コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。オリキャラ募集!詳しくは本文へ ( No.55 )
- 日時: 2011/11/12 21:38
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
- 参照: 亀更新万歳!! ゴメンなさい
第5章 しにがみとデート。
〜翔視点〜
あれ、銀の姿が見当たらねぇな。
どこかの店でも見てるのか? そりゃねぇな。だとしたら俺に何か言うはずだ。
じゃあ、あれか? あのクソ白髪(白亜)か男装女(羅)に呼ばれたか? いや、でもそれじゃあ携帯の音色が聞こえるはずだ。
一体誰が?
俺が思案に暮れていると、携帯が着信メロディを奏で始める。
電話の相手は昴だ。迷わずコールボタンを押して通信状態にする。
「どうした」
『翔ちゃん。そっちに銀ちゃん、いる?』
声のトーンで察すると、何だか焦っているような感じがした。
昔からの付き合い——というか、まったく成長していない俺としては昴の事は赤ん坊の時から何でも分かる。あいつが嬉しい時の仕草や悲しい時の雰囲気。そして今のような焦った感じの口調。
ずっとこの姿を維持しているのではなく、昴に合わせて体の大きさを変えている。小学生の時は小学生のような身長に。中学生ならそれに合わせて。そして英学園に来たのも、昴に合わせてだ。
別に、あいつといれば退屈はしないからな。死ぬまで付き合ってやるつもりだ。
「いや。さっきまで一緒にいたんだがな。何か用事か?」
『これは悠紀が拾った情報なんだけどね、銀ちゃんを狙っている組織が最近現れたんだって』
銀を狙う組織? それは一体どういう組織だ。
俺がそう問いかけると、昴は何か紙を漁るようなガサゴソという音が聞こえてくる。
『名前はデュアル・ファイヤ。二重の炎っていう意味の組織で、睦月と同じような感じだ』
超能力者(サイオン)の集団か。
睦月は超能力に関してはトップの実力を持つ。睦月を相手にすると少し面倒だ。遠隔念動力で何でもかんでも攻撃を捻じ曲げるし、未来予想で攻撃がどこに来るかを当てるから厄介だ。
広範囲に攻撃すればいいのだが、それでも自分の体を瞬間移動させてどこかに逃げる。本当に当たらないし困る。しかもダメージを受ければ受けるほど、超能力が増すらしい。
「で、睦月と同レベルの力か?」
『それぐらいの力はないんだけど。睦月が言うには、そいつらの能力は翔ちゃんと同じで炎を操るんだ』
「俺と雑魚を一緒にするな」
心外だ。
昴は苦笑いで謝りつつ、説明する。
『能力は発火操作(ファイヤ・ウェイク)ていう能力らしい。もちろん睦月も使える。炎を起こし、そして操るという感じだ』
「へぇ」
『で、ちょっと厄介ならしくて。発火操作の他に遠隔念動力と未来予想がいるらしいんだよね』
「ほう」
『……ねぇ、翔ちゃん。今、銀ちゃんを助けられるのは翔ちゃんだけなんだよ。怜悟や空華や悠紀や蓮だって探してるんだ。でも銀ちゃんの居場所はなかなか見つからない。翔ちゃんは死神でしょ? 名前で人がどこにいるか判断できるんでしょ?』
昴が少し怒ったような口調になる。
電話越しでいらついてるな。
『翔ちゃん、銀ちゃんが嫌いなら——いや、嫌いじゃなくても助けたくなければ、俺が代わりに銀ちゃんを助ける。たとえこの体が滅んだとしても、助けに行くよ』
「……出来るのかよ」
煽るように俺が言うと、昴はただ一言告げる。
ただ、冷徹な口調で。
『だって、俺は銀ちゃんが好きだからさ』
何故だろうな。死神である俺に感情が生まれたような感じがした。
嫉妬。
渡したくないという嫉妬。
こいつだけには、渡したくない。
「ハッ」
『何がおかしいんだよ』
「テメェには無理だな。せいぜい俺の活躍をそこから見てるんだな。俺が鮮やかにあのビッチを助け出してやるよ」
『出来るのかよ』
「出来るに決まってるだろ。俺にも意地がある」
プツッと電話を切り、俺は携帯を操って睦月の番号を呼び出す。
コールは2回でつながった。
『何や? 今、忙しい——』
「俺が持ってる荷物を黒影寮のキッチンに運んでおけ。断ったら殺す」
『ちょ、待っ——!!』
何か反論する前に電話を切る。
上等だ。
ライバルが身近であればあるほど、勝負は燃える。あんな奴にあいつは絶対に渡したくはない。
「雑魚どもが」
電柱へ上り、鎌を構える。
銀が連れさらわれた方向は北西——まだ大丈夫。銀の鈴の力は使われていない。
面白おかしく助け出してやるよ。この俺が。
「さぁて、死神が主役の喜劇。始まり始まり♪」
自然と、俺の顔には笑みが浮かんでいたかもしれない。