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Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。7月7日は神威銀の誕生日! ( No.394 )
日時: 2012/07/16 22:14
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)

第14章 もし黒影寮の管理人代理が町の草野球大会の広告を見たら


「ちょ、タイムタイム!」

 零さんがタイムを出して、『リヴァイアサン』を招集させました。

「何だよー、正々堂々戦っていたじゃないかー」

 ムスー、とむくれている梨央さん。いえ、あなたではありません。
 私達は攻撃態勢で音弥さんを睨みつけました。
 当本人、きょとんとした様子で首を傾げます。

「あれ? 俺、何かしたっけか?」

「玉に幻術をかけませんでしたか?」

 私は音弥さんに問いかけます。
 音弥さんはポン、と手を叩いて「あぁ、何だそんな事?」と言いました。

「うん。もちろん、かけたよ? だって、そうしないと勝てないじゃないか」

 素直でよろしい! せめてそこは、「え、やってないよ?」とでも言ってください!
 音弥さんはけらけらと笑いながら、

「だって、3000キロもの剛速球を投げて来るんだから、これぐらいやってもいいでしょ? どっちもどっちじゃない」

「でも……デッドボールになったらどうするんですか?」

「あぁ、それは安心して? 梨央のコントロール次第だから。ほら、当たって骨が折れても大丈夫でしょ? 特にそこの死神君なんか」

 音弥さんはにっこりとした笑みを浮かべます。

「……上等じゃねぇか。幻術だか何だか知らねぇが、打ち破って点数を入れてやる」

「へぇ。さてさてどうだか。幻術なら俺、朝霧さんより上だよ?」

「私は本職は陰陽師ですので、本職が幻術使いの貴方には負けますよ」

 隣で怜央さんが肩をすくめて見せた。久々に見たような気がします。
 翔さんは鎌をバットへ変え、タイムを取り消しました。そしてスタスタとバッターボックスへ向かいます。
 だ、大丈夫でしょうか?

「あははは! じゃあ何がいいか。いっそ君の嫌いな女の子にしちゃうとか?」

「ほざけ。幻術なら何が来ても怖くない!」

 翔さんはバットを構えます。空華さんの行動で学んだのか、空に高々と赤いバットを突き出しました。予告ホームランです。
 梨央さんは投げました。
 特に反応を見せず、翔さんは玉を見送ります。ボール、という審判の声が響き渡りました。
 さて、2球目。

「さっさと打ってよねー、打てるなら!」

 梨央さんは投げました。
 翔さんの瞳が若干細くなります。バットが動きました。横へ滑り、ボールに当たります。
 しかし、ボールはなんとバットをすり抜けました。幻術ですか?!

「ストライク!」

 審判の無情な声が響きます。

「翔ちゃん行けぇ! それでも黒影寮の寮長か!」

 昴さんがバッターボックスに立っている翔さんに向けて野次を飛ばします。
 翔さんがそれに答えるように「うるせー」と声を上げました。暑い中なのか、表情も苦しそうです。

「……チッ、しょうがねぇな」

 空華さんが舌打ちをしました。そして眼帯を外して右手を掲げます。一体何をするつもりなのでしょう?

「————スロット10」

 梨央さんが投げました。
 翔さんのバットがついに動きます。ボールに当たり、気持ちのいい音を響かせて蒼穹へと飛んで行きました。ホームランです。
 空華さんが何かをやった瞬間に、打てましたね。一体何をしたのか気になります。
 すると、今度はグラウンドの方で悲鳴が起きました。ノアさんです。

「ぎゃぁぁぁぁ! ムシィィィィイ!」

 ノアさんは飛んできたホームランボールをすかさず取り、リネさんの顔面に向かって投げます。
 反応が遅れたリネさんの顔面に、ボールが当たりました。ゴガッという音がします。

「……あなたは一体何をしているのですか?」

 リネさんはボールを握りながら、ノアさんを睨みつけます。殺気がすごく感じられます。
 えぇぇぇ、仲間割れし始めましたよ?!

「応用して《幻術返し》ってのをやってみた。殺した幻術を、ホームランボールにまたつける奴」

 ヒヒヒッと空華さんは笑います。その笑みは、ガキ大将のような幼い笑みでした。