コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。7月7日は神威銀の誕生日! ( No.418 )
- 日時: 2012/09/10 22:35
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
第15章 皇高校ホスト部!!
〜空華視点〜
舞台の上にあるのはテーブルと、それに椅子が数個。それに座っているのは——え、銀ちゃん?
と、思ったら若干髪が短い。銀ちゃんは銀色のセミロングだし、それに目がオッドアイのままだ。あれはシエルだな。それにしても銀ちゃんと似ている。まさか従兄弟とか?
シエルはテーブルに頬杖をついたまま、舞台の袖に向かって声をかけた。
『おーい、椎葉(シイバ)。暇だ。遊べ』
『いや、遊べってねぇ。今この状況を見て分からない訳? 俺は勉強中、study中なのですよ! 見て分からんかね!』
『分からない』
にやりと、シエルは不敵にほほ笑んだ。
対して舞台袖から出てきたのは、黒髪が美しい女の子だった。——どこか容姿は翔に似ているような気がするけど、気のせいかな?
『大体ね、東谷(アズマヤ)がいけねぇんだよ? 人に宿題を押しつけるなんて——』
『頭が高いわ!』
シエルはそんなきれいな女の子に向かって、飛び回し蹴りを容赦なく放った。女の子は袖に吹っ飛んで行く。
うわぉ。どうしたらいいんでしょう、何しちゃってんの?
『フン。俺の宿題をやらせてもらっているだけ感謝しやがれ!』
『さすがにそれは頭が高々いと思うのは俺様だけでしょうかね……東谷さん』
反対側の袖から現れたのは、今度は茶髪の男子——昴に似ているような奴である。ていうか口調そのものは俺様のなんだけど!
シエルはその男子生徒を一瞥し、ため息をついた。
『テメェには関係ねぇだろ』
『関係あるよ。君の宿題をやっているのは何処の誰だと思っているのかな? 俺様と椎葉と——あとはむっ君だよね?』
『そうだぞ』
ひょっこりと後から出てきたのは、うわぉ。眼帯をつけた男子生徒だった。むっ君ってww
シエルは盛大に顔をひそめて、ため息をついた。どうしてやらなければならないんだ、と言うような。
『分かったよ。じゃあせめて1つぐらいはやってやる』
『宿題は、誰でもやるもの』
眼帯の男子生徒——先ほどむっ君と呼ばれていた奴だ——が、シエルの頭をわしゃわしゃとなで回した。
シエルはバタバタと暴れながら、「止めろこの針野郎!」と叫ぶ。
うん、何だか翔と怜悟が喧嘩をしているみたいだよ?
「……おい、まるで黒影寮じゃねぇか。台本担当は誰だ?」
椅子に腰かけ腕を組み、翔は怪訝そうな顔つきで壇上を眺めていた。
確かに、これは黒影寮の奴らをモチーフにしているね。シエルが演じる『東谷』って奴は翔。翔のような容姿をしていた女の子は『椎葉』って名前で昴。昴のような容姿をしている奴が俺様、名前は分からないけど。俺様のような姿をして『むっ君』と呼ばれていたのは怜悟だ。
白亜ちゃんとか——あとは怪しいのは白刃さんだよね。白刃さんがこれを提供したのかな?
「でも、これって面白いよね。俺らはほら、普通の人間じゃないからすぐ能力を使って喧嘩して、銀ちゃんに叱られるけどさ、この演劇はまるで普通の人だった時の俺らがやりそうな奴だよ」
昴がけらけらと笑いながら、演劇を見ていた。
舞台上のシエルは輝いている。まぁ、舞台上は暑いだろうから汗もかいてるし輝いているだろうけど、何より表情が生き生きとしている。さすが演劇部のホープという奴だ。
やがて物語は佳境へ入り、途中で登場した睦月みたいな容姿をした悠紀の性格の『咲月』というのが出てきた。そいつのパンツが盗まれただとか何だとか言って、全員で犯人を締め上げる事に。
『ゆ、許せん! 男の下着を取ると言う卑劣な行為は許せん!!』
『珍しく怒りに燃えているところ悪いんだが、君のパンツも盗まれてない?』
この水無月寮はどうやら洗濯の分担が決まっているらしい。この日はむっ君が洗濯をしていた。
洗濯ものを取り込もうとしたら、パンツが1枚足りない。咲月のパンツは昨日盗まれた。全員分の奴を確かめてみると——東谷のだけが見当たらなかったらしい。
壇上のシエルは顔面を蒼白させると、水無月寮の全員に向かって命令する。
『血祭りじゃ————! 犯人を半殺しにしたうえで逆さハリツケにしてしまえぇぇぇ————!!』
『サーッ! イエッサーッ!!』
住人達は全員して敬礼で返すと、どたばたとした様子で舞台袖へ引っ込んでしまった。
パッと辺りが暗くなり、スポットライトにシエルが照らされる。
『この……何で俺のパンツを盗む輩がいるんだよ……変態か』
そこへ、椎葉が駆け込んできた。1人の男を連れて。
うーん、こいつは黒影寮でも見た事ないかな。新キャラかな?
『こいつが東谷さんのパンツを盗んだ本人です!』
脳天が禿げたその男の人が?!
『出かした! よし、この男をさっそく血祭りに上げようか——うへへへへぇへへへへ』
シエル、シエル。その笑顔ばかりは怖いよ。
そして物語は終わりを告げる————。
『東谷役のシエルでした』
銀髪を揺らしつつ、シエルがお辞儀をする。
そして次々にキャストがお辞儀をして行って、最後に全員で手をつないで1礼。幕がだんだんと閉まって行く。
ちらほらと客が体育館から出て行く中で、シエルが俺様達の元へ戻ってきた。
「どうだった?」
にっこりと、少し疲れた様子だけど笑って見せるシエル。疲れが見えるけど、やりきった感がある。
俺様もそれに答えるように、笑った。
「最高だったよ」