですよね?!

「あ、最近鈴に教えてもらったんですけど、祈るだけで能力を増強するなら、1分しか持ちませんが大丈夫ですよ」

 銀ちゃんもその時間を長くする為に修業をしているらしい。えらいなぁ、俺も見習わなきゃ。

「リデル。この町の半径はどれぐらい?」

「はんけー30キロなのー」

 博先輩が出せるキロの15倍。大丈夫だろうか、15倍なんていう力は。
 銀ちゃんは鏡の中で祈るようなポーズを取った。

「お、おぉ! 力がわく! すげぇぇぇぇえ!」

 博先輩がギャーギャーと叫んだ。そして手のひらを夜空へ向け、目を閉じる。
 だんだんと音が消えていく。雑音も、波の音も、何もかも『音』が消えていく。完全な無音状態。

『これからは筆談になるけど大丈夫だよな。持って1分、死ぬ気で探せ!』

『『『『『了解!!』』』』』

 これで、戦争が始まった。