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Re: 黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。連載1周年突破! ( No.561 )
日時: 2014/04/14 22:57
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: Qvi/1zTB)

第20章 噂の空華さん!



 〜空華視点〜


 ハロハロー、どうも王良空華です。
 銀ちゃんが俺様の手にキスしてきたので、もうそれはそれはびっくりです。何あれ、王子様なの? あれ銀ちゃんって王子様?
 あのさあのさ、銀ちゃんがまさかのキスしてきたおかげで、見たこともない力で貞子もどきをブッ飛ばした訳なんだけど。あれ一体どこから出したんだろうなぁ?
 とにかく、今はそうだ。違うことを考えるべきなんだ。忘れろ、銀ちゃんの柔らかかった唇の存在を忘れるんだ。

「……あの、空華さん?」

「ハァイ、銀ちゃん。俺様はいたって普通ですよ、そして冷静ですよ」

 いや、全然冷静じゃないんだけどね。
 今でも銀ちゃんの唇を思い出すと、もう世界の果てまで走れそうな気がするんだけどね。だけど俺様は我慢しているのさ、良識ある男の子だから。そういう話じゃないか、ごめん。
 銀ちゃんが訝しげに俺様を見てくるけど、あまり気にしないでほしいな。そうだよ、気にしないでほしい。

「……なんか空華さん、おかしくないですか? まだ調子悪いですか?」

「そんなことはないよ。俺様はいたって普通ですよ、元気ですよ?」

「嘘です。私と目を合わせてくれません。目を合わせてください!」

 だってー、銀ちゃんの顔を見るとー、マジで思い出すから嫌だぁぁぁ。
 何でそんなにほっぺたを膨らませる訳? マジで可愛い。ぐうかわ。抱きつきたい。いや、抱きしめたい。抱きついたら立派なセクハラが成り立ってしまう。
 健全なんだからな。俺様は健全なんだからな!!

「……銀ちゃん、お願いだからさ。あんなことは俺様以外にしないでね?」

「あんなこと?」

 きょとんと首を傾げる銀ちゃん。ぎゅう、とイルカを抱きしめたその姿はマジで天使ですか。作者、画力を上げろ。そして銀ちゃんを再現するのだ。
 まあ、そんなことを願っても画力なんか簡単には上がらないんだけどね! (そうだよby山下)

「だからぁ、えっと……キス?」

「……やりませんっ! や、やりませんよ! あ、あの時はとっさの……思わずです! 成り行きですぅ!!」

 思い出したのか、銀ちゃんも顔を真っ赤にした。トマトみたいだ。
 そんな銀ちゃんを見て、俺様は思わず笑ってしまった。銀ちゃんには「何笑ってるんですかぁ!」なんて言って、ポカポカ殴られたけど。ハエが止まったような痛みしかないぜ。
 そのうち殴るのを諦めたのか、ふぅと銀ちゃんはため息をついた。無駄だと思ったんだろうね。

「……け、軽率な行動をしてすみませんでした。以後は気をつけます」

「その唇は、他の人の為に取っておいた方がいいよ? 俺様なんかにあげちゃったらもったいないかも」

 自嘲気味に笑った。
 なんていうかね、自分で言って傷ついた。俺様も銀ちゃんが好きなのにさ。
 まあ、そうだよね。俺様のような後ろ暗いところがあるような奴よりも、昴とか蒼空とかと結ばれた方が銀ちゃん的にはプラスになる。
 これだけ思っているけど、結ばれないのは少しだけさみしいよね。

「……どうしてですか?」

「いや、どうしてって。過去に色んなことをした空華さんよりも、もっと他の明るい奴とかの方がいいかもしれないよ?」

 俺様だと何するか分からないよー、と銀ちゃんに忠告しておく。
 そうさ、諦めるがよい。

「……でも、空華さんが色んなことをするとは思いません。私が翔さんにフラれて泣いていた時、最後まで付き添って何も聞かずに抱きしめていてくれましたから。優しい人です」

 銀ちゃんがふわっと笑った。
 あぁもう、その顔は反則だっての。こっちまで顔が赤くなっちゃうでしょ。

「もー、銀ちゃんがそういうところを見せるから好きになっちゃうの」

「フフッ。知ってますよー」

 で・す・よ・ねー。
 だけど、絶対に誰にも渡さない。銀ちゃんの唇も、笑顔も、その心も。全部俺様に向けさせたい。
 今だけは、俺様のものでいさせて。君の隣にいさせて。
 いつか、君の隣が誰かの手に渡るなら。君が幸せそうな顔でその誰かの手を取るなら。俺様は潔く身を引くから。

 だからせめて、君を大切に思うことだけは許してほしい。


 ねえ、銀ちゃん。
 女の子に弱いって言われていた俺様だけど、やっぱりどんな女の子よりも、銀ちゃんが好きだ。

***** ***** *****


 優しい優しい忍者さん。
 私の傷ついた心を癒すように、何でもない風を装って笑いかけてくれた。
 私の為に、このぬいぐるみを買ってくれた。

 ねえ、空華さん。
 あなたは女の子が大好きでしょう? きれいな女の子や可愛い女の子——私よりも美人な女の子たちと仲よくしているところをよく見ました。
 でも、最近ではめっきりそんなことが減ってきましたね。それを見て、少しだけ——本当に少しだけ安心しました。

 優しい空華さん。
 あなたの隣は、とても居心地がいいですね。

 いつかいつか、あなたが本当に「好きだ」って言ってくれたその時には。私もあなたに伝えることがあります。