コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。7月7日は神威銀の誕生日! ( No.397 )
- 日時: 2012/07/22 22:32
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
第14章 もし黒影寮の管理人代理が町の草野球大会の広告を見たら
さて、こちらに攻撃が回ってきました。相手チームのバッターは夢折梨央さんです。要注意人物です。
こちらのピッチャーは空華さん。3000キロもの剛速球を投げてくる超ド級のエースです。エース、なのでしょうかね? はたして。
そしてファーストに翔さん。セカンドに昴さん。サードに怜悟さん。キャッチャーが蓮さん。センターにつかささん。ライトに蒼空さん。レフトに睦月さんです。あ、悠紀さんですか? お休みですよ。
試合が始まりました——っ!!
「そんじゃ、まずは行っちゃってみますかねぇ」
空華さんは狙撃者の力を押さえて、いつも通りに投げました。それでもリデルさんが計測した結果は「160キロなの」です。
梨央さんはボールを見送ります。審判さんの「ボール!」という声が響き渡りました。
見送られた事に舌打ちをする空華さん。2球目を大きく振りかぶって投げました。
——ズッバァァァァァァァァァァン!!
計測結果、1700キロ。それでもまだまだな方ですね。
梨央さんはこれも見送りました。そのままフォアボール狙いですかね。
「……何を見送ってんの? 敬遠でもしている訳?」
空華さんが梨央さんに言います。表情は怪しげなものでも見るかのようにゆがめられていました。
逆に梨央さんは飄々とした態度で挑発します。
「敬遠? もちろん。だって舐めた速さのボールなんて打ったらバットが折れちゃうでしょ?」
「……打てるって?」
「俺を誰だと思っている訳ー?」
にやりと笑います。そしてノアさんに向かって「トマトジュース投げて」と言いました。
ノアさんは震えながらトマトジュースを梨央さんに投げます。投げられてくる方を見ずにジュースをキャッチし、ブリックパックを押しつぶして上から一気にガーッ! と飲みました。豪快です。
口の端から垂れる赤い液体を手の甲で拭い、手元を見ずに仲間が控えているベンチに向かってブリックパックを投げつけます。端に備えつけられていたゴミ箱に、見事に入りました。これも狙撃者の能力でしょうか?
「じゅーでんかんりょー。さて、打つか」
その挑発にビキリッ! と空華さんの額に青筋が浮かび上がります。……怖いですよ? 空華さん、顔が。
「ほぉう? ……ワシの玉が打てるとでも思うておるのかえ、小僧。は、甘く見るでないぞ……ワシはものを投げ当てるのが得意じゃ。的当てとかのう……くっくっく。小僧の頭にこの白球を当ててやったら面白そうじゃのう?」
うーわーっ! 完璧に初代の空華さんに戻ってます! 止めてください空華さん戻ってきてください!
ってダメだ。聞きそうにない。このままだとデッドボール確実です! これは何とかして阻止せねば!
私は鈴に命令をして、クロエルさんを召喚しました。クロエルさんは水を操る天使さんです!
「……で、どうして私を召喚したんだい?」
「空華さんの頭を冷やしてあげてください」
「それなら日出の方が適任だと思うんだけどね」
本をパラパラとめくりながら、クロエルさんは言います。鏡の中を覗くと、日出さんが「え、俺じゃねぇの?」というような表情をしていました。
残念ですが、ここはクロエルさんの方が適任なのです。え、理由ですか。そうですね——
「日出さんだと、人を殺しかねませんので」
「うっぉい! 俺は温度を操る悪魔だぞ悪魔ー! あ、くまじゃねぇンだぞ?! 人は殺しちゃってナンボだろーっ!」
「それどこの死神ですか。翔さん見習ってください」
クロエルさんはそのやり取りを聞いてため息をついてました。いやいや、ため息をつかないでくださいよ。
零さんとお兄ちゃんはそのやり取りを見ていて、こちらもため息をついていました。だからため息をつかないでくださいよーっ?!
「とにかく、頭を冷やせばいいんだね? 了解了解」
クロエルさんは空華さんへ手をかざしました。
今にも投球しようとしていたところで、水流が空華さんを襲います。「べぐぼぉ!」という意味不明な悲鳴が聞こえました。
そしてここで天音さんを召喚させます。
「空華さんの服を乾かして上げてください」
「了解しました!」
天音さんがひょこひょこと空華さんに近づきます。そして何か白い光みたいなのが寝転がった空華さんを包み込んで服を乾かしました。
「え、あの、あれ?」
「お、どうやら正気に戻ったみたいじゃん」
鏡を見たお兄ちゃんがそう言いました。
天音さんを鏡の中に戻します。そして黒影寮の皆さんに一言。
「頑張ってください!」
そして皆さんは片腕を空に突き出して、「おう!」と返事をしてくれました。
さぁ試合再開です。空華さんは思い切り投げました。今度は迷いなく。
——ズッッッッバァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンンンンン!!!!!
今までで聞いた事のない早さです。蓮さんが少し顔をしかめました。
リデルさんに測定をさせたところ、「4000キロなのー」自己記録更新しましたおめでとうございます。
梨央さんは目を白黒させていました。
「どこに、そんな力があるのっ……!」
「ふふん。好きな娘に応援されれば————力がわくというものじゃ」
空華さんは不敵に笑いました。
こうして、1点も天を取らせる事もなく攻防は9回まで続きました。