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Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。連載1周年突破! ( No.474 )
日時: 2013/03/18 22:47
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: RXnnEm2G)

第17章 家出少女の死にかけ人生


 〜リネ視点〜


 読者の皆さんは初めまして、ですか。
 私はリネ・クラサ・アイリスと申します。殺人人形と恐れられている、いわゆる創造主(クリエイター)です。武器しか錬成できませんが。
 現在、私は黒影寮でお世話になっています。そうです、かつて敵として対立していたあの能力者の集団です。神威銀——いえ、銀さんの計らいにより、私は住処を与えられました。
 そして今は、銀さんの兄である神威白刃——それから六道音弥と朝霧怜央・美桜の3人がいた。何でいるんですか。

「いやぁ、僕が引き取ったって言えばいいのかな? 餌付けしたら従えれたよ? 案外『リヴァイアサン』って簡単なんだね」

 そりゃ昔は能力が効かないだのなんだの厨2設定を付け足されましたけど、何1つ役に立ってませんし。
 ていうか、まだ生き残っていたんですね、特に六道音弥。

「え? 酷くない?」

「幻術師(ミラージュ)って案外使えませんし」

「怜央も酷い!」

 六道音弥はオッドアイから涙をぽろぽろとこぼします。マジ泣きのようです、私は知りませんが。
 と言う訳で、私はお留守番をしているところです。この神威白刃が私の動きを見張っていろと寮長の死神から命令を賜ったらしいので、大人しくしています。
 銀さんが大切にしている黒影寮です、壊す訳がありますか。

「……あれ、いつの間に増えてる……ていうかリネ・クラサ・アイリスもいるじゃん。面倒くさいなぁ……」

「やっと起きてきましたか、トマトジュース狙撃者。トマトジュースなら冷蔵庫の中です、勝手に探してください」

「僕がそんな事を言わないでもよく分かったね、感心するよ」

 奥から空色の髪に寝癖をつけた馬鹿——夢折梨央がやってきました。こいつの能力は使えるんですが、本人が超絶面倒くさがりの楽観的な性格をしているので役に立ちません。こういうのを確か『昼行燈』と言うと思います。
 夢折梨央はトマトジュースのブリックパックを見つけて、ごくごくとそれを飲んでいました。プァ、と何やら声を上げて、口の端から垂れる赤い液体を手の甲で拭います。血を飲んだ後見たいです、紅さんを思い出します。

「……咲音紅と一緒にしないでよ、あの人は吸血鬼でしょ」

「知っていますよ」

 トマトジュースと血液が一緒ではない事ぐらい、私でも分かります。
 夢折梨央はため息をつきますと、無骨なライフルを背負って残暑の厳しい中庭へ姿を消しました。何をするのですか、とその背中に問いかけても答えは返ってきませんでした。
 仕方がないので神威白刃に答えを求めますと、にっこりとした笑みを浮かべて答えました。

「『黒影寮に一応居候する身だから、修練に決まってるでしょー』だってさ。ちゃんと梨央君も考えているんだね」

 そんな事を言うと、中庭の方からズダンッ! という銃声が響き渡りました。
 なるほど、彼なりに考えている訳ですね。

***** ***** *****〜銀視点〜

「あ、銀ちゃん! また会えたね、嬉しいな☆」

「神威さん、こんにちは」

「白亜さん、羅さん。こんにちは。黒影寮に来ますか? 今日はアップルパイでも焼こうかと考えていたんです」

 昨日、何でかサンゴ叔母さんは『青森県なう』とか言って林檎を送ってきました。しかも結構大量に。
 何やら食べるにはまだ早いので、アップルパイにして食べてしまおうかと思いました。材料はそろっていますから、せっかくですし皆さんをお招きして。
 羅さんはイケメン嫌いを発動させつつも、「行く」と言いました。鈴は平気なのに、どうしてでしょうね?
 もちろん、白亜さんは首を縦に振ってくれました。今日はバスケ部はないらしいです。

「それにしても、アップルパイなんて珍しいッスね。一体どういう風の吹き回しッスか?」

「えぇ、実は——リネさんと梨央さんが黒影寮で居候を」

 えへへ、と笑うと、隣でドグシャァ! という音が聞こえました。
 電柱の途中を物質分解してだるま落とし風にしてしまった羅さんが、そこに立っていました。あるぇ?

「へぇ。へぇぇぇぇえ。何それ何それ何そのオイシイ展開。ふざけんな、こっちがどれだけ黒影寮に住みたくて住みたくて我慢していると思っている訳ぇ? 昨日今日来ていきなり銀ちゃんと1つ屋根の下? これ以上ハーレムルートを増やしてたまるか全力で阻止しないと!!」

 うわぁぁ、黒い影が見えます。あ、これぞまさしく黒影寮ですね☆
 いや、そんなギャグは今は必要ありませんか。すみません。
 白亜さんは案外落ち着いていました。「へぇ、そうなんスか」なんて普通に言っています。ありがとうございます。
 そんな他愛もない話をしながら校門をくぐりますと、ちょうど黒影寮の皆さんとも巡り合いました。羅さんは全力で嫌がってましたけど。

「あ、黒影寮の皆さんも。お久しぶりッス」

「おう、轟白亜か。相も変わらずスポーツ口調だな、バスケ部だったか?」

「一応」

 何やら超絶不本意、というような表情をして白亜さんが答えました。
 翔さんは「ふーん」と適当に頷いて、そのまますたすたと黒影寮へ向かっていきました。あーぁ、また本を読みながら歩いて。もうどうなっても知りません。
 そのあとを昴さんが追いかけて、ぐだぐだと蒼空さんと睦月さんが言いあいをしながら続きます。怜悟さんは空華さんと蓮さんと共に、「リネは一体どうしているだろうか」という賭けをしていた。大人しくしている方に1票ですね。
 黒影寮に向かう道すがら、商店街によって夕飯の買い出しを済ませて(荷物は睦月さんの物質転送で黒影寮の冷蔵庫に送りました)帰宅します。

「ただいまですよー」

「おかえりなさいですっ」

 扉を開けたその瞬間、金色の髪が私の胸の辺りに飛び込んできました。
 見ると金髪少女——リネさんです。微笑を浮かべながら、「おかえりなさいです、銀さん」と言います。可愛らしいです。

「あ、黒影寮の皆さんもお帰りなさい」

「こちらに気づいてくれてどうもありがとう。百合の世界になったら絶対にお前をぶち殺そうかと考えたわ」

 昴さんが何やら拳の骨を鳴らしています、怖いので止めてください。
 すると、奥から「んー、何。みんな帰ってきたのー?」というのんびりとした声が聞こえてきました。ぺたぺたと歩いてくる音、声、おそらく夢折梨央さんですね。
 廊下の奥からやってきた梨央さんの姿は——

「きゃぁあ?! い、一体なんて格好をしているんですかっ!」

「え? 普通にジーンズに、何も着てないけど。暑いし」

 濡れた空色の髪を拭きながら、梨央さんは首を傾げます。
 小柄な体をしているのに、ほどよく筋肉はつけられています。鍛え抜かれたところは鍛えられています。でも上半身裸はいかがかと思いますが。
 そんな梨央さん、黒影寮の皆さんに連行されました。お疲れ様です。