コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。俺ら戦争が乗っ取った! ( No.367 )
- 日時: 2012/05/27 14:39
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
祭り企画 茜崎あんず様>>
俺には付き合っている人がいます。
名前は東翔。男っぽい名前だけど、一応女の子。
なんていうか、性格はわがまま・ツンデレ・高飛車と3拍子揃ったお嬢様タイプの女の子なんだけど。たまにものすごく優しくて、俺の為に泣いてくれたりする——
「……昴。のぞき見か?」(←鎌持ち)
「……いえ、別に」
死神です。
〜死神の女の子が俺と付き合っているんですけど、これは夢ですか?〜
俺の名前は椎名昴。英学園に通う高校2年生。黒影寮の副寮長を務めています。
黒影寮の寮長は、言わずと知れた東翔。俺の幼馴染で1700年を生きている死神である。その力は一瞬で地球の半分を焦土と化せるほど。まぁ要するに炎の死神。
で、長年一緒に翔ちゃんと一緒に行動してきたんですが、生まれてこの方17年。翔ちゃんに恋をし続けて約13年。
こんな夢のような日が来るとは思っていなかった。
「て、テメェ!」
「どうしたの翔ちゃん?」
「俺と、つ、付き合え!!」
最初は突き合え——要するにバトルしろとかそういう感じだと思っていたから。
「別にいいけど、俺、絶対に翔ちゃんに負けちゃうよ?」
とか答えたら、炎が飛んできた。死ぬかと思った。
そしたら違っていた。翔ちゃんは、顔を真っ赤にして一生懸命俺が好きだと伝えてきたのだ。
こりゃもう、願ったり叶ったりって訳ですよ。俺にしては。
で、現在デート中。
「美味い! ここの店のパフェ、すごく美味い!!」
「そりゃよかった」
俺は目の前で満面の笑みでイチゴのパフェを食っている翔ちゃんを見て、軽くにやけてしまった。
男らしい口調とは裏腹に、翔ちゃんはとても可愛い一面を見せる。
え、性格が悪すぎるだろって? いやいや、そこも可愛いじゃん。
「昴、やるなテメェ!」
「あはは。調べたかいがありましたね」
もぐもぐと何だか甘そうなクリームを口に入れる翔ちゃん。可愛いんだけど、正直こっちは胸焼けを起こしそうだよ……。だってめっちゃ大きいし。
すると、俺の目の前にイチゴソースがかけられたアイスが突き出された。もちろん、突き出してきたのは翔ちゃん。
「食べろよ。さっきからテンションが下がりっぱなしだろー」
にこにこと笑いながらスプーンを揺らす翔ちゃん。
俺は遠慮なく翔ちゃんの持つスプーンをくわえ、ついでに翔ちゃんの頬についているクリームもすくった。指についたクリームを舐める。
「ん。美味しいね」
さすが空華お勧めのカフェである。
翔ちゃんは顔を真っ赤にして、パフェを掻き込み始めた。てれ隠し?
「は、は、恥ずかしい事すんなよ、馬鹿!」
「別にいいじゃん。だって俺ら、付き合ってるんじゃないの?」
「だ、だからって……///」
ゆでダコのように顔を真っ赤にする翔ちゃん。超可愛い、抱きしめたい。
その時である。
「あれ、昴さんじゃないですか。翔さんと一緒にお茶をしているんですか?」
美しい銀色の髪。黒影寮の管理人代理をしている銀ちゃんだ。
実は、銀ちゃんには翔ちゃんが女だと言う事は知らせていない。翔ちゃんは果てしなく同性が苦手だからだ。今まで男として育てられてきたからである。だから「俺」口調だし口が悪いのだ。
「んー、ちょっとね。翔ちゃんとデート中?」
「そうですか。晩御飯までには帰ってきてくださいよ? 今日はオムライスにする予定ですから」
「え、本当? じゃー、何か買っていくものある?」
「特にありませんよ。では、翔さんも甘いものはほどほどにしてくださいね」
銀ちゃんはにこやかにその場を去っていく。
その背中を見送ってから翔ちゃんへ視線を戻すと、何故だかご機嫌が斜めっていた。あれ? どうして?
「神威銀の事が好きなのか?」
「え?」
「答えろよ、どうなんだよ」
ギロリ。そういう音が聞こえてきてもおかしくないような眼光で見つめられ、すごむ俺。怒らせた?
いや、銀ちゃんは叔母さんである珊瑚さんの代わりで管理人を務めているから、まぁいい子だなーぐらいは思っているけど。別に好きとかそういう感情は持っていない。
はは〜ん。まさか嫉妬なのかな? ちょっといたずらしちゃえw
「えー、どうだろ?」
翔ちゃんの表情が固まった。ほとんど食べ終わったパフェの器の中にスプーンを入れて、俺を睨みつける。
「……ふーん」
あれ? やりすぎちゃった?
「しょ、翔ちゃん? あの……?」
「だったら選ばせてやる」
「何が?!」
翔ちゃんはアイスがついたスプーンを俺の鼻先に突きつけてきた。
「俺か、神威銀か。どっちが好きなのかを選べよ」
選べって、もちろん翔ちゃんを選ぶに決まってるんですけどね。
「もちろん、翔ちゃんだよ?」
「だったら、俺の事が好きだって言えんのかよ」
ハイ? 何でそうなる?
やきもちやいてくれてるから少し嬉しくていたずらしちゃったけど、まさかこんな事になるとは思っていなかった。
でも、この公衆の面前で大告白しろってか?
「だって、お前1度も俺の事を『好き』って言ってくれた事ねぇじゃん……」
いつの間にか、翔ちゃんの瞳には涙が浮かんでいた。
正直言うと、俺は過去1度も翔ちゃんを好きだとは言っていない。
おかしいと思ってくれた人はおかしいと思いなさい。だって気恥ずかしいじゃない。今更13年分の思いを『好き』の一言だけで収まると思うかね?
「……もういい」
「翔ちゃん!」
いきなり翔ちゃんが席を立ちあがり、どこかへと行く。
俺は翔ちゃんの後を追う為、店員にお金を叩きつけて店を出た。翔ちゃんは黒影寮とは真逆の方向へ進もうとしていた。
「翔ちゃん、待てよ!」
「嫌だよ!」
翔ちゃんの口調が、いつもと違っていた。振り向いた翔ちゃんの瞳からは、ボロボロと涙がこぼれていた。
「俺だけが一歩的に昴を好きだなんて、そんなの嫌だ! 1700年生きてきて、初めて人を好きになったのに……こんなの嫌なんだよ……!」
泣きじゃくる翔ちゃん。そこには、いつもの凛とした死神としての翔ちゃんはいなかった。
気がつけば、俺は翔ちゃんを抱き締めていた。
「すば……」
「翔ちゃんに恋して13年。この13年分の思いを『好き』の一言で収めるなんて、できねぇんだよ」
歯止めが利かなくなっている。あぁ、でもいいか。
お前が望むなら、声が枯れるまで言ってやるさ。
「翔、愛してる」
翔ちゃんは、俺の腕の中で泣きながら笑った。意味が分からない表現かもしれないけど、確かにそうだった。
「……俺も、好き」
その時の翔ちゃんの笑顔は、俺の心に響いた。超可愛かった。