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Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。連載1周年突破! ( No.538 )
日時: 2014/01/06 22:03
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: RXnnEm2G)

第19章 進撃の巨人〜ヒーローと死神がやってきた〜


 〜基本視点なし〜


 巨人だ。巨人である。
 あの某進撃してくる巨人に出てくる巨人じゃ目じゃないぐらいに巨大な人である。全裸じゃない、黒焦げである。
 ていうかタイトルがもう2次元臭するんだけどね!! 気にしないでね!! 別に関係ないから!!

「……なあ、死神。俺は夢を見ているのだろうか」

 巨人を見上げて目をこする茶髪のポンコツヒーロー・昴。
 それを聞いた死神・翔は昴の脳天に死神の鎌をブッ刺した。(よい子は真似しないでね☆)
 ヒーロー・昴は激痛で床を転げまわった。

「テメェェェェェ!! 何しやがる、何しやがる!」

「なるほど、これが『大事な事なので2回言いました』か。やるな、ポンコツ」

「誰がポンコツだよ! 死神がどうのとかご高説垂れている暇があるなら、日ごろの自分の行いを見直してみろ! 何の害もない人間をこうしてぶっ殺そうとしているんですけど!?」

「貴様は死んでも問題はない。大丈夫だ」

「異議あり!!」

 今ここで裁判を開けば勝てるかもしれない、と確信するヒーロー・昴。こいつは本当にぶっ殺さなければいけない奴だ。
 だがしかし、相手は人の生死を司る神様である。そんな奴に裁判官が勝てるとか思えない。というか、もうヒーロー・昴の脳内裁判では彼は有罪(ギルティ)なのだがもうどうでもいい。
 さて、問題なのは白雪町を襲いかかったあの黒焦げの巨人である。早くあの巨人をどうにかしないと、人々に害をなしてしまうではないか。

「人類を統一したいのに、その前に人類が全滅してしまったらどうしようもない」

「ついでにお前も死んでくれねーかな」

「何だと。貴様、副寮長の椎名昴を見習え。あいつは寮長の東翔に人間界の常識を叩き込んだようだぞ」

「叩き込んでやろうか物理的に」

 巨人をブッ飛ばす以前に、黒影寮がブッ飛ばされそうである。誰かこいつら止めろ。
 その時である。
 黒焦げの巨人に、誰かが飛んでいったではないか。

「な、」

「おい……あれは!」

 茶色の髪をなびかせて、蒼穹へと弾丸の如く飛んでいく少年——副寮長の椎名昴だ。何で空を飛べるのだあいつ。
 唖然とした様子で彼を見上げている2人の視界に、さらに人が増えていく。
 炎の灯った赤い鎌を携えて飛び上がった、漆黒のコートの少年——寮長の東翔。さらに彼を追いかけるようにして、眼帯をつけた苦無を構えた少年——王良空華が飛んでいく。何故ナチュラルに飛んでいけるのか。
 ぽかんとするしかないヒーローと死神。

「えっと……ヒーローの椎名昴さんと死神の東翔さん!!」

「あ、神威——えっと銀ちゃんだっけ? どうしたの? てかあれって黒影寮の連中だよねどうして飛んで行ったの?」

 ナチュラルに飛べるってすごいね! とヒーロー・昴は素直な感想を述べた。
 駆け寄ってきた銀は、少し慌てた様子で「た、大変なんです……!」と言った。いや、うん大変なのはもう分かってる。

「巨人さんが出た瞬間、危ないからって黒影寮にいてって……! わ、私どうしたら!」

「うん、落ち着こうか。——おい死神」

「何だヒーロー」

 パンッ! とヒーロー・昴は手のひらに拳を叩きつけた。死神・翔も赤い鎌を肩に担ぐ。
 考えている事は、2人とも同じだったようだ。

「「あとは任せろ」」

***** ***** *****

 巨人には見事に歯が立たない。そもそも、寮長・翔の地獄業火が効かないところから見て、もう無理だと判断するべきだったのだ。
 黒焦げの巨人から少し離れたビルの屋上に身をひそめる黒影寮の全員。
 彼らは不思議な力を表だって使えない。銀もばらしてはいけないという制約がつけられているのだ。もしばれてしまえば、研究施設に送り込まれる事だろう。

「……どうするんだよ、あいつ」

 蒼空は巨人を睨みつけたまま、ポツリとつぶやいた。かすかに小さな石が浮いているように見える。重力操作を無視した結果だ。
 睦月は「どないするって……」ともはや半分諦めモード突入している。

「ちょっと時間稼げない? あいつを確実に仕留める術を作る」

 空華はそっと眼帯に触れて、その場で印を結んだ。その頭を寮長・翔が引っ叩く。

「イタ!? 何で叩くの!?」

「自分の命を削る気か。銀が悲しむぞ」

「……じゃあどうしろって……!」

「翔ちゃんが本気を出したら町どころか地球が危ないもんねー。俺が飛んで行こうか」

 昴がヘラリと笑んで、クイと巨人を指で示す。彼の脚力を以てすれば、おそらくはブッ飛ばせる事だろう。
 巨人相手に黒影寮の力通じないなんて——詰んだ。誰もがそう思った、その瞬間。

「このクソ死神ィィィィィイイイイイイ!!! あいつに炎が効かねえじゃねえか使えねえ!!」

「何だとポンコツがぁぁぁぁぁぁぁ!! だったらあいつに拳の1つでも叩き込めばいいだろうが死ね!」

「だが断る!」

「ムカつく!」

 黒影寮が休んでいるビルにスターンッ! と着地してきた2つの人影。
 茶色の髪をなびかせて、頭につけたはずのヘッドフォンは首に下げられている。巨人を睨みつける瞳は、黒曜石の如くきらめいている。——ヒーローの椎名昴だ。
 長い黒髪をなびかせて、漆黒のコートをはためかせている少年。同じく巨人を睨みつける双眸は、茶色がかった赤い色をしている。——死神の東翔だ。
 だがしかし、巨人を睨みつけていたのはいいが、すぐに互いへと視線を戻して口喧嘩を再開する。

「お前の炎は何の為に存在するんだ? ろうそくに火でもつける為にあるしょぼい炎な訳? 何が地球を一瞬で焦土に変えるだ? やってみろよ、それならあのすでに焦げてる巨人を燃やせよ!」

「それならば貴様の怪力は何の為に存在している。拳1つでビルを吹っ飛ばすなら、あの巨人も楽々吹っ飛ばせるだろう。俺様が手を貸すまでもないな、頑張れ」

「俺に丸投げすんなや、投げるぞコラ。この少女容姿。どこぞのリーマンでも引っかけて野垂れ死ねこのビッチ」

「黙れポンコツめ。貴様こそ燃やしてやるぞ、童顔。どこぞのショタコンにでも色仕掛けを使って死ね尻軽が」

「「やんのかゴルァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンンンンン!???!!!!!」」

 ヒーロー・昴と死神・翔の怒号に合わせて、巨人も雄叫びを上げた。
 ぽかんとした表情で2人を見つける黒影寮に気づいていないのか、わざと気づかないふりをしているのか。弾かれたように巨人の方へ目を向けた2人。
 天空高く中指を突き立てて、フ○ッ○ンをした2人は——お馴染みの台詞を巨人へと叩きつけた。

「「お前なんか——大嫌いだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああ!!」」

 その声は、白鷺市にも届いたようである。