コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。連載1周年突破! ( No.465 )
- 日時: 2013/02/04 22:31
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: RXnnEm2G)
第17章 家出少女の死にかけ人生
〜羅視点〜
みんな、あたしの事を覚えているかな?
ご存じ、物質分解を持つ高梨羅ちゃんですよ☆
覚えていないとか言ったら、物質分解でお前をどこまで分解できるかやっちゃうよ? 多分原子レベルまでいけるかもしれない。
さてさて、あたしの前には人が倒れている。この人は見た事があるんだよねぇ、赤い髪がとてもきれいな女の人。だけどさ、この女の人だとあたしは萌えないんだよね。
やっぱり『黒影寮』と言ったら、あたしと神威銀ちゃんのラブラブ物語でしょ。オフィス物語が次から始まりますー☆
「……でさ、見た事あるんだけど名前が思い出せない女の人。どうして炎天下のコンクリートの上でうつ伏せで倒れれるの?」
「……だったら助けなさいよん」
「嫌だ」
敵を助けてどうなるの。
あぁ、思い出した。野球大会でいたな、こいつ。確か名前は咲音紅だったっけ?
覚えてないや。まぁでも……敵だから助けなくてもいいよね。
「無視しよう。さて、黒影寮に行って銀ちゃんを愛でてこよう☆」
「ちょっとぉ! 無視するなんて酷いんじゃないのん? 人間って全員酷いのん?」
いや、銀ちゃんみたいに優しい女の子は数多存在するよ。だけど、銀ちゃんを狙うような『リヴァイアサン』の敵を助けたところでメリットがないって言っているの。
特にこの女は吸血鬼らしい。血を要求されたらたまったものじゃない。
あたしの血は銀ちゃんにだけ捧げるんだ!!
一方の黒影寮、神威銀は。
「へぷちっ」
「夏風邪ですか? 薬を用意します」
「大丈夫です。それよりリネさん、何で野菜を切ってくださいってお願いしたのに刀を取り出すんですか?」
「——え、ダメなんですか?」
リネと共に料理をしていた。
リネは野菜を切る為に、錬成した日本刀で切ろうとしていた。何をしている。
銀ちゃんなう! 銀ちゃんなう! だよもう。あたしの体は銀ちゃんを求めているんだよ。もしくは鈴様でも構わないよ。
銀ちゃんも鈴様もあたしのものだ。誰にも渡す訳がない!!
と言う訳で、お前ら『リヴァイアサン』にも渡す気はないので!!
「無視しよう。さて行こう」
「だから待ちなさいよん! 紅の雨(ブラッディ・レイン)!!」
突如として立ち上がった咲音紅が、血の雨を投げつけてきた。ていうか危ないな。
あたしはとっさに分子レベルまで分解した。元に戻すか分子レベルに分解するかのどちらかになるからな。あたしの場合は。
「……銀ちゃんを狙う輩でしょ? そんな奴を助けたところで、あたしのメリットにならないでしょ」
「馬鹿そうな感じなのに、案外スパッと言ってくれるじゃないのん」
「……馬鹿そうって何……ッ!!」
ギリッ。唇をかむ。
馬鹿扱いされていた事がむかつく。何コイツ、マジで殺す絶対に殺す何があっても絶対に殺す!!
と言う訳で、咲音紅へ向けて物質分解をしてやろうかと思った瞬間——
「空気砲(エアリアル・ショット)!!」
空気の大砲? というか銃弾みたいなものがあたしのもとへ飛んできた。
腕にジャストヒットして、軌道が逸れる。空に浮いていた雲が物質分解された。あぁぁぁ、計算が狂った。
空気を操る能力者は、この白雪町に1人しかいない。少なくともあたしが知っている中では!!
「イケメン! 何してる!」
イケメン大嫌いなあたしは、男子の事を総称してイケメンと呼んでいる。え? 何か文句があるの?
あぁ、確かこいつは渋谷零だったっけ? 英学園の特別クラス担任。空気使い。面倒くさい。
さらにその後ろには、『リヴァイアサン』の演奏者、ノア・ウミザキがいた。え、懐柔でもしたの?
「養う事になったんだよ。おい、高梨羅。何で町中で能力を使おうとしている。馬鹿か」
「馬鹿じゃねーよ、お前だよ。何で敵を従えてんだよ」
「養う事になった。お前もか? 今『リヴァイアサン』は食糧難らしいから、食料を提供してやれば従うぞ?」
餌付けかよ、汚ぇ。
だけど、咲音紅が頷いたところを見ると、どうやら本当に食糧難らしい。
フン、あほらし。あたしがそんな善人に見えるかな?
「おい、空気のイケメン。こいつはお前が養え」
「ハァ? 普通にけなされた俺にこいつを養えって? まーいいけど」
いいのかよ、というツッコミは心の中でしておいた。
こうして、咲音紅は渋谷零のもとへお世話になる事になったのだ。あたしは知らない。もう知らない。イケメンがどうなろうと、『リヴァイアサン』がどうなろうと知ったこっちゃない。
今あたしが問題にしているのはそう、銀ちゃんに対する渇望だけだ!!