コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。7月7日は神威銀の誕生日! ( No.416 )
- 日時: 2012/08/27 22:37
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
第15章 皇高校ホスト部!!
〜空華視点〜
銀ちゃんが何だか忙しそうに出て行った。
結構大きな荷物を抱えていた。睦月が「それ学校に送るか?」と訊いていたけど、断っていた。すごく気になる。
俺様達は、学園長の結婚記念日だから今日はお休みなのだ。といっても休日なんだけどね。
さて、今日のノルマでもこなしちゃいますか。確か、嵐を起こす我流忍術の作成だったよな。国語が弱いのに……本当にもう。
「……気になる、よな」
いきなり怜悟が言ってきた。
いや、何が気になるって?
「銀。一体どうしたのか。今日は休日なのに、銀は登校した」
授業参観とかそういう奴じゃないの? あそこ中等部もあるでしょうよ。
いや、何か気になるな。土曜日なのにわざわざ大荷物持って登校した事が何より気になるし。一体何かあるのだろうか?
「睦月、銀ちゃんの心を読み取れなかったの?」
「白刃さんやないんやから、そんな事できる訳ないやろ」
透視とか以心伝心(テレパシー)は通じんよ、と睦月は言う。
ものすごい気になる。だけど銀ちゃんには「ノルマをこなしてくださいね☆」と命令されていた。最低ノルマをこなさなければ自由はない。
さっさとこなすか。嵐の技を作るだけだし。
「文化祭だとよ」
へ?
声を発したのは、あの少女容姿死神の翔だった。洋書を片手に、先ほどの言葉を繰り返す。
「皇高校は今日文化祭だ」
「え? 文化祭?」
文化祭って祭りですよね。夏休み開けてからすぐじゃない?
うわ、めちゃくちゃ行きたい。何があっても行きたい。よし、さっさとこなしちゃおう!!
「『全ての風に告げる。荒れ狂う疾風となりて、草木を掻き分け空を巡れ。全ての雨に告げる。荒らぶる波を呼び起こし、大地に豪雨の如く降り注げ』————」
行こう、文化祭。絶対に!!
***** ***** *****
全員で協力してノルマを終わらせ、いざ皇高校へ出陣。
周りから黄色い声が聞こえてくるけど、そんなの気にしない。結構規模がでかいんだなぁ、とか感心してみる。
「皇高校に来るのは久しぶりだな」
昴が楽しそうに辺りを見回した。その瞳はキラキラと輝いている。まるで子供のようだ。
こうなりゃ天華とか連れてくればよかったなぁ。姫華とか水華とか絶対に楽しんでいたような感じがするし。綺華なんて「いつ銀さん来るの?」とかこの前電話で言っていたし。
「パンフレットもらってきたけどさ! ここの学校、スキンシップ激しいね。特に女子。もらってくるだけで握手を求められたよ?」
不思議そうに首を傾げつつ、蒼空はカラフルに描かれた表紙のパンフレットをめくる。
うーん……どれもこれも魅力的だけど、銀ちゃんはどこのクラスだったっけ? そう言えば聞いてないよな。銀ちゃん、最低限学校の事はあまり話してくれないし。
あれ? つかさにも話していないのかな?
「出し物の事は聞いたよ、僕。男装してカフェをするって言っていたよ」
「男装ねぇ……」
パラパラとパンフレットをめくるが、男装喫茶など5クラスぐらいある。これのどれだよって!
すると、「あれ? 黒影寮の皆さんじゃないですかー」という飄々とした声が聞こえてきた。誰かと思えば白亜ちゃんだった。執事服を着てプラカードを片手に立っている。
装飾されたプラカードには『喫茶びーすと 1−D』という文字がペンで書かれていた。
「白亜ちゃんは1Dなの?」
「そうッスよ。神威さんと羅さんも同じッス。私は売り子ッスね」
プラカードをゆらゆらと揺らしつつ、白亜ちゃんは言う。
銀ちゃんも1年生なんだ……あれで天然で小悪魔で反則だろ……2年だと思っていた。
「行きますか? 案内しますよ」
「お願いします」
「あ、でも。神威さんは分からないんスよ。何かあちこち移動しまくっていて、もうどこにいるか分からなくなって」
白亜ちゃんは申し訳なさそうに言う。
銀ちゃんがいないのか……いや、いないって事はないけど。分からないのか。
いや、でも銀髪で分かるでしょ。銀ちゃんぐらいだし、銀髪なのは。
白亜ちゃんに案内されて、俺様達は1Dの教室前にやってきた。
結構人であふれかえっている。ていうか男装喫茶に俺様達が入ってもいいのか? それでいいのか?
「楽しそうだな!」
蒼空はめちゃくちゃ楽しそうな表情をしていた。同じく昴も。
あぁ、お祭り騒ぎが大好きなこの2人だもんな。
「……寮長」
「何だ」
「ちなみに言いますが、男装した銀ちゃんを探し出す事はできますかね?」
「できない」
翔から即答で返ってきた答えは『NO』だった。
一体どうして。
「この前『それは名前と生命数だけ映るんですか?』って訊かれたから違うって言ったら、『じゃあもう翔さんそれで私を見ないでください。こっちからも拒否ります』と言って日暮を発動させていた。おかげで銀の情報は生命数だけになった」
何が映るのか逆に気になってきた。
白い扉の向こうからは、ジャンジャン音楽が聴こえてくる。腹の底にびりびり振動してくる。
「行くよ!」
昴がドアを開けた。
そして開けたドアから何故か手を掴まれ、甲にキスを落とされた。ゾワッとした何かが背中を這う。
「ようこそ、喫茶びーすとへ」
翔に名前を求めると、こいつは男だと言う事が判明した。手を振り払い、キスされた箇所を服で拭う。
え? 翔のに決まってんじゃん。
「テメェ何しやがる!!」
「あっはっはっはっは」
嫌がらせに決まっているでしょうよ。
席に案内されて、俺様達は1番大きなテーブルについた。
これから一体何が始まるのだろうか。少しドキドキしていた。
「ちょうどよかったじゃねぇか、イケメンども」
「あら、羅ちゃん」
スーツを着て赤髪をオールバックにした羅ちゃんは、このホールで働いている従業員の誰よりもイケメンに見えた。
どこからか、従業員ども(♂)がカラオケの材料みたいなのを取り出してきた。マイクを設置して、スイッチを入れる。
うん、知っているな。これはボカロだったっけ? 悠紀に訊けば分かるか。
「謎の生徒・シエルのリサイタルがこれから始まるんだよ。で、何飲むイケメン」
乱暴にメニューを盤上に叩きつけ、羅ちゃんが訊いた。が、その視線はカラオケ機具がつながれた舞台に釘づけである。
とりあえずコーヒーとサイダーを頼むと、「もっと高いの頼めよ」と毒を吐きながら羅ちゃんは引っ込んだ。
やがて舞台が整ったのか、辺りから歓声が響き渡る。
「テメェら、盛り上がってるか————!!」
盛大なシャウトを響かせて、舞台に男が上がった。短い黒髪に黒と青のオッドアイ。服装は学ランにヘッドフォンをつけた今時の高校生みたいな奴だった。
マイクを片手に、その男は名乗る。
「どうも。貴方の望む俺になりましょう——シエルです」