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- Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。7月7日は神威銀の誕生日! ( No.387 )
- 日時: 2012/07/07 22:57
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
期間限定小説 7月7日は七夕だぜ。
7月7日という日は、私にとっては特別な日です。
1年に1回しかやってこない特別な日です。それは私だけのものです。
今日は私の誕生日です。
【はっぴーばーすでー 神威銀】〜視点なし〜
「ねぇ、知ってる? 今日って神威さんの誕生日らしいッスよ?」
唐突に言いだしたのは、轟白亜だった。彼女は楽しいからという理由で黒影寮にやってきている。ついでに高梨羅の姿もあった。
それを聞いた黒影寮一同は、驚いた表情を浮かべた。
「マジかよ。今日、銀ちゃんは嬉々として笹を飾っていたけど……まさかそんな理由があったとは」
空華が床に両手両膝をついてうなだれる。自分の好きな人だからこそ、誕生日と言う特別な日は言わってあげたかったのだろう。
つーか、死神である翔は誕生日ぐらいは把握しているかと思ったのだがそれはどうなのだろうか?
「ん? 死神が普通に見えるのは名前と性別と生命時間だけだぞ?」
翔はきょとんとしたような表情で言った。
彼曰く、名前と性別と生命時間しか見えていない。何年生きているかが時間で示されている為、逆算すれば誕生日が分かるのだが、逆算するのがかなり面倒らしい。
ここで1つ、皆様に言っておきましょう。翔は頭がいいと言う設定です。
「……で、どうするよ。いきなりそんな事を知らされても、俺ら何も用意していないよ?」
昴は麦茶を飲みつつ、全員に問いかけた。
いきなり知らされたので、プレゼントなるものは買っていない。それどころか、ケーキとかそういうの作ってないし。誕生日って言えるのかこれ?
「あぁ、そこら辺なら任せてください。ケーキは私の友達が有名なアイスクリームショップでバイトをしているので、アイスケーキを予約させてもらいましたッス」
さすが白亜、用意がいい。
「で、お前は?」
「何も用意していませんけど何か? つか『誕生日プレゼントはあ・た・し☆』を実現する時が来たと心の底から喜んでいるので死ねイケメン」
流れる言動で罵倒された。黒影寮一同は、あえてそれをスルーした。
何を送ろうか。そう考えていると、空華がポンと手を打った。
「銀ちゃんは買い物しているよね?」
「うん。今日の夕食の買い出しらしいけど?」
「ならちょうどいいや。今日は管理人代理をお休みしてもらおう! 俺様達で家事をこなして銀ちゃんを楽させてあげるってのどう?」
「あぁ、それいいな」
翔は賛同する。
そしてもう1つ、空華はとある事を考えていた。
「あとね、…………」
「ナイスアイディア」「それ採用!」「いいじゃんそれ!」「銀も喜ぶ」「せやな。ワシも協力するで!」「何をしたらいいの?」「それって空華さんが作るんですか?」
と言う訳で、神威銀誕生日作戦決行!
***** ***** *****
買い出しを終えた神威銀は、額ににじんだ汗をぬぐった。
洋風な感じの黒影寮の門には、立派な笹の葉が立てかけられている。今日は七夕だ。そして神威銀の誕生日でもある。
「銀。誕生日おめでとう」
胸元から下げた携帯用の無骨な鏡から、鈴がそう言葉をかけて来る。
銀はふっと笑うと、「ありがとうございます」とお礼を述べた。
「でも、黒影寮の全員も結構気づいていなかったな。銀が今日誕生日っていうぐらい、知っているんじゃねぇの?」
「いえ、私は誰にも教えていませんよ? 白亜さんと羅さんには言いましたけど……さすがに『私、今日誕生日なんですよ』って言うのも厚かましですし」
謙虚な子である。
銀はドアに鍵を差し込んで錠を解く。そしてドアノブをひねって扉を開けると、
パンツが飛んで行った。
そして何故か怒声が飛び交っていた。
「テメェ何してんだよ! うわ、焦げてる?!」
「だって面倒くさいじゃん。言力で焼いた方が早いよー? 翔の地獄業火を呼び出したし」
「うわー! 睦月がいじめて来るー!」
「貴様、またワシのトランクス盗んだなーっ!!」
「静かにしろ」
「わわわっ! 掃除機扱いづらいーっ!!」
どうして黒影寮が荒れているんでしょうね…………?
銀は行動を凍結させていた。が、やがてギギギという油のなくなったロボットの如く体を動かして、胸元に下げられた鏡を掴んだ。そして静かに、優しく、囁く。
「……アカツキさんを呼んでくれませんか? もう全て焼きます」
「おっけー」
鈴は簡単に了承すると、アカツキを召喚する。
呼び出された深紅の死神は、黒影寮の状況を理解し、
「うん。燃やせばいいんだね?」
「ハイ、お願いします」
そして燃やそうとしたところで翔に止められた。
「で、一体これはどういう騒ぎですか!」
銀は全員を正座させて、怒鳴り散らしていた。
「だって、銀ちゃんは今日が誕生日じゃない? だからせめてさ、楽させてあげようかなって……」
昴が唇を尖らせて銀に説明した。
銀はため息をつくと、
「無理して祝おうとしないでください。ていうか、私は黒影寮の人には言っていないはずですけど?」
「あぁうん。白亜ちゃんに聞いた」
平然と答えた。あぁ、やっぱりか。
そこへ、唯一その場にいなくて叱られずに済んだ空華がやってきた。何かを握りしめている。
「あ、銀ちゃんお帰り。そしてハッピーバースデー」
「ありがとうございます。あの、それ何ですか?」
銀は空華が握りしめている物体を示した。
空華は「あぁこれ?」と言うと、銀にそれを引っかける。
胸元に下げられたのは、鈴のついた黒い鏡だった。9つのカラフルな石がちりばめられている。
「これ……」
「イエス。鈴と会話できるように、鏡を作ってみました。今度からそれを使いなよ」
銀は鏡をのぞき込み、鈴を呼ぶ。
「へぇ、いい鏡を作ってもらったじゃん」
鈴はにっこりとした笑みを浮かべながら言う。
銀は鏡を握りしめて、笑顔でこう言った。
「今年は最高の誕生日になりそうです。ありがとうございます!」