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Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。連載1周年突破! ( No.546 )
日時: 2014/02/17 22:32
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: fofSlf5T)

 第20章 噂の空華さん!



 〜空華視点〜


 噂の日曜日がやってまいりました。
 ハイ、どうも。王良空華です。2度目? 気にしないでよ。
 今日は問題の銀ちゃんとデートの日。何を着て行こうか悩んだけれど、俺様って持っている洋服結構少なかった。忍び装束と兼ねているから、派手な服って持ってないんだった。
 とりあえず派手じゃない奴がいいよねー。なんて考えながら、洋服ダンスの前で俺様は首を傾げた。……何を着ていけばいいんだか。
 その時、俺様の部屋を誰かがノックした。気配で察知——昴か? 一体何の用だろう。

「よっす、おはよー。空華ってワックス持ってなかったー?」

「おお、はよ。何、何に使うの」

「いや、髪の毛がすげー爆発した。これシャワー浴びてもどうにもならないから、空華にワックス借りようと」

 見れば、昴の髪の毛はものすごいことになっていた。爆心地か?
 俺様愛用のワックスを貸してやると、昴はカクリと首を傾げてきた。

「タンスの前で何悩んでんの? まさか誰かとデート?」

「銀ちゃんとな」

「……ほう、詳しく聞かせろや」

 やっぱり食いついてきますかー、ハイハイ。
 そんな訳で、俺様は昨夜起こったことを話した。なるべく分かりやすく、丁寧に。
 全て話を聞き終えた昴は、「なるほど」と頷いた。

「まー、銀ちゃんの服の趣味はあんまり分からんな。黒影寮で着ているものも、大体がTシャツとジーパンだし」

「だろ? そう思うだろ?」

 銀ちゃんナイスバディのくせに、おしゃれに疎いからな。普段着はシャツとジーパンという地味な格好だし。
 女の子の服の趣味に合わせておしゃれをするもんだけど、どうなんだろう? 完璧な女の子の服をあまり見たことがない……。
 かといって、おしゃれするほど俺様も服を持っていない。黒や灰色などのモノトーン系の服しか持っていないんだこれが。派手な服を着るのは蒼空とか睦月とかだ。昴は暖色系が多い。
 うーん、と悩んでいると、昴が俺様のタンスの中からポイポイポーイと洋服を放りだしてきた。おい、何をしやがる。

「これと……あとは、これでどうだ。秋だし、このぐらいがいいでしょ。あとは白いジャケットを翔ちゃんが持っていたからそれを借りて……そんなもんかな?」

 出してきたのは黒いカットソーと暗い色のスキニージーンズだった。なるほど、確かにこの上から白いジャケットを羽織ればいいかもしれないな。
 っておい。

「羨ましいとか思わない訳? ねたんだりとか」

「そんなことする訳ないじゃん」

 あはは、と笑いながら昴は否定してきた。

「確かに羨ましいけど、翔ちゃんよりは空華の方が銀ちゃんを幸せにできると思わない? ま、俺も負けないけど」

「阻止するかと思ったけど、案外いい奴じゃん」

「協力はするよ。でも、俺がどうでるかは俺の勝手ですからぁ?」

 侮れんな、この副寮長。
 とりあえず翔ちゃんからジャケット強奪してくるわー、なんて言って昴が出て行った。案外黒影寮の奴らっていい奴らなのかもしれない?
 つか、強奪って表現はやめたげて。何か可哀想だから。
 数秒経過して、昴が白いジャケットを片手に戻ってきた。ついでに翔もなんかきた。何でお前もくるんだよ。

「銀とデートだと聞いたから」

「昴、言いやがったな」

「理由を訊かれたから」

 だからって正直に話さんでもいいだろうが!! と言いたかったが、別にいいや。ばれても気にしない。大丈夫です。
 仕方ねぇ、と俺様は着替えた。忍びって自分の肌をさらしちゃいけないんだけどなぁなんて考えながらであるが、もう気にしない。野郎同士で風呂とか行ったことあるし。
 黒いカットソーの上から翔から借りた白いジャケットを羽織って、スキニージーンズに足を通す。すると、翔からズイと何かを突き出された。見れば、十字架のシルバーアクセサリーだった。こんな格好いいもの持っていたんだ。

「その格好だとそれが合うかもしれない。それとも、忍びは首元に何かつけたりしないか?」

「いや、そんなことはないけど」

 俺様はあまりアクセサリーの類はつけないんだ。つけたとしてもピアスぐらい。ネックレスはあんまりつけないって、任務とかで壊れたりすると困るから。
 翔から借りたものだと、壊れたら弁償しなきゃいけねえか……?

「やる。同じものをいくつも持っているからな」

「気前がいいな……気持ち悪いぞ、お前」

「まあ、テメェには何度か助けられているしな。体育祭でも助けられたと言えば助けられたし」

 そうだっけー? 覚えてないからなー。
 じゃあ、遠慮なく貰いましょう。貰えるものは貰っちゃう男の子です、空華さんは。

***** ***** *****

 さて、おしゃれは準備万端。財布の中の金も、忍びの任務で色々稼いでいるから残っているし。
 銀ちゃんは玄関で待っていてくれているみたいだけど、一体どんな格好してくるんだろう。まさかTシャツジーパンなんていう格好じゃないよな、よな?
 夜着はあんなフリフリなものを着ているのになー、なんて考えながら玄関に向かえば、銀色の頭が見えた。

「あ、銀ちゃん待たせた?」

「あ、いえ。大丈夫です。鈴にこの格好で大丈夫か聞いていたんですけど……」

『自信持てよ! 空華はこの格好が好みだってば!』

 銀ちゃんの今の格好は、何か、とてもかわいかった。
 白いワンピースはふわふわとしていて、今すぐ抱きしめたい衝動に駆られる。上からはピンク色のカーディガンを着ていて、黒いオーバーニーソックスがすらりとした銀ちゃんの足元を覆う。手には花のついた革の鞄だ。
 俺様の好みどストライクである。こういうふわふわした格好が好きなのだ、俺様ね。女の子らしい服。
 胸元で揺れる銀ちゃんの誕生日に上げた小さな鏡から、鈴が顔を出して親指を立てる。お前とは話が合うな、本当に。

「それじゃ、行こうか」

「ハイ。その、空華さんも今日はカッコいいですね。その十字架のネックレス、おしゃれです」

「あー、今朝翔から貰った。太っ腹だよなー」

 そんな訳で、俺様と銀ちゃんのデート開始である。開始ったら開始です!