コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。連載1周年突破! ( No.536 )
- 日時: 2013/12/23 22:26
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: RXnnEm2G)
第19章 進撃の巨人〜ヒーローと死神がやってきた〜
〜基本視点なし〜
新事実が発覚した。
人と死神が結ばれる事はあるようだが、子をなす事はできないようである。この白鷺市の死神である翔いわく。
ちなみに、黒影寮の寮長である東翔はその事実を知らなかったようで、「じゃあ何で俺はできたんだ?」と首を傾げていた。頭のいい彼でも分からない事ってあるのね。
ズズ、と味噌汁をすすりながら、死神・翔が言う。
「おそらくそこの炎の死神は天界と地獄のハーフだろう。父親の血でも色濃く受け継いだか。そういう奴は死神になるからな。それに、こういう奴もいる」
パチン、と椀の上で箸をそろえて、死神・翔は真剣な目で銀の方へ向き、真実を告げる。
「人間が死神と結ばれた事がある。そこにいる死神じゃあないがな、俺様も聞いた事があるだけだ。
死神は男で、人間は女だったそうだ。
人間から死神になる場合に必要なものは、性交渉を結ぶ事——死神の男は人間の女を死神にしてしまった。
事前から男は説明していた。『自分は死神で、君は一生涯人を殺していけるか?』という質問も毎回していたようだ。それでも女が望んだから、彼女を傍に置いておく為に、な。
それから——どうなったと思う?」
ちらりと少し赤みのかかった茶色の瞳で、黒影寮全体を見回す死神・翔。
ちなみに隣にいたヒーロー・昴は食べ終わったのか、自分の食器と他の連中の食器を片づけていた。死神とか人の恋事情に首を突っ込むほど無礼者ではないのだ。
シン、と静まり返る黒影寮の連中の中で、唯一口を開いたのは——
「ハッ! 今もまさか生きているとか!?」
————1番馬鹿の蒼空だった。
死神・翔は思い切りため息をついた。「ハァァァァァ……」と聞こえた。
「馬鹿か? こいつ」
「……申し訳ないな。黒影寮で1番の馬鹿だ」
こちらも頭痛がしたのか、額を押さえて寮長・翔が呻く。
死神・翔は蒼空を睨みつけて黙らせ、話を続けた。
「——その女は死んだ」
——銀の息を呑む声が聞こえた。
やはり、と死神・翔は思う。この女は、その事を想定していなかったのだ。
「人を殺していく事に耐え切れなかったのだ。『もう耐えられない——殺して』と言って殺された。
だが、死神を殺す事は至難の業だ。そこの王良家の当主が使う『死神操術』でも死神自身を殺す術式はないだろう。調教するものぐらいだろうな。
じゃあ、どうやって殺すか。
——そこの炎の死神が使われた、という訳だ」
「翔ちゃんが?」
苦しそうな表情を浮かべる寮長・翔へ、黒影寮全員の目線が注がれる。
「炎の死神の炎——『地獄業火(インフェルノ)』は有体に言えば、何でも焼ける炎だからな。相手が死神だろうが消し炭にし、焼かれたものはどんなものであっても転生はしない。
さて、変わって質問をしよう。炎の死神——何人殺した?」
「………………」
寮長・翔は黙ったままだ。彼の目線は、ずっと机の上に注がれたままだ。だが、ゆっくりと口を開く。
「……10人だ」
「じゃあ、翔が銀ちゃんを振ったのは……」
「そういう意味だ」
ビシッと銀へ向けてその鎌の刃を突きつける死神・翔。その瞳は凛としたもので、俺様な態度に合っていた。
肩を震わせて死神・翔をおずおず見上げる銀。胸元に下がった鏡から、鈴が「テメェ! 何してんだコラァ!!」と叫んでいたが死神・翔は鮮やかに無視する。
「神威銀。東翔の立場に立って考えてみろ。もし貴様が死神で、同族を殺す事ができる炎を持ち、同族を何人も殺した事がある。
そこで東翔に告白をされたとしよう。『好きだ』とな。
だが、そいつを死神にしたとしていつか『殺して』と頼まれた時にはどうする? 殺したくないだろう?
かといって子をなす事もできやしない。——どうする?」
「そりゃあ……」
「今思った事と、東翔が抱いた気持ちはおそらく同じだ」
俯かれた銀に、死神・翔は言い放つ。
あの時、寮長・翔はこんな気持ちを抱いていたのだろうか。だとしたら、振られてよかったのか……?
いや、銀は寮長・翔が死神にしようというのなら答えた。答えたかった。それほどに、銀は寮長・翔に「女」として見られたかった。
そこでやっと皿洗いが終了したのか、ヒーロー・昴が口を挟んできた。
「まー、失恋は女をきれいにするって言うからな。振られて見返したらいんじゃね? 言ってやれよ『アンタなんか釣り合わないからごめんあそばせ』ってな」
「馬鹿か?」
「おい、お前が言うかクソ死神。今まで何か垂れてたようだが、偉そうな事を言ってんじゃねえぞ嘘だろ絶対」
「どこが嘘だ、ポンコツヒーロー」
「何だとテメェ!! 食器洗ってやったの誰だと思ってんだ表出ろ!!」
「誰が洗ってと頼んだクソが表出ろ!」
ここでもヒーローと死神の喧嘩が勃発したようである。