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Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。7月7日は神威銀の誕生日! ( No.393 )
日時: 2012/07/14 22:34
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)

第14章 もし黒影寮の管理人代理が町の草野球大会の広告を見たら


 そしていよいよ決勝が始まりました!
 攻撃はこちらからです。ピッチャーではやはり、梨央さんがマウンドに立っています。本人はいたってだるそうな雰囲気を醸し出しています。
 対するバッターは、今回何もしてない悠紀さんです。
 実は悠紀さんは補欠だったのですが、翔さんが「テメェも動け」宣言をして無理やり動かす事になってしまいました。なるほど!

「あーぁ、どうしてこんなにだるい事をやらなきゃいけない訳?」

 つーか、絶対狙撃者だから速いだろー、と悠紀さんはバットをぶらぶらと揺らしながら、玉を待ちかまえます。
 梨央さんは大きく振りかぶって投げました。
 悠紀さんはそれに合わせてバットを振ります。当然のように当たりませんでした、が。どこか違和感を感じます。

「160キロなの」

 リデルさんが、私の肩から言いました。
 160キロ?! そんなゆるく投げてどうするんですか? 確かに抜群のコントロールでしたけども!

「うーん……もしかして、夢折梨央って銃撃戦じゃないと狙撃者の能力は使えないとか?」

 昴さんがやけにシリアスな顔で言いました。

「あー、そうかもしれねぇな。狙撃者にも色々種類があってよ、それで……じゃない? 俺様が狙撃者を使えるのは苦無を投げたりするからだよ」

 苦無を指に通してぶんぶん回しています。空華さん曰く、その苦無はとても重いらしいです。
 これは、逆にチャンスなんじゃないですか?!

「いや、悠紀の運動音痴さは半端じゃないぞ。確かに言葉使い(ワードマスター)だからそれなりに頭はいいが……いつも小説書いてる・パソコンやってる・本読んでるをしているオタクがそんなに体力ある訳ないだろ?」

 この人は一体何を言っているんですか。チームメイトなのに。
 翔さんはハッと鼻で笑い、

「ま、黒影寮で1番運動神経が悪いのって悠紀だしな」

「ちょっと、一体どういう事?」

 悠紀さんがわざわざベンチへと戻ってきます。バットを肩に担いで、何やらいぶかしげに眉をひそめています。機嫌が悪そうです。

「僕をこんな炎天下に出さないでくれる? マジで死にそう。くそ暑い」

「いっそ死んできたらどうだ? 今度はいい性格で生まれるようにしてやるよ」

「何を言ってんだか。あんたこそ死んできたらどう? 地獄業火(インフェルノ)に焼かれて自殺でもしてきたら? 来世はまともに生まれているかもよ」

 バチバチと何故か火花が散ります。こんなところで喧嘩は止めてほしいです。
 私は仕方がないので、とりあえずディレッサさんと日出さんを召喚しました。訂正、召喚するように鈴へ言いました。

「……暑いな。どうしてこんなにも暑いんだ? いっそあれか。世界を凍らせてフローズン♪」

「かき氷食べたくなってきた。あそこの青い髪をした奴ってかき氷のような味をしてそうだよな」

 出てきてそうそう、日出さんは早くもベンチを氷漬けにしようとしています。ディレッサさんなんてノア・ウミザキさんを見てジュル、とよだれを垂らしていました。
 人の魂を食べないでくださいね。というか、選神を間違えました。別の人にしましょう。

「と言う訳で、私が呼ばれましたが……一体何をすればいいのでしょう? 銀様」

「その呼び方は止めてくれませんかね、天羽さん。とりあえず、チームの勝利を呼んでほしいんですけど」

「分かりました、やってみます————って、あれって『リヴァイアサン』?! 嘘でしょ、何でぇ!」

 天羽さんを単独で呼び出しましたが、一体何かあったのでしょうか。
 バッターボックスにはいつの間にか悠紀さんが戻っています。どうやらお兄ちゃんと零さんで戻したそうです。ありがとうございます。
 天羽さんは口をパクパクさせます。

「六道音弥がいるじゃない。あいつ、幻術使いなんですよ、銀様!」

「げ、幻術使い?」

 幻術って、人を惑わせたりする人ですか?
 どうやら、あの赤と緑のオッドアイをした1人クリスマスカラーのサードの人がそうらしいです。見えませんけどね。

「……結構強い幻術使いです。だから、勝利なんて呼べないかもしれません。幸福を覆しますから」

「そうなんですか? やはり、そこは能力ブレイカーだからですかね」

「そうですね。能力を壊す事にも長けていますが……六道音弥は別です。あの人は自滅させる方向に持って行くんです」

 ……自滅ですか?
 私は自然と、音弥さんの方向へ目を向けました。
 彼は悠紀さんの方を見たまま、目をそらしていませんでした。

「悠紀さん……」

 そして、結果。悠紀さんはアウトを取られました。

「まったく、だから言ったでしょうが。僕が出ても意味ないよって。暑いから蒼空、ゴリゴリ様買ってきて」

「どうして俺?! たまには自分で動けよ」

 蒼空さんがギャーッと叫びます。
 悠紀さんはそんな蒼空さんの声を無視して、1人でパソコンを立ち上げていました。こんな時にでもパソコンですか。
 私は日暮さんを召喚させました。そして彼女に「悠紀さんのパソコンアクセスを拒否してください。パソコンさせちゃダメです」と命令させた。
 日暮さんは二つ返事でパソコンをただの箱にしました。ザマミロです。

「何だよ、だって相手には勝ち目はないよ?」

 悠紀さんは使いものにならなくなったパソコンを閉じて唇をとがらせました。
 どうして勝ち目はないのでしょうか。玉は遅いのに。

「だって、玉が2個に分裂したり襲いかかってきたりするんだよ? あり得ない、あんな玉なんてありえない」

 悠紀さんはガタガタと震えだしました。
 ……玉が2個に増えたり、襲いかかってきたりする? そんな事があるのでしょうか。いいえ、普通の玉でしたよ?
 次のバッターである運動神経がいいはずの怜悟さんも、アウトを取られてしまいました。

「玉が手に見えた」

 ……一体何を言っているのでしょうか、皆さんは!
 そんなに玉に幻術みたいなのが————

「もしかして、あの六道音弥の仕業じゃないの?」

 零さんが言います。
 まさか、バッターの方を睨んでいたのはその為ですか?!