コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。連載1周年突破! ( No.486 )
日時: 2013/04/15 21:53
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: RXnnEm2G)

断章 下剋上☆黒影寮!!


 〜視点なし〜


 神楽伊月。有馬高校という部活動で有名な高校の吹奏楽部所属の少年である。
 最近、悠紀とネットで友達になり、こっちに遊びに来たいと言ったのでこっちに来たのである。まさに自由な少年だ。
 ちなみに同じ年でなおかつオタク機械にも強いという事もあり、悠紀と伊月は意気投合した。

「……という訳だね?」

「まさしくね」

 悠紀はそのやり取りの証拠である、チャットのログを翔と昴と空華に見せた。
 騒ぎを聞きつけてきた黒影寮メンツは、伊月とその隣に立ってゲームをしている少年を注視している。梨央もその中に混じっているので、つ撃ってもおかしくない。
 翔はスクロースしてログを流し読みし、自分達の本質が書かれていない事を確認する。そして、

「……テメェらは、さっきの喧嘩をどう思う?」

「別に普通じゃない?」

 確認するかのように伊月に訊いたが、そんな答えが返ってきた。いいのかそれで。

「確か、従妹ちゃんから聞いていたけど——とか言っていなかった?」

 昴が確認するように問いかけると、伊月はポンと手を打った。

「あぁ。従妹ちゃんも同じように不思議な力を持っているからね! 確か自分では気づいていない様子だったけど、ここに来てから気づいたのかな。ま、分からないけどね」

 最近会ってないし、と伊月は笑った。どうやら、従妹ちゃんとやらはこの町にいるらしい。
 黒影寮一同は、さっそく頭が痛くなってきた。
 何でこんな奴が、しかも銀不在の時によって来るのだ。悠紀を恨もうにも恨めない。

「あれ? 固まっている様子だけど、まあいいか。こちらの自己紹介はまだ終わってないんだぜ! 優月君、自己紹介をお願い」

「えー、面倒くさいけど……まいいか。二階堂優月、ゲーム大好きですよろしく」

 画面から目を離す事なく、二階堂優月と名乗った男はひらりと手を振った。何だコイツ。
 翔は鎌を取り出して礼儀のなっていない優月を殺しにかかろうとしたが、止めておいた。昴が何を言うか分からないから。
 すると、中庭の方から追って誰かが入ってきた。

「ちょっと、伊月君! 何をしているのよ、建物に優月を使って強行突破なんて!」

「伊月様ー、きちんとしてほしいのだ! こちらも大変なのだ!」

「……少しお仕置きが必要ですわね……フフフ」

「……お仕置き。任せて」

 女の子4人。しかも美人。
 これには空華は口笛を吹き、翔は「ヒッ」と情けない悲鳴をのどから漏らした。

「あ、こちら部長の北園アリス先輩と副部長の桜坂理乃先輩。堂本美姫ちゃんに、秋月めるちゃん。——と、あれ? あと1人は?」

「玄関からやって来るわよ。マッドサイエンティストでも、礼儀はきちんとなっている子なのよ」

 北園アリスと紹介を受けた金髪美少女は、玄関を顎で示した。
 それに申し合わせたかのように、ピンポーンと玄関のチャイムが鳴る。昴が「あ、俺が出るよ」と言って玄関に行ってしまった。

「ハイハーイ、どちら様————」

 そこで昴の声が消える。
 何事かと蒼空が昴のあとを追い——そしてどたばたと帰ってきた。

「な、な、何か!! 蓮に似ている奴が、玄関で菓子折り持って——!!」

「兄さん、お久しぶり!」

 玄関から食堂まで律儀にやってきたのは、銀色の髪を持つ少年だった。まさにその姿は、蓮とうり二つ。猫耳でも生やしたら完璧にそうだと思う。
 その少年を見た瞬間、蓮は顔をパァア! と輝かせた。

「燐! お前、来てたのか!」

「うん、兄さん。久しぶりだね。元気にしてる? たまには実家にも帰ってきてね、母さんも父さんも心配しているよ。肉体変化の練習はどうなの?」

「あぁ、順調だよ。最近では、獣化しなくても力を使えるようになったんだ! 見せてやりたいぜ!」

「ぜひとも見てみたいね。僕の実験にも少しだけ使わせてくれると嬉しいな。また協力してくれるよね?」

 そんな事を話す銀髪少年と蓮。一体何だ? しかも蓮の特殊能力である『肉体変化(メタモルフォーゼ)』を知っている。
 蓮は嬉々として少年との関係を語ってきた。

「こいつ、俺の双子の弟! 名前は篠崎燐っての。昔から俺の肉体変化を指導してくれていた奴でさ、めちゃくちゃいい弟だぜ!」

「初めまして、皆さん。黒影寮の人達ですね! 詳しくはうかがっていませんが、不思議な力を使ってくれても構いません。僕は慣れているので……あ、あと伊月君も慣れていると思いますよ?」

「あぁ」

 伊月は平然と頷いて見せた。
 慣れているとは一体どういう事だ? とでも言うかのような視線が、伊月へ投げつけられる。
 きょとんとしてその視線を受けた伊月は、当然とでも言うかのような口調で爆弾を落としていった。


「神威銀。知ってるでしょ? 従妹の銀がいつもお世話になっています」


 ——————従妹?
 ——————神威銀の、銀ちゃんの従兄がこの神楽伊月?
 信じられない、とでも言うかのような視線が伊月を突き刺す。当たり前だ。似ていない。銀色の髪を持つ銀と違って、伊月は黒い髪なのだ。
 しかもこの伊月は、不思議な力を持っている様子はない。本当に従兄だろうか?

「……信じられないなら、銀にでも確認してみればいいと思うよ。俺は言ったぜ」

 伊月はへらりと笑って、とある1枚の写真を見せてきた。
 そこに映っていたのは、可愛らしい桃色の着物を身につけた幼い銀の姿とオレンジ色のつなぎを着た伊月の姿が映っていた。伊月曰く、これは正月の写真らしい。
 正月につなぎを着るのはどういう事だろうか、というツッコミはこの際やらない。問題はその隣の銀髪少女だ。にっこりとほほ笑むその少女は、まさしく神威銀そのものである。

「……銀ちゃん可愛い!」

「やらねえがな」

 伊月はにやりと笑って、写真を奪った。いじわる。
 本当に従兄と認識しないといけないだろうか。
 黒影寮は、軽く神楽伊月という存在を戦慄した。