コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。7月7日は神威銀の誕生日! ( No.433 )
- 日時: 2012/10/08 22:22
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
第15章 皇高校ホスト部!!
〜空華視点〜
ハァ、まったく大変な目に遭ったよまったくもう。
文化祭の騒動を全く知らないで目を覚ました客達は、のこのこと校庭に集合していた。これからライブが行われるらしい。
興味がないから帰ろうかなって思っていたら、羅ちゃんと白亜ちゃんが来て、
「見て行った方がいいッスよ。シエルさんが出るらしいんで」
「そーだぞ! シエルちゃんは、そう、鈴様みたいな奴なんだ! だからあたしの嫁だから取るなよ絶対だからな!」
取らねーよ、男なんざって思ったね。ノンケか俺様は。
ともかく、まぁシエルが出てるんなら見てやろうかなって感じで、俺様達も校庭に集合している訳です。
「ねぇ、あれ英学園の黒影寮の……」「うっそ、特別クラスの?」「あたし、狙っちゃおうかなぁ……」
なぁんて声があちこちから聞こえて、しかも視線の雨嵐。こりゃきついわ。帰りたい。
そんな事を思っていたら、翔が何か青ざめた表情で昴に寄りかかっているのが見えた。そう言えば、翔は女が大嫌いで、見たら逃げ出すレベルだったよな。この周り、女性しかいないんだが大丈夫か?
ていうか、翔の場合は顔が可愛いから男に囲まれていたらやばいと思うけどね。いや、男の方が。
「……気持ち悪い。帰りたい」
「もうちょっとの辛抱だから、我慢して。ね?」
子供をあやすお母さんのように、昴は弱った翔を介抱していた。こうなったら死神もどうかと思うけどねぇ。
俺様はどっちかって言うと免疫がとてつもなく強い(とゆーか銀ちゃんが寮に来ない前は結構ナンパとかしてたしね。テヘ)から、辺りを見回してこちらをじっと見つめていた女の子達に笑顔で手を振って上げた。これくらいのサービスは当然でしょ?
「何してんの?」
「女の子に手を振ってたの」
「銀ちゃんがおるのに、浮気者やなぁ」
睦月が茶化すように言ってきたが、そこは大人の余裕で対応する。
「銀ちゃんに振られた時、お前ら一体どうするの?」
「「諦めないのが肝心」」
蒼空と一緒になって答えて来た睦月。お前ら仲いいな。
そうこうしていると、パッと野外ステージの明かりがついた。そこに司会者らしき奴が現れる。
『本日は皇中学高等学校の文化祭にお越しくださり、まことにありがとうございます! 司会を務めさせていただきます、高等部3年D組の平賀と申します』
明るい口調で視界を進行させる平賀——という奴。名前は自分で名乗ってたから多分そうだろうな。
さぁて、これから何が始まるんだか。まさかまた銀ちゃんが舞ったりしてな。それだったら嬉しいんだけど、ていうか飛び入り参加でもしちゃおうかなって思っていたりも何かしちゃったり。
『さて、最初に行いますは————おっと、文化祭で好評だった1年D組の「喫茶びーすと」からシエルさんが歌いに来てくださいましたー! それでは拍手でお迎えください。シエルさんです』
『どうも。貴方の望む俺になりましょう、シエルですよろしくお願いします』
『いやぁ、シエルさんは演劇部の活動にも飛び入り参加してましたね! 昔演劇部だったんですか?』
『あ、ハイ。演劇部のホープって呼ばれていました。お恥ずかしい話です』
そこから平賀とシエルのトークみたいなのが始まった。照れた様子のシエルは、髪をいじくりながら平賀の質問に答えて行く。
と、ここで平賀が意地悪な質問に出た。
『とっころでぇ、シエルさんって案外可愛い顔してますよねぇ。もしかして、彼女とかいらっしゃったり?』
『ひゃい?!!////』
ボンッと顔を爆発させて、シエルが声をひっくり返した。——ん? この声、誰かに似ているような。
思いだすのに首を傾げていると、いつの間にかトークが終わっていた。歌に入るようだ。
『えー、お待たせしました。シエルさんの美声にどうぞ酔いしれてください!!』
そんな事を言って、平賀は横へはけた。ステージにはシエルだけが残る。
スピーカーから聞こえたのは、軽快な音を奏でるJ−POPだった。俺様でも知ってる、メジャーな奴。多分アニメのEDだから、悠紀に訊けば知ってると思う。
だけど、結構これって低い曲だったよな。
そんなこんなでシエルが歌い出す。周りは水を打ったように静まり返った。何故か? もうシエルが上手いんだよこれが。歌手にでもなった方がいいんじゃないかっていう感じの。
「上手いね、シエル!」
蒼空が小さく手を叩いて、素直な感想を述べた。
確かにね、上手いね。
と、ここでシエルが事もあろうか自分の髪に手をかけた。一体何をする気だろうと思っていたら、シエルは髪の毛を引っ張ったのだ。ブチブチと抜けるどころか、ズルリと髪の毛が全部抜ける。
その下から出てきたのは、銀色の髪。
ステージで歌っていたのは、間違いなく銀ちゃん。
「「「「「えぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええええ?!!!」」」」」
これには俺様だけじゃなくて、会場全体が驚いたと思うよ。
何しろ、銀ちゃんが女性でも結構つらい低めの声で歌ってるんだもん。それにめちゃくちゃ上手。確かに歌が上手いとは思っていたけども!
銀ちゃん、こっちに気づいてウインクをしてくれた。
いや、ウインクで済むレベルじゃないからね? これね?
「……まさか銀ちゃんとは思わなかったよ」
俺様がぽつりとつぶやくと、黒影寮の全員が俺様に同意するように頷いた。そうだよねぇ。
そうだよ、ねぇ……ほんとね。
「……あんなに低い声出せるんだね」
「いつもの銀ちゃんじゃあらへんみたいや」
「……銀。すごい」
「そだね。まさかあんな曲を女が歌ってるんだよ? 作者も歌った事あるけど、本人はしんどいとかそういう感想を言っていたような気がするよ」
「両声類なのか?」
「かもね」
うんうん、と何故か全員で頷く。
そんな事を気にもしないで、銀ちゃんは気持ちよさそうに歌っていた。本当に、気持ちよさそうに。