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Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。連載1周年突破! ( No.549 )
日時: 2014/02/24 22:42
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: fofSlf5T)

第20章 噂の空華さん!



 みなさんお久しぶりです。視点なしが多かったり空華さんの視点とか他の人の視点が多かったりしたので忘れがちだと思いますが、本来の視点は私ですよ。
 という訳で、神威銀です。どうもどうも、覚えていらっしゃいますか?
 いや、覚えていてくれないと困るんですけどね。私が主に。
 さて、お話の通り、私は空華さんと水族館にきています。何でも妹さんである綺華さんが貰ったチケットを天華さん経由で送ってくれたみたいで。空華さんは本当に忌々しげに舌打ちをしていましたよ。

「……それで、これってカップル用なんだけどさ」

「……ほへ?」

 空華さんに渡されたチケットをよく見ていませんでした、私。これはうっかり。
 ピンク色のチケットをしているなー、うわ水族館だーやったーなんて思っていたつい先日の私戻ってきてください。
 え、これカップルで行くんですか!? 私は空華さんとカップルですか!?

「いつ付き合いましたっけ私たち!?」

「大丈夫。カップル成立していませんので」

 空華さんは悟ったような表情で、ゆるゆると首を振りました。あ、そうですか。
 ていうか、何でそんなに残念そうな顔をしているんですか。テンション低くないですか?

「も、もしかして……私とカップルに見られるの嫌ですか?」

「そんな訳ないじゃない! ていうか——あぁ、もういいや。うん」

 これは言っちゃアカン……なんてぼんやり遠い目をしながらつぶやいていましたが、大丈夫でしょうか。お腹でも痛いのでしょうか。
 翔さんに振られた時、1番近くにいたのは空華さんでした。そういえば、泣いている私をずっと慰めてくれていたのは空華さんでしたっけ。
 白刃お兄ちゃんがいてくれたらこんな感じなんだろうなー、なんて思いながら、空華さんにずっと体を預けていました。うわぁぁぁ今思い出しても恥ずかしいです!!
 ブンブンと振り払うように首を振っていると、空華さんに怪しげな眼を向けられました。

「だ、大丈夫? さっきの台詞を返すようだけど、銀ちゃんが俺様とカップルに見られるの嫌なんじゃないの……?」

「そ、そんな訳ありませんよ!?」

 ないじゃないですかーッ!!
 いや、ほら、チケットですしね!! カップルに見えると思いますけど、カップルじゃないですよ! 安心してくださいね! 安心してくださいねッ!!!
 でもですね、空華さんって結構人の目を引くんですよ。そりゃイケメンですし、眼帯なんかミステリアスな雰囲気を醸していますし。何より身長も高いですしね。180後半ありそうですし。
 うぅぅ……私不釣り合いじゃありません? 大丈夫ですか?

「あのぉ」

 ちょこちょこきれいに着飾ったお姉さんが寄ってきました。胸も大きいです……私よりも。くそう……。
 きゃるんと上目遣いをして、空華さんを誘惑するお姉さん。

「もしよろしければ、私たちと一緒に回りません?」

 お姉さん1人じゃなかった、お姉さんたちでした。色々きれいなお姉さんがいらっしゃいます。
 わー、絶対に空華さんのストライクゾーンですよ。だって空華さん、女の子が大好きなんですから!

「あー、実は1人じゃないのよ」

 空華さんはハハッと軽く笑いますと、私の手を取ってきました。そして指を絡めます。恋人つなぎです、これは。

「じゃ、そういうことで」

 ペコリと取り残されたお姉さんたちに会釈をして、空華さんに手を引かれて私は入場門へ向かいます。
 えっと、いいんでしょうか。さっきのお姉さんたち……。

「いいの。今はこーんなに美人の女の子が隣にいるんだから」

 にっこりと微笑んだ空華さん。
 ど直球でそんなことを言うのは空華さんだけです。私は思わず空華さんから視線をそらしてしまいました。

***** ***** *****

 ブラックライトに照らされた道を抜けて、私と空華さんは魚さんが泳ぐ水槽の前にたどり着きました。
 さすが休日……家族連れが多いですね。でも見れないことはないです。
 南国の海を再現したらしい大きな水槽の前に立つと、2人して「おぉぉぉぉ」と言ってしまいました。大人げないでしょうか?

「……海に潜ったことあんまりないからなぁ……南国も行ったことないし」

「……そうですね」

 空華さんは京都出身ですけど、海はあんまり行かないとか。かくいう私もあんまり行かないんですけどね。
 分厚いガラスの向こうを悠々と泳ぐ、不細工だけどきれいな魚たちに私たちは見とれていました。本当に素晴らしいです。
 でも、水族館に行くとこんな話題になってしまいますよね。

「……あの魚、食えるかな」

 水槽の奥を泳いでいた翠と黄色の魚を見て、空華さんはぼんやりと言いました。いや、何で水族館にきてまでそんなことを……!
 私もおんなじですけどね!!

「煮魚にしたらおいしそうですね……身がいっぱい詰まっていそうですし。それよりもカニさんがいますね」

「わー、あの長い足。食えるかな……蒼空辺りなら喜んで食いそう」

 そんなこんなで南国の海を見ていたら、アナウンスがかかりました。


『これより大広場にてイルカショーが行われます。
 開始予定時刻は12:30です。みなさん、ぜひお越しください』


 反射的に2人して携帯のディスプレイを見て時間を確認しました。時刻は12:16でした。
 お互いの顔を見合せたのち、空華さんが言いました。

「……行く?」

 そんな訳で!! イルカショーに行ってきます!