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Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。 ( No.5 )
日時: 2011/10/05 22:00
名前: 桐生玲 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)

第1話 ウェルカム。黒影寮。


 朝起きたら、叔母さんが蒸発していました。

 というのはほんの少しの冗談で、私、神威銀はテーブルに置かれた白い封筒と可愛らしいメモ用紙に目を落としました。
 黄色い便せんに犬の模様が入った、本当に可愛らしい便せんです。
 これが50代の叔母さんではなく、5歳児だったら本当に可愛かったのですが。

『愛しの娘、銀ちゃんへ』

「誰が娘ですか。姪でしょう」

 誰もいないのにツッコんでしまいます。
 いけないいけない。少し押さえないと。まず、何があるのか見なくては。

『叔母さんは友人と一緒に世界1周旅行へ行ってきます。しばらく帰ってきません』

「何でですか?!」

 1人で留守番してろとでも言うんですか?!
 そんなの、寂しすぎます! 高1ですけど!!

『でも安心して! 叔母さんの息子達が一緒に暮らしてくれるって言うから』

「息子?」

 叔母さんに息子なんていましたでしょうか。
 少なくとも、年齢の割に若く見えるので生んでいるのかもしれませんが。

『この白い封筒を持って、山の上にある黒影寮ってところに行きなさい』

 そこで手紙は終わっていました。
 黒影寮? どこかで聞いた事あるような——。

「あ、英学園の7つ寮の1つですね!」

***** ***** *****

 英学園。私が通う『皇中学高等学校』の近くに建てられた、超マンモス校です。生徒数は軽く1000人を越し、全員が寮に入ります。
 寮は7つに分かれていて主に6つの寮が使用されていますが、問題は7つ目の黒影寮です。
 元は出来の悪い生徒をそこに住まわせていましたが、最近ではお菓子な生徒を住まわせているようです。
 そこに私は行けと言われました。
 ……なんて、自殺行為でしょう。

「と、とにかく……。着きました」

 坂を何とか上りきり、私は額に浮かんだ汗を拭いました。
 洋館を思わせる白い壁で作られた建物。どこか年代物かと思いましたが、噂では最近建て直したらしいです。
 鍵を渡されているので、ドアを開けました。

「この野郎! ワシのパンツを返せや!」

「やなこった! 睦月のパンツはイチゴ柄!」

「お前かて、ケーキ柄のパンツを穿いてるやろがい!」

「うるさい」

「「黙れふんどし!!」」

 ドアを閉めました。
 無言でドアを閉めました。
 何でしょう、今の。2人の男の子がパンツを片手に廊下を走っていましたよ?
 しばらく待つと、静かになったのでもう1度ドアを開けてみました。
 先程のように男の子達は走っていませんでした。が、豪奢な作りである玄関ホールは黒焦げになっていました。
 一体何があったのでしょう?

「あれ、お客さん?」

 突如、声がしたのでその方に目を向けてみました。
 そこに立っていたのは、飲むタイプのゼリーを吸っている茶髪のとこの子がいました。
 茶色い髪は肩まであります。どこか幼い感じの男の子です。

「何か用?」

「あ、叔母さんの神威珊瑚からここに来るように言われたんですが」

 そう言うと、男の子はポンと手を打った。

「あぁ、神威銀ちゃん。よく来たね。辛かったでしょ? こっち来て。寮長呼んでくるから」

「ハァ。ありがとうございます」

 靴を脱いで寮の中に入ります。
 綺麗ですね。黒焦げになっていなければ、の話ですが。
 廊下を真っ直ぐ進んで行くと、食堂になりました。いくつものテーブルが並べられていて、雑談が出来そうな空間です。
 男の子は私を端の席に通すと、少し待つように言いました。
 言われた通りに、私は席に座って待つ事にしました。
 一体、何が始まるんでしょう?


「ねぇ、あれ誰?」

 黒い影は隣にいる金髪の少年に訊いた。
 金髪の少年は、口にくわえた飴の棒を指でいじりながら答える。

「空華、知らへんの? 新しい管理人や。珊瑚さんが旅行で留守の間の」

「へぇ。初耳」

「仕方ないよ、空華は彼女と忙しいもん」

 今度は隣の黒い髪の少年が答えた。
 影は椅子に座る銀髪の少女をもう1度見ると、にやりと笑う。

「決めた。俺様、今度はあの子をオトすよ」

「ハァ? 無理に決まっとるやろ」

「俺様に、」

 影は、黒光りする何かを金髪の少年の鼻に突き付けた。

「不可能は、ないんだぜ?」