コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。7月7日は神威銀の誕生日! ( No.427 )
- 日時: 2012/09/24 22:58
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
第15章 皇高校ホスト部!!
〜空華視点〜
まったく、神様の連中はどこまでチートなんだか。
人にバリアはかぶせてあるけど、その上で混戦状態。リネなんかは刀から次々に槍だの斧だのと言った武器を錬成しては、ディレッサを殺さんとばかりに意気込んでいる様子。
しかし、相手は能力を食らう神様。自分に向かってくる斧やら槍やらを残らず食いつくして、げっぷをしていた。
「うーん。コンソメチップスの味」
味の感想は必要ない。
「くっ……その忌々しい能力、今すぐ消し去ります! 剣舞・二重奏(ソードアーツ・デュアル)!!」
刀と斧が融合し、謎めいた武器が生成される。刀のフォルムに、先端に小野が取り付けられた謎の武器。これ何?
ディレッサはヒュウと口笛を吹いて、リネの腕を押さえつけた。そして持っていた武器をはたき落して、むしゃむしゃとそれを食らう。
「……あ、アボガドと醤油を合わせると本当にマグロの味になる。あれ、これはトロ?」
どっちでもいいよ! でも美味しいよね、その組み合わせ!
くっ……と悔しそうに歯噛みするリネ。顔をしかめて、ディレッサを蹴りあげる。が、ディレッサはひょいとその蹴りをよけて、床に降り立った。
「怖い怖い。せっかくの食事タイムなんだ。もっとご飯を頂戴——って言いたいところだけど。まぁ出番のない子に譲ってあげようかな」
くぁ……と眠たげに欠伸をしたディレッサは、踵を返して俺様達の元へ近づくと、ドーム状のバリアに寄りかかって昼寝をし始めた。一体何をしようとしているんだ、このおっさん!
と、そこへ現が動き始める。
「話が分かってんじゃねぇか、及川」
「ちょっとー。鈴ならまだしも、お前がその名前で呼ぶのは認めてないよ俺は」
バリアにうつ伏せになりながら、ディレッサが文句を言う。今度から及川と呼んでやろうかな。
あ、やべ。睨まれた。
「お前にも許したつもりはない。そのイチゴのショートケーキのような能力を食らってやるぞ。黒影寮じゃなくてただの影寮にしてやろうか」
意味が分からないけど、とにかく能力は食われたくないので謝っておこう。ごめんなさい。
現はリネを睨みつけて、左腕を振り上げる。
「……!!」
リネはボディブロー攻撃を見切ったのか、左へ転がる。その際に眠っている人のバリアへと足を引っかけてもつれるが、何とかこらえた。
「俺の傷の能力は傷をつけないと効かないんだが……。おい誰か、傷を作ってやってくれないか? 全治1カ月ぐらいの傷を負わせてやるわ」
「刃物なら貸してあげられるよー?」
その時、ふと声がした。女の声である。
近くにいた眠っている人達から光が放たれ、人の姿を形成する。みつあみをした中学生ぐらいの女の子だ。手に包丁を持っていなければ物騒じゃない可愛い子だと思ったが。
「トビラ。いきなり出てきてどうした?」
「どうしたもこうしたも。だってこの人達が寝ているから、私が集められて形成された。それに一応、鈴の力で存在できるようになっているし。夢を集めれば私は存在できる」
ずいぶんと中性的なしゃべり方をする女の子だ。
ところで刃物を使うかい? とトビラと呼ばれていた女の子は、事もあろうか俺様に包丁を渡してきた。何故だ。
「別にいいよ。俺様、もともと刃物持ってるから」
と言って、小太刀を見せる。
トビラちゃんは「そうかい」と言って笑った。
「じゃあ私が使う事にしよう。最近、人の夢が壊れてきているような気がするからね。そいつらのせいじゃないかって踏んでいるんだが、どう思う? 現」
「いいんじゃないか」
投げやりな答えを返す現。本人にしては傷を作る事ができないので、まぁつまらないだろう。
フフ、とトビラは笑うと、包丁からギロチンへと替えた。ギロチンだと……?!
「よし、殺そうか。ねぇ」
「殺そうかって……怖いわ。銀が悲しむぞ。そいつらだって一応人間だし」
「そうかい……そう言えばそうだったね。夢を壊される事と同等に、銀ちゃんを泣かせるのはいただけないし」
トビラさん、だからと言ってギロチンをガチャガチャ鳴らさないでください怖いです。
「おい待てやこの神様悪魔天使鬼ども!!」
そこへ、翔がストップをかけた。ヴァルティアのバリアを空間移動術でつなげて外へと出る。
鎌を構え、不敵に笑う翔は言った。
「俺も混ぜやがれ。神様だぞ」
「死神様だね」
悠紀が冷やかすように言う。翔はそれを睨みつけた。
アカツキが目を輝かせたように見えた。あぁそっか。アカツキは翔が好きだっけ? 無駄だよ、その子は銀ちゃんが好きだから。
……俺様じゃ、一生振り向かせられないかな。
「面倒くさい事をしているねぇ」
「うぎゃ!」
いきなり蓮が飛び上がって暴れ出した。一体何に驚いた。
振り返ると、そこには見慣れた人が立っていた。女の人、スーツの人。
上川純。地獄に行った時の案内人。
「……上川さん」
「やだー、ジュン☆ジュンって呼んで——面倒だから純でいいや」
何なのこの人、もう。面倒くさい。
「で、何しに来たんですか」
「そりゃモチ。鈴に追い出されたから戦闘要員として駆り出されたんだけど、私はあいにくと戦闘要員じゃないんでね。そこの駄神と違って」
「誰が駄神だ、誰が。お前こそ駄案内人のくせに」
「何だとー。お前がさぼっているって言う情報を鈴に言うぞー。私の能力を忘れたのかー」
つか知らないんですけどね。
ディレッサはバツが悪そうな顔をして、そっぽを向いた。そんなに鈴に怒られるのが嫌か。前半は活躍していたのに。
「上川純は情報を統括する能力を持つ。そいつが『黒影寮はただの人間の集団だ』という情報を吹聴すればその情報を刷り込む事ができる。どんなに異常な人間である事を証明しても、上川純がその情報を上書きしない限りその情報は刷り込まれたままっていう能力————情報統一(メディア・コンプリート)」
ディレッサ、面倒くさい説明をありがとう。
——って事は。
「僕が眠らせたのは意味がない訳?」
「そうでもない。もしかしたら催眠が切れて起きるかもしれない。そう言う時に、君はすぐにその能力を使って起きた人を寝かせられるかな? 無理でしょ。全員が一斉に目を覚ましたらまだしも、1人1人言って行くのはさすがに喉にクルよ?」
純さんはけらけらと軽く笑いながら言う。
「私の仕事は、この戦いをどう鈴に報告しようかなっていう事だけかな? うん」
「俺がさぼっているって事は?」
「前半はちゃんと格好良かったと報告してあげるよ。後半は知らない。自分でいい訳を考えておいてね」
チッとディレッサが舌打ちをした。