コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。連載1周年突破! ( No.510 )
- 日時: 2013/09/02 21:59
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: RXnnEm2G)
懐かしき、黒影寮主催☆やりたい事はなんでもやっちゃおうぜふぇすてぃばる!! を思い出してくださった方がいらっしゃいましたので。
北斗七星様からお題をいただきました。
もうそろそろ黒影寮も2周年経つなー、これいつまで続くんだろ……。
そんな訳で! 始まりまっす。
もしも!! 神威銀が!! 幼児だったら!!
いつもの天井。
いつもの部屋。
だけど、どこか違う気がする————黒影寮の管理人、神威銀は感じた。直感だった。
体にかかっているタオルケットを剥ぎ取り、その『どこか違う感じがする』という気持ちを取っ払う。気にするな、私。
しかし、やはり変化はあったようだ。
「……あれ?」
おかしい。何がおかしいって、ベッドが高い。床に足がつかない。というか、着ているパジャマがゆるゆるだぼだぼなんですけど!?
ぶらぶらとピンク色の水玉模様の半袖を揺らし、そして首を傾げる。
袖から見える手は間違いなく自分の——だが、こんな小さな手のひらをしていただろうか。まるで紅葉のようだ。
あれ? 自分の手ってこんな感じだったっけ? あれ?
嫌な予感がする銀は、おそるおそる鈴を呼び出す為の鏡を覗いてみた。ベッド脇にある小さな鏡を見てみると、子供がその鏡に映った。銀色の髪に漆黒の瞳を持った、小さな少女。
銀は頬を抓ってみた。鏡の中の少女も同じように抓る。ちなみに痛みはちゃんとあった。
「……な。何ですかこれぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええええええええええええええええええ!!」
銀の絶叫は黒影寮内に響き渡り、そして朝の鍛錬をしていた黒影寮一同を震撼させたのだった。
***** ***** *****
何事かと思って銀の部屋に駆けこんだ黒影寮が見たものは、幼児化してしまった神威銀の姿だった。
水玉模様のぶかぶかパジャマを着たまましくしくと泣きじゃくる銀は、まず寮長である東翔へ助けを求める。
「ふぇぇぇ、翔さぁぁん……。何ですかこれぇぇぇ」
「俺が知るか」
即答だった。
いくら黒影寮きっての秀才——否、天才である翔であっても、このような事態は初めてなのだ。如何せん、対応の仕方が分からない。子供好きの翔であっても、目の前の子供は黒影寮の管理人でそんで——。
そこまで考えていたら、翔の頭が爆発した。もう訳分からん。寝たい。
しかし、この状況にいち早く対応したのは、まさかの空華だった。王良家の当主であり、大家族の長男であるゆえに、子供の扱いは慣れているのだろう。泣きじゃくる銀の体を抱き上げる。
「よーしよし。泣くな泣くな。可愛いお顔が台無しだぞ」
「うぇぇぇ……だって、だってこんなの……あさごはんがつくれないじゃないですか……」
かんりにんしっかくです……と蚊が鳴くような声で言う銀。幼児化の影響か、しゃべる言葉がひらがなになってしまった。
ポンポンと銀色の頭をしっかりとなでる空華。その姿は、さながらお兄ちゃんのようだ。いや、実際お兄ちゃんであり、銀にも神威白刃という兄がいるのだが。
というか、心配するのは管理人としての業務か畜生可愛すぎるだろうちの管理人マジ天使——と黒影寮住民一同一斉に思ったのだが、それは思うだけにとどめておく。ただ1人、
「銀ちゃんマジ天使」
「……そうくうさんなにをいっているんですか?」
蒼空だけは口にしていた。馬鹿だから。もう1度言う、二条蒼空は馬鹿だから。
だが、そこは天然(鈍感ともいう)神威銀、にっこりと万人受けする笑みを浮かべた。これぞ必殺天使スマイル。蒼空の心に大ダメージ。
「朝ご飯は俺様が作るわ。————お前ら、俺様が作る料理に文句があるなら挙手しろ。自分で作れ」
空華の笑顔が黒い。
もちろん、黒影寮きっての家事上手である空華の料理に敵う奴は、銀だけであり————誰も手を挙げる事はなかった。
何とか朝食を終えた銀は、とりあえず今日が日曜である事を心の底から感謝した。平日だったら最後、あの銀ちゃんクラスタである高梨羅に捕まって終わりだ。監禁どころでは済まない、別館行きになる。
管理人の仕事をすべく、まずは洗濯物だと思って脱衣所へ向かおうとするも、空華に引き止められた。(この時、銀ちゃんは空華の術により自分の服を子供サイズにしてもらっていた)
「何をしようとしているのかな?」
「え、だって……おしごと」
「今日はいいから。俺様がやるから——いや、全員にもやらせるから。銀ちゃんは休んでなさい! 危ないんだからね! 今は子供なんだから!」
いつもの空華はどこへ行った、いつの間にやらお母さんだ。
今度、空華をお母さんと呼んでみようかなと思って、銀は椅子に座ってぶらぶらと足を揺らしていた。今の自分の年齢は、おそらく5歳児ぐらいだろう。思考は神威銀でも、体まではついて行かない。
(むぅ……私もできますよ)
唇を尖らせて、何もできない自分を悔しく思った。
しかし、子供にできる事などたかがしれている。そう思うと、反論もできない。大人しく従うしかあるまい。
しかし、影では全員して、その子供の銀ちゃんに癒されているのであった。
うちの子マジで天使だ、いやあれは拗ねてる。天使が拗ねておられるぞ!! もう祭り状態である。
ただ1人——黒影寮の(一時的な)おかんとなった空華は、今日の昼の献立を考えながら洗濯物を干していた。すでに恋うんぬんよりも、お前は嫁になればいい銀の嫁になれ。
銀ちゃんはきちんと戻りました。時間が経ったら戻りました。
お粗末さまでしたー!