コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。連載1周年突破! ( No.466 )
- 日時: 2013/02/11 22:46
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: RXnnEm2G)
第17章 家出少女の死にかけ人生
さて、リネさんとお料理をしていましたが、なんとリネさんは「お野菜を切ってください」とお願いしたはずなのに、何故か日本刀で斬ろうとする始末です。
一体どういう了見をしているんですか?
まぁ、今まで戦ってきたから仕方がないんですけど、それでも日本刀でおいしく食べられる人参を切ろうとしますか。ここはどこの戦場ですか。
「……むぅ、包丁を使うのは難しいですね」
などと唇を尖らせ、それでも器用に人参を輪切りにしていくリネさん。大きさがバラバラなのは目立ちますが、そこは教えれば何とかなるでしょう。
それにしても、
「……何で皆さんで観察しているんですかっ!」
「「「「「危険だから」」」」」
そうです、リネさんは私の力を狙ってやってきた秘密結社『リヴァイアサン』の1人です。いつ化けの皮がはがれるか分からないという事で、皆さんでリネさんを監視する事になったのです。
私はこんなリネさんを見てしまっているので、もう狙われないと思っているんですけど……。
特に翔さんとか空華さんとか、リネさんを射殺すのではないかと思うぐらいの鋭い眼光を携えて観察をしています。蒼空さんなんかアンパン食べてます。どこの探偵ですか?
「……観察しているぐらいなら手伝ってくださいよ。修行代わりにもなりますよ?」
「怜悟」
「了解」
翔さんの短い命令をくみ取ったのか、怜悟さんが立ち上がり、私の手から包丁を奪って大根の桂剥きに挑戦。見事な桂剥きを披露してくださいました。
って、何で皆さんはやんないんですか! やってくださいよ!!
「もう! 怜悟さんだけにやらせないでください! 暇なら洗濯物を取り込む係と、掃除をする係で分かれてください!」
「何で? 俺らにはリネを見張っているという崇高な使命が……」
「ご飯抜きにしますからねっ!」
そんな魔法の言葉を唱えると、あら不思議です。皆さんが行動をしてくださいました。
怜悟さんは静かに「……任された」などとつぶやいています。あぁ、まだ疑っていたんですね。
その間に私は今日のお夕食である、ナスとトマトのミートソースを作る事にしましょう。
え、何で大根と人参が出てきたのか? それはスープの材料です。ミートソースにはいれません。
***** ***** *****〜空華視点〜
残暑がまだ残るこの季節。清々しいぐらいに晴れ渡った空に、俺様達の洗濯物がはためいている。
ちなみに、洗濯物班のメンバーは、俺様と翔と昴と睦月だった。ほかのメンバーは掃除班へ回ってもらった。
なんだかほかほかの温かい洗濯物を取り込みつつ、俺様はため息をつく。
銀ちゃんのお人よしにはもう敬意を払いたいよ。かつての仲間をああやって黒影寮に招き入れちゃうんだぜ? そりゃ錬金術師だし、いざとなったら銀ちゃんを守ってくれる1番近しい存在になれる。
だけど、ねぇ? 敵だよ? もともと敵だったんだよ? 迎え入れる?
「……ホンマ、銀ちゃんは何を考えているか分からへん」
「あ、睦月も思った?」
「思わずにはいられへんがな! お人よしにも程があるやろ。奴さんは敵だったんやで?!」
「睦月の気持ちも分からないではないがな」
タオルを死神の力で畳みつつ、翔は息をつく。
「……黒影寮にとって、女という存在は貴重だ。女はつかさしかいないが、つかさはいつ暴走して銀に飛びつくか分からない。リネの場合だと自制も効くだろうし……」
「……だよねぇ」
なんというか、リネがいたらいたで銀ちゃんもより安心できるような気がした。
銀ちゃんは女の子ゆえ、俺様達がこの先出てくる強敵に立ち向かわなければならない。お風呂とかそういうところは、銀ちゃんは守れないのだ。いざとなったら鈴がいるが、頼りない。
そこで殺人人形と恐れられているリネがいてくれれば、銀ちゃんを守ってもらえるだろうという魂胆だ。
このまま招き入れてもいいかもしれないが、どうしても不安要素は残る。翔の実家で、リネの力は確認済みだ。
「このまま信じられないからね」
昴も踊り子の力を使って、パタパタとはためいているTシャツを取り込んだ。銀ちゃんの着ている服には一切手をつけない。編他じゃないんだから。
最後に銀ちゃんの服と下着は、睦月の瞬間移動と念動力で動かす事にする。それでOKという事だ。
「……いや、まぁ、でもね」
「信用はできないよなぁ」
「……だよなぁ」
「……ホンマになぁ」
うあぁぁぁ……さすがにさ、ここまで女の子を疑いたくないよ。銀ちゃんだって気に入っているし!
でも、疑わずにはいられないじゃないか。だって、敵だから。もともと敵だから!!
どうすればいいんだよ……。
「何を悩んでいるのか分からないけどさぁ」
その時、声がした。
同時に、俺様の頬をかすめて弾丸が飛んでくる。穿った地面が凍った。
この力……まさか、夢折梨央!
「正解。僕ですよ、夢折梨央ー」
にっこりと笑いながら、木陰で巨大なライフルを抱えた空色の狙撃手がそこにいた。