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Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。連載1周年突破! ( No.485 )
日時: 2013/04/08 21:56
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: RXnnEm2G)

断章 下剋上☆黒影寮!!


 〜視点なし〜

 本日、神威銀はいない。何故か? 今日は珍しく白亜と羅とリネと共に映画に出かけているのである。銀も女の子、女の友達と遊びたいお年頃なのだ。
 なので、「今日は1日楽しんでこい」と翔は命令をして、銀を外に出させたのだ。
 まぁ、いざとなったら彼女にはセコムの神様が何十体もいるので、大丈夫だろう。そして多分、いざとなったら電話がかかってきてこちらが助けに出動する事になるだろうから。

「銀ちゃんはお休み? 翔ちゃんも粋な事をやるじゃない」

「たまにはいいだろ。あいつだってビッチだ、ビッチはビッチ同士仲よくやるといいさ」

「……捨て台詞にしか聞こえないんだけど?」

 食堂にやってきた昴は眉をひそめて、翔の言葉を注意した。相変わらず女性嫌いだけは健在のようだ。銀の事を「ビッチ」呼ばわりである。
 それを見た空華は、ケタケタと腹を抱えて笑っていた。

「いやぁ、笑った。相変わらず銀ちゃんをビッチ呼ばわり! マジでツンデレ? ツンツンデレ?」

「違うわ! 燃やすぞ!」

 暴言と共に、読んでいた洋書を投げる。
 が、そこはさすが忍びとでも言おうか。元からある反射神経を生かして、空華は飛んできた本を見事によけた。
 チッと思い切り舌打ちをする翔。それが気に食わなかったのか、空華は苦無で応戦。第1次黒影寮戦争の火ぶたが切って落とされた。
 さすがに喧嘩に巻き込まれたくないので、昴は自室に避難する事にした。が、そこで誰かとぶつかる。
 誰かと思ったら、普段は引きこもりのニートのような生活をしている鬼○郎ヘアの言葉使い・祠堂悠紀だった。

「悠紀、一体どうしたの?」

「いや。こっちに最近友達になった奴が来るから……」

「へぇ」

 思わず驚く。悠紀に友人など珍しい。
 自宅警備員確実と言われているコミュ障の悠紀にまさか友人ができるとは思っていなかった。驚かずにはいられない。
 後ろから「え、友人? 画面の中だけだろww」という蓮の冷やかしに対して、「黙れヘタレ」という一言で引かせた。毒舌は健在のようだ。

「で、今こっちに来てるって?」

「うん。だからちょっと迎えに行ってみようかなって思ったんだけど。食堂がやけにうるさいね……?」

「……翔ちゃんと空華が喧嘩してるの。ごめんね」

 昴は翔と空華を代表して、申し訳なさそうに謝った。
 悠紀は「……僕が大人しくさせるから、能力は使わせないようにね」と言った。え?

「だって、普通の友人だよ? こんな力を見たら、何をするか分からないでしょ?」

 と悠紀が告げたその瞬間、
 食堂の方から、ガッシャン!! という破砕音が聞こえてきた。え、誰かが皿でも割ったか?
 そういえば、銀は皿を割ったら激怒した覚えがある。帰ってきて怒りでもしたらたまったものではない。
 昴と悠紀は弾かれたように反応し、食堂へ飛び込んだ。

「ちょっと翔ちゃん!! 皿割るまで暴れるって一体何————」

「この眼帯忍者! 馬鹿じゃないの? 馬鹿じゃない————」

 …………衝撃的な光景が、目の前に広がっていた。
 食堂は大惨事になっていた。机は真っ二つ、椅子は粉々、皿は割れていないが——なんだか本当にすごい事になっていた。
 そしてすごい事は、死神の翔と忍びの空華の喧嘩を、素手で止めていた事だ。
 ひょろりと背が高い少年である。ただし空華よりは若干低いと感じられる。漆黒の髪にニット帽をかぶり、さらに紅の瞳で2人を睨みつけていた。

「……何、この厨2病みたいな喧嘩は。伊月から噂は聞いていたけど、まさか——ね!」

 少年は掴んでいた翔の腕と、空華の足を振り払って転ばせた。少年に尻餅をつかせられる死神と忍び——実に滑稽な状況だ。
 昴と悠紀が唖然としたまま立ち尽くしていると、夢折梨央が入ってきた。何やら焦ったような雰囲気である。

「な、何か裏庭にイロモノ集団がやってきたんだけど! 一般人だよね、狙撃練習は止めた方がいいよね?!」

「え、あれってエアガンじゃなかったの? てっきりエアガンでいたずらの練習でもしているのかなって思ったんだけど。そしたら建物から怒声が聞こえてくるじゃない? 優月を行かせてよかったわー」

 裏庭の方から入ってきたのは、黒髪に黒目の少年である。青いつなぎを着ていて、工事現場のお兄さんのようだ。後ろからさらにイロモノ集団がぞろぞろと現れる。
 その少年を見た瞬間、悠紀は口を開いた。

「な、何で裏庭から来るの? 伊月!!」

「いやぁ、悪い悪い。最初は肝心って言うじゃん? でもま、よく従妹ちゃんからは話は聞いているけどね」

 にっこりとした笑みを浮かべたその少年は、自らの名前を告げた。

「初めまして、神楽伊月です。有馬高校の吹奏楽部、ホルンパートです☆」


 と言う訳で、能力者集団の黒影寮と、いたずら集団の吹奏楽部の異種コラボ、始まり始まり!